すごくすごくすごく人だなあと思った桑島智輝さんの魅力
去年の12月28日、いつものようにInstagramの投稿をスクロールしていたら、フォローしている安達祐実さんの言葉に指が止まった。
「私事ではありますが、この度、カメラマンの桑島智輝さんと離婚いたしました。」
………..えっ?
……………..あの夫婦が?
えっ、安達さん、数ヶ月前に小田切ヒロさんのYouTubeの中で桑島さんのこと、「結婚してもうすぐ10年になるから、もうトキメキと恋とかは違うけど、話していて楽しいし私のことを分かってくれるし、老後を2人で過ごすならこの人かなあって……..」みたいなこと言ってませんでしたっけ?
桑島さんは8月京都の展示で、被写体としての安達さんに対する思いとか切々と語ってませんでしたっけ?あの時そんな予兆ありましたっけ?
と両方のファンの私は、ただただ、ただただ驚いた。
離婚については二人とも、さらりとした前向きな投稿をしていた。
安達さんと同世代の私。みんなそうだったんじゃないだろうか、小学生時代。周囲も私も本当にみんな安達さんが大好きだった。
時を経て2019年、安達さんのメイク動画がバズった時から、私は安達さんのSNSを観るようになった。その時には、二人目の旦那さんってカメラマンなんだよなーというくらいの認識だった。
そして3年ほど前、知り合いの投稿で桑島さんの人となりを知った。その時期に世間ではClubhouseというものが流行り出し、桑島さんは仲の良いサカグチコウヘイさん(ギャラリーHENKYOのオーナー)とラジオ的なトークを始め、私もそれを聞き出した。
Clubhouseが一瞬で廃れてからもこのラジオは不定期に何年も続き、このラジオを聴き続ける中で私は、桑島さんってめちゃくちゃ面白い人だなーと驚きを募らせていった。
見た目はクールでおしゃれでスマートで、個展で実際お会いして話してみたら、すごく優しいお兄さんという感じなのだけれど、その雰囲気とはまた違う独特の魅力があるなあと思った。
Clubhouseでは、武蔵野美術大学時代に演劇サークルに入っていたことや、そこでの行い。旅先のお店で出会った人のこと。仕事のことや家族のことアートのこと。好きな音楽のこと。今世間に対して思うこと。そんなことをたくさん話していた。
その言葉の正直さは、安達さんや自分たち夫婦、その生活や旅を納めた写真集『我我』や『我旅我行』の写真とすごく似ているなあと思った。
『我我』や『我旅我行』を初めて見たとき、ここまで出したら人ってもう隠すもの何もないよなーという衝撃があった。どうかしているけどすごく好き。それが一番の感想だった。今でも時々見返している。
離婚が発表されてから見返すと全然別の意味が生じていて、でもそれもまた魅力だ。だからずっと見続けられるなと思う。
SNS全盛期になって、今まで語れなかったことを語る人がものすごく増えたなと思う。自分の障害や病気や特性について。過去や現在進行形の辛いことや恥ずかしいことや悩み。組織や人の表と裏など。
今まで知り得なかったたくさんのことを目にする機会が格段に増え、視野が広がったことがたくさんある。
けれど一方で、100%ありのままを晒されたテキストや写真や動画が、私にとって全て心地よいかというとそうでないこともある。
やっぱりそこにソフトな編集や特有のセンスなどがあることで、見たい知りたい向き合いたいと素直に思えるような気がする。
写真って誰が何を撮ってもそこに撮影者のバックグラウンドがあって(一枚では分からないこともあると思うけれど、何枚もあれば自ずと見えてくると思う。)桑島さんが撮る写真のベースにある、桑島さんの生き方考え方に、私は魅力を感じているのだと思う。
離婚後初めて、桑島さんが写真展を開催すると知った。以前から続く「GAGA」に安達さんは登場するのだろうか。そして私の好きな能町みね子さんと、なんと結婚について対談するという。この時期に。
それは聴きたいし、もちろん展示も見たいと思って先日このイベントに参加した。
今回桑島さんが能町さんと話したいと思ったきっかけの本、能町さんの『結婚の奴』。私も数年前に買って持っていた。当時自分も結婚観についてすごく考えていて、友人に勧められたのだ。
この本や能町さんについて書き始めると文章が倍ぐらいになってしまうのでまた別の機会に。
桑島さんが今回の対談で何を話したのか、どこまで書いて良いのかわからないので書かないけれど、桑島さんが今どんな気持ちなのかを聞けてよかった。
桑島さんは、すっきりしていて前向きでいて元気なのか、辛かったり苦しかったり寂しかったりしているのか、事前になんとなく予想していたけれど、私のその予想とは真逆であった。
だからある意味安心したというか、ああ桑島さんはすごくすごく人で人で人だよなあと思った。
その気持ちのまま撮られた今回の写真は、対談の前後で見方がだいぶ変わった。
ああ、そういうことかあと今回の写真を見ながら、そしてそれらが収められた『GAGA ZINE No.3』をめくりながら少しずつ腑に落ちていった。
桑島さんが、絶対にTwitterとかには上げないでと言っていたステートメントを最後に貼り出した(この日限定か?)。写真に撮って後で読んでと。でも、SNSには…と。
このA4の2枚をなん度も読み返して、桑島さんの魅力ってほんとこれだよなあと改めて思う。
絶対SNSには…と言ってはいたけれど、特定の人しか見られない勿体無さよ。いや、もちろんすごくわかる、世に出ないことも。つまらない解釈をされたくないなと思う。
でもその片鱗がまた何かの形で、この日来ていない人にも見えていったら良いなあと勝手に思う。今この社会で、すごく、すごく共感する人が絶対にたくさんいると思ったから。そして今の桑島さんの写真が、より迫ってくるなあと感じたから。
桑島さんが紡いできた過去はすでに新しい意味を持っているような気がして、これからもその先を見続けてみたい。
桑島智輝写真展 G A G A は三軒茶屋のtwililightで13日まで