「火定」すごい。本当にすごい。
奈良時代の、天然痘のパンデミックの話です。
舞台は平城京、施薬院。
宮城の中の人たちの治療を行う典薬寮とは違って、庶民の人たちの治療を担当する施薬院は高い位の人たちからは顧みられません。
そんな職場に嫌気がさしていた主人公、名代の生活は、京に疫病がもたらされたことで一変して・・・。
という、そんな感じの話です。
このあらすじを書いているだけでも、物語の内容が甦ってきて私はすごくドキドキしています。
すごいんですよ。ほんっとうに。
よくわからないくらい、すごい。面白い、という言葉すらおこがましく思えてしまうくらい、私はこの本が大好きです。
作者の澤田瞳子さん。
「星落ちて、なお」で直木賞を受賞された作家さんで、確か大学のときに奈良時代の研究をされていた筈なんですよ。
だから時代背景もすごく詳しいし、奈良時代の雰囲気が伝わってくる感じがして素敵です。
でもそれだけじゃなくて、それだけでこんな小説が書けるわけがないんですよね。
どうやって、どうしたらこんな小説が書けるんだろうと思うくらい。
本当わけがわからないくらいすごかったです。
歴史小説、なんですけど、その時代の「パンデミック」というよりはむしろ人間がどう生きるかということに重点が置かれているかな思っていて。
最後はずっと絶望の中だった登場人物たちが少し光を得る、というような。
医師とは、という問いの答えもすごくて。
だから、物語自体はまだまだ続けられそうなのですが、「ここで完結するんだな。」というのが腑に落ちました。
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