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やっつけないヒーロー

男の子って、戦いごっこが大好きだ。
5歳になったばかりの孫が、ウルトラマンティガとウルトラマンゾフィーを持って、「戦いごっこしよう!」と鼻息荒く挑んできた。
令和生まれの彼は、なぜか昭和と平成のウルトラマンが大好き。
YouTubeで昔のウルトラマンを飽きもせずに繰り返し見るうちに、歌も完璧に覚えてしまった。ところかまわず大きな声で「♪ウールートーラの父がいるうー」と歌い始めるので、「なつかしい」と目を細めながら世代の人が振り返る。

そういえば、私の幼稚園の時のお弁当箱は「ウルトラマン」だった。
女の子で“ウルトラマン”は私だけだったことを思い出す。隔世遺伝か?
孫の攻撃を躱わしながら、私はふと考えた。

なぜ、ヒーローはいつも戦っているのだろう?

そもそも、ヒーローものの番組は、悪を倒す構図になっている。
うちの子どもは女の子ばかりの三姉妹なので、どちらかというと女の子向けの魔女見習いのアニメなどを見ることが多かったのだけれど、女の子向けとはいえ、やっぱり“悪いやつをやっつける”という設定で正義が繰り広げられていた。
昔も今も、男の子向けも女の子向けも、「悪を倒す」という構図が多い気がする。

“悪いやつは、やっつけてもいい”と、やわらかい心に刷り込んでもいいのだろうか?しかも、ウルトラマン同士ではないか。

合点がいかない私は、パンチの代わりにウルトラマンの手で握手を求めてみた。
孫は「え?」という困惑の顔をして、一瞬攻撃の手を緩めたけれど、「違うよ、こうだよ!」と、さらに激しく攻撃を仕掛けてきた。
それでもめげずに、今度は両手を広げ「ハグ攻撃」を繰り出すと、戦意を喪失したようであっさり「いいよ」とウルトラマン同士でハグしてくれた。

私はちょっと嬉しくなって、今度は私の手で彼をぎゅっとした。
これぞ正義の勝利だ。

愛のハグ攻撃

現実はそんなに甘くはないけれど、“やっつけないヒーロー”を、「かっこいい」と真似する子どもたちが増えてくれたら、世界はちょっと、やさしくなる気がする。

私も、「相手を絶対に攻撃しない」ニューヒーローを見てみたい。
正義のために“悪”をやっつけるより、目の前のひとりの”善”を信じ抜く勇気を。
理不尽に振る舞う相手にめげない強さを。
私は子どもたちから日々学ばせてもらっているのかも。
何より、どんな人にも、その人をこんなにも大切に思っている誰かがいると想像したら、むやみに攻撃なんかできない。

仲良くできるって、最強なんだ。

相手じゃなく自分に負けない正義の味方を心に描き、まずは大人の私がお手本になりたい。



ウェブマガジンCOLECOLOR(コレカラ)で掲載していただいた今年の抱負。
肝心な名前を書き忘れたのは、はい私です。

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