見出し画像

★誕生日の物語#30

さわやかな風のリズムに乗って、新緑の広場では森の小人たちによる賑やかな演奏が始まった。
わっとあがる歓声とともに、老若男女、種族も超えて、誰もかれもが手に手を取ってくるくると輪になって踊れば、何もかもが弾けて笑顔に変わる。
閉じ込めた想いも、捨て去った願いも、背負った痛みすらも、すべてが祝福の音色のもとで心の糧へと変わっていく。
私はそんな景色を前に、じわりと涙がにじむ。
ここにワゴンが並ぶのも、甘い焼き菓子やスパイスの香りがあふれるのも、少し前までは考えられなかったこと。

「いい祭りになったの」
隣に立つ森の長が、しみじみと呟いた。
「皆、感謝しとるよ。お主の心が、行動が、知識が、わしらを救ったんじゃ」
「私はただ曽祖父の手記が気になって、好奇心のままに動いただけですよ」
「じゃが、それでお主が地下聖堂の呪詛の鐘に気づいたから、その解呪に皆を巻き込んでくれたから、諍いに囚われた我らの魂も解放された」
だから礼を言うのだと向けられた温かい眼差しに思わず泣き笑いで返せば、輪を抜けてきた小人たちに驚かれる。
とにかく踊ろうと手を取られ、引き込まれて、そうして私の中に残る最後の痛みもまた優しい光に変わっていった。

*誕生石・誕生日花*
エメラルドキャッツアイ:創造力・心の成長
エメラルド: 幸運・清廉・不老長寿
シャクナゲ: 威厳・荘厳・危険
ベルフラワー: 感謝・誠実・楽しいおしゃべり

Copyright RIN

***

▶︎誕生日の物語とは?
あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
正式なリリースの前にFacebookでモニター募集させていただいた34編を順次公開していきます。


いいなと思ったら応援しよう!