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良いストレスと悪いストレス
カナダのストレス学説の先駆者、ハンス・セリエはストレスを「何らかの外力によって、心理的に身体的にゆがみが生じた状態」と定義しています。人間は誰でも圧力が加わったときに心や体を守るために反応します。緊張や身を固くする、顔をこわばらせるなど、一連の流れがストレスと呼ばれるのです。
一般的に「ストレス」と聞くと、どうしてもマイナスのイメージがつきまといます。しかし、日常生活を見渡すとストレスは身近に存在し、必ずしも悪いものばかりではないことがわかります。
良いストレスの例
例えば、日常生活で予測できない出来事が起こったとき、路地から子どもが飛び出してくるといった緊急事態では即座に神経を研ぎ澄ませ、緊張し、その場を乗り切るための力が働きます。このような良いストレスがなければ、危険を避けることができません。適度なストレスは、人間が生き延びるための本能的な反応です。
対人援助の場面でも、例えば新しい患者さんや利用者さん、あるいは生徒さんとの関係が始まるとき、また困難な場面に直面するときには自然と緊張が生じます。緊張することで感受性が高まり、相手を理解しようとする力が働き、専門知識や技術、過去の経験を活用することができます。つまり、適度なストレスは人間関係を深めるためにも欠かせないものです。
悪いストレスの影響
一方で、過剰なストレスは心身に悪影響を及ぼします。ストレスが過剰になると、心や体が対応しきれず、様々な症状が現れます。これが持続すると、患者さんや利用者さん、生徒さんとの関係や職場の人間関係、さらには私生活にまで支障をきたすことがあります。この悪循環がさらなるストレスを引き起こし、事態を悪化させることもあるのです。
ストレスの管理
ストレスの問題は、完全に取り除くことではなく、過剰なストレスを適度なストレスに変えていくことです。リラクゼーション法や趣味の時間、運動や瞑想を取り入れることが効果的です。また、信頼できる人とのコミュニケーションもストレス軽減に役立ちます。
総じて、ストレスは我々の生活において避けられない存在であり、適度なストレスは成長と発展の原動力となります。しかし、過剰なストレスが心身に与える影響を最小限に抑えるために、ストレス管理の方法を身につけることが重要です。