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★誕生日の物語#28

雪の華が咲き誇る冬の夜遅く、私のもとにカフェテリアへの招待状が届いた。
差出人は、数年前にわずかな期間、私のところで魔法の手ほどきを受けた少年だ。
自分の力をうまく制御できず、心を閉ざしかけていたあの子は、魔術師ではなくパティシエの道を選んだのだろうか。

不思議な感慨を覚えながら凛と凍える月の橋を渡り、カフェへとたどり着けば、私が足をついた瞬間に魔法陣が展開し、次の瞬間には水晶硝子のテーブルセットに着席していた。
さらに、瑠璃の実を散りばめた星空タルトのスイーツプレートが目の前に出現し、ティーカップからは稀少な月百合の花が香る。
かなり高度な術式を使わなければ成功しない、美しい演出だった。
いや、それよりも――
「いかがですか、先生」
驚いて顔を上げると、はにかんだ笑顔の彼が空間から姿を現す。
「先生がいつか食べてみたいと話してくれた御伽噺のスイーツたち、それを再現するのが僕の目標になっていたんです」
かつての子供は凛とした青年魔術師として、胸に手を当てて深く頭を下げる。
「先生、どうかこれからもう一度僕の導になっていただけませんか」
そうして見上げる瞳の揺らめきに私の心まで揺れて、気づけば無言で頷きを返していた。

*誕生石・誕生日花*
インカローズ: 新しい愛とロマンの到来
ターコイズ:人生の成功と繁栄
ラピスラズリ: 成功の保証
ザクロ:円熟した優美さ
ツワブキ:困難に負けない

Copyright RIN

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あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
正式なリリースの前にFacebookでモニター募集させていただいた34編を順次公開いたします


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