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★誕生日の物語#25

清廉な歌声は、バルコニーに立つ私の元にも届いていた。
朝陽に馴染む、優しくあたたかな音色に、じわりと目と胸の奥が熱くなる。
波打ち際に佇み歌う彼女はゆっくりと私の方へ振り返り、浮かべるのは、儚く溶けてしまいそうなほどに綺麗な笑み。
澱んだ地で朽ちかけていた水の精霊は、自らの聖性を取り戻していた。

『あなたに出会えてよかった』

歌に乗せて届くのは、やわらかな感謝の想い。
私はただ、弱っていたあなたを放って置けなくて、この家に招き入れただけなのに。

『あなたがわたしの安らぎ。わたしの癒し』

それを言うなら、私の方。
あなたといた時間は、疲れ切っていたこの身も心も癒してくれた。
権力とお金で争う一族から距離を取りたくて、すべてを置いてこの場所で暮らすと決めた私の日々に、誰かのためにありたいという願いを思い出させてくれたのはあなた。
ここで好きな人のために好きなことだけをしていくと決められたのも、あなたとの時間があったからこそ。
言葉にならない想いを乗せて視線を交わし、微笑みあい、優しい時間に満たされながら海へと還っていくあなたを見送った。

そうしてあなたのいなくなった屋敷の庭には、宝石室の輝きを持つペチュニアの花が一面に咲き誇る。

*誕生石・誕生日花*
バイカラートルマリン: バランスとハーモニー・才能開花・心身の安定
サファイア: 慈愛・誠実・徳望
ペチュニア: あなたと一緒なら心がやわらぐ・心のやすらぎ
ハゲイトウ: 不老不死

Copyright RIN

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▶︎誕生日の物語とは?
あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
正式なリリースの前にFacebookでモニター募集させていただいた34編を順次公開いたします


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