第三十一話 暇な無期停学
高校生活の滑り出しは上々だった。特に揉め事もなく、可愛い彼女も出来て、中学時代の友達ともたまに遊び、高校の友達ともいい関係だった。5月になり、球技大会という行事があった。野球・サッカー・テニスとあったが私はサッカーに出ることにした。サッカーが特別好きだったわけではないが、一番楽出来そうだったからだ。私は絶対にボールがこなそうなところでチョロチョロしていた。そんな私めがけて思い切りボールを蹴ってきた奴がいたのだ。明らかに狙っていた。急にボールが来た事に驚いている私を見てニヤニヤしていたからだ。頭に血が上った。『舐められている』、そう思ったのだ。
球技大会が終わりそれぞれ教室に向かう中で、私はそいつの事を思い切り殴りつけた。倒れたそいつを引きずり回し思い切り蹴り上げた。逃げ出そうとしたのを追いかけ、今度は襟首をつかみ思い切り投げ飛ばした。謝るまでそいつを殴り続けた。顔が腫れ上がり、口元からダラダラと血を流しながら「すみませんでした」とそいつはやっと謝った。それで私の気は晴れたが周りが全く見えていなかった。相手が謝ってきた時には、もうすぐ近くに教官が来ていたのだ。教官室に呼び出された。相手は医務室に向かったらしかった。「何もしていないのに一方的に殴られた」と言っていたらしい。『自分から煽ってきたくせに』と思ったが、私は何も言い訳はしなかった。少し教室で待つようにと言われ、教室でケンジたちと他愛もない話をしていると、教官が教室に来て、「無期停学になった」と私に告げた。入学して一か月程で停学というのも早すぎる気がしたが、自分のしたことなのでしょうがない。「わかりました」と答えた。話しを誰かから聞きつけた彼女も心配そうに、私のいる教室まで来た。「無期停だって。でも大丈夫だよ」と私は言った。彼女は何か言いたそうにしていたが、「わかった」と一言だけ言った。
停学中は暇だ。単純に遊ぶ相手がいないからというのもあるが、時間はまちまちで一日二回ほど自宅に電話がかかってくるため日中出かけることも出来ないのだ。学校が終わった友達が遊びに来るのを待ち、街中で遊びまわり、夜は彼女の家に行き、始発で帰る日が続いた。日中は仕方ないので反省文を書いて後は、酒やシンナー、薬物等で時間を潰した。結局停学が解けたのはもう少しで夏休みに入る7月になってからだった。
今回は停学になるエピソードでした。入学早々に義務教育との違いを痛感した時期でもありました。次回はチームや友達とのエピソードを書きたいと思います。
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