かなり不思議なお話・13
ある日、わたしは一人リビングにいた。
リビングの椅子に座ろうとした時、その出来事は突然起こった。
♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪
急にわたしの周りが白く光りはじめ「なんだろう?」と思った次の瞬間、知らない土地にいた。
そこは、見渡す限り何もない土地。視界は悪くない。
ところどころひび割れた大地がどこまでも続いている。
植物などは見当たらない。
背後から何か音がする。ゆっくりと振り向くと、子どもを抱っこして、片手でもう一人の子どもと手を繋いで歩いている父親らしき人が見えた。
何かを目指して歩いているようだ。
地球に住む人とほとんど変わらない姿。ここはどこなんだろう?
どんどん人が集まってくる。みんな歩いてどこかに向かっている。
100人近い人たちがここを目指して歩いてきているようだ。その数もどんどん増え続けている。
わたしの姿は彼らには見えていないのだろうか?
「……」
急に男性に話しかけられた。隣には年配の女性を連れている。母親だろうか?
はじめは聞き取れず、意識を集中した。
直感的にここでいいのか?と聞かれているようだ。
わたしは突然ここに来たから、どう答えていいかわからなかった。すると、彼に誰かが話しかけ、そのまま彼は歩き始めた。何か教えてくれたのかもしれない。
わたしは彼らが進んでいく方向に歩くことにした。まわりには、様々な年代の人々が同じ方向に歩いている。
空気が変わった。
わたしは何だろう?と立ち止まりまわりを見渡した。
すると空が光り、雲が現れた。雲はどんどん大きく広がっていき、稲光のような閃光を発している。
気がつくと目の前には大きなお皿のような物体がいくつも現れ、地上に降りてきた。
相当な大きさだ。
そのお皿のような物体はよく見ると小さな小窓のようなものがいくつもある。
その小窓の下から何かが地上に出てきた。そこから背が高く耳がツンと尖った金色で長い髪の存在が降りてきた。お皿のような物体は半透明にも見えるし、物質としても見える。不思議だ。
聴いたことのない周波数の音が響く。彼らがテレパシーで何か伝えようとしている。映像とメッセージが同時に頭に浮かぶ。
どうやら、この星の民を助けに来たらしい。これに乗るようにと言っている。
小窓の下から出てきたものは細かな溝が見える。そこを歩いて物体に入っていくように言っている。
地上はざわつき始めた。
そのお皿のような物体はざっと見ても5つくらい地上に降りてきていた。そのどれもが同じ作りで、小窓の下から細かな溝がある板が出てきた。
わたしは物体に近づいた。
近くで見るととてつもなく大きなものだった。
ざわついていた人々も、誰となく物体に入っていくと、みんなそれぞれ近くに降り立った物体に入っていった。
溝のある板の横には背の高い存在が数名立っている。
見たことがない存在だが、とても優しいエネルギーを発していた。だからなのか、怖さは全く感じなかった。
わたしも近くに降りたった物体に入ってみようと思い、板に足をかけた時、背の高い存在がこちらを見て何かを発した。
聞き慣れない音は少し違和感がある。頭の中心に意識を向けて、何を発しているのか探る。
「この光景を見て欲しくてここに来てもらった。どこの部屋に入っても構わない。彼らが無事に本来の星に帰れるようにわたしたちはサポートをしに来た。あなたも乗ってそれを見て欲しい」
こんな感じにメッセージは入ってきた。
どういうことなのか?
「さぁ、入って」
そのように促され、わたしはその物体の中に入った。
中はかなり広くて、先に入っていった人たちがどこに行ったのかわからないくらい空間があった。迷子になりそうなほどの広さと、見慣れない雰囲気がそこにあった。
「こちらへ」
存在がわたしをみんながいる部屋に案内してくれた。
そこは小さな小窓がある円形に近い部屋だ。
金属のように見えるが、柔らかいようにも見える不思議な壁が剥き出しになっていて、赤や青の光がいろいろなところに見える。どこから光っているのかわからない。壁が光るのだろうか?
その部屋に入っている人々は、小声で何か話している。
「これから大切な話をします。あなたも聞いていてください」
わたしは部屋にいた背の高い存在の横からその部屋を見渡した。背の高い存在にみんな駆け寄り、何かを聞いている。存在は「落ち着いてください、大丈夫です。あなた方を助けるためにきました」というような事を言い、駆け寄ってきた人々も少し落ち着いたようだった。
わたしの近くにいた小さな子は親に抱っこされながら、小窓から外を眺めたり興味津々に部屋を見渡していた。
背の高い存在は彼らに語り始めた。
「わたしたちは、あなた方の星の状態を知り、必要なサポートをするためにあなた方の前に現れました。
あなた方は選択する事ができます。
わたしたちが安全と考えられる環境の星へ移住する、それ以外の場合はあなた方が住み慣れた故郷へとここから直接戻ることも可能です。
わたしたちはあなた方の内側(魂)とコンタクトが出来ます。本当に望んでいる選択をわたしたちは知る事が出来ます。
すべてはあなた方一人一人の望み通りになります。心配はいりません」
部屋にいる誰もが静かにその言葉に意識を向けている。
「まずは故郷へ帰る方々からご案内します。ここで、故郷に帰るための準備が始まります。容姿が変わる方もいますが驚かないで下さい。必要な事が起こります。彼らが故郷へ帰った後、移住希望者は、安全な星へ移住することになります」
わたしは部屋で何が起こるのだろうかと静かに見守っていた。
すると、部屋がざわつき始めた。
容姿が変化していく人がひとり、ふたり……とどんどん増えていく。同じような人もいれば、全く違う種族も。
「あの星にいた方々はもともと、たくさんの星から来ているのです。ですから、容姿も変化する人が多いのです。大丈夫。もといた場所に戻るだけですから」
わたしの横にいた存在は優しく伝えてくれた。
隣の人の姿が変わるとどよめき、そして皆笑顔で拍手が始まった。
その部屋の3分の一ほどの人が姿が変わったとき、「また会いましょう。魂の旅を楽しんで」
というようなメッセージとともに、身体のまわりが発光し、閃光のようなものがパチパチとなったかと思うと、ゆらめきながら透明に、そして消えた。
次々と姿が変わった人たちは自分の故郷へと戻っていかれた。
「ここに残っている方々は、あと数名を残して、安全に移住できる星に行きます。あなたとはここでお別れです。あなたもよい旅を……」
わたしは「帰るんだ……」と思うか思わないかくらいの間に、そこにいる人々や部屋のまわり、そして、背の高い存在たちを目に焼き付けた。
そして……
白い光が見える……
あっ……
わたしは見慣れたリビングに立っていた。
♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪
あの星はどこなんだろう?
背の高い存在さんは、何らかの理由で住めなくなった星の存在をサポートをしているのだろうか?
身体がまだ戻らない。
椅子に座り、手や足をさする。
ここにいる!
ちゃんと戻らないと……
わたしは何度となく不思議な経験をしているが、圧倒的に〝何か〟が起きた時、どこかに誘われたと思われる時は戻ってきた時の身体の感覚が全く違う。
不思議な夢見たな……とかでは起きない、この説明するのが難しいこの感覚。
はじめて味わった時は、もう戻ってこれないのかと思うくらい必死で肉体にinした。
何度か体験すると、なんとなくコツが掴めてきて、冷静にそれが出来るようになった。
突然起こるから、前もってのお知らせがあるとそんなにびっくりもしないけれど、お知らせがあることはまぁ、なくて。
でも、不思議とそれがある時は一人の時で、わたしがこちらで困ることはない。
身体が戻るまでの間もちゃんと調整されているような気がして、いつも不思議に思う。
わたしたちが〝知っている〟と思っている世界はおそらくほんのちょっとでしかなくて、その枠を超えたところに、わたしたちの知らない、でもどこか懐かしい宇宙の仕組みが見えてくるのかもしれない。
上でも下でもなく
時間も空間も超えた
果てしない神秘の世界に触れるたび
わたしの何かが発光し、そこにいたことを度々思い出す。
忘れないでと言われているように。