★誕生日の物語#27

世界樹が根を張り、守護する追憶の森で、まどろみながら私はある人を待ち続けている。
危険だと言われた、我々が近づいて良い存在ではないのだと、幾度となく同胞からは忠告された。
けれど私は、彼と関わることを止めることはできなかった。

かつてあの人と過ごした日々は、哀しいくらい綺麗な魂が紡ぐ物語だった。
一大叙事詩と呼ばれるほどに、過剰なる神の寵愛を与えられ、試練と称されてはもたらされる理不尽へと必死に抗うヒトの姿が、覚悟を据えた真っ直ぐな眼差しが、永く凪いでいた心が掻き乱されるほどに愛おしかった。
結果、あの人は神に敗れて生まれ直しを強制され、彼に加担したことへの罰ゆえに私は大精霊のチカラを削がれ世界樹に囚われることになったけれど、それでも後悔はしていない。
そして、あの人が諦めない限り、何度でも神に挑むのだ。

『何度生まれ変わろうと、必ずあんたのところに辿り着いてみせるから』

神の手により運命の歯車に引き裂かれる間際、あの人と交わした約束がこの身に刻まれ、魂をつなげることができているから。
緑の牢獄にして揺りかごたるこの場所で、同胞たちの嘆きに詫びながらも、あの人を待ち、あの人の夢を視続ける。

＊誕生石・誕生日花＊
セミバロックパール: 長寿・健康・富
サファイア: 慈愛・誠実・徳望
チューベローズ: 危険な関係
ヒルザキツキミソウ:奥深い愛情・無言の愛

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