北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周【55】18日目 えりも〜静内② 2017年6月11日
初夏と呼ぶにはまだ肌寒い日高路を北上する「週末北海道一周」18日目。
北国の空の下、潮風に育まれた牧草をはむ馬達の姿が増えて来ました。
◆ 馬産地の現在
潮風と海霧によって良質の牧草が育ち、冷涼でありながら雪の少ない気候が、日高が一大馬産地に発展した大きな要因といいます。
昨夜、えりもの寿司屋のカウンターで盃を傾けながら、その現状について色々と話を聞きました。
牧草と気候を活かした養豚業も始まっているとのこと。一方で、競走馬繁殖について言えば、中小の牧場の経営環境は厳しく、事業者数で言えば9割を占める家族経営牧場が、この10年で3割も減少したそうです。バブル崩壊以降、競走馬は生産過剰となり、売買価格は平均500万円程度なのに、種付料を含む繁殖育成コストはそれを数百万円上回ります。多くの場合、大手が中小牧場を吸収して経営拡大していくらしい。外資も入って来ていると聞きました。
子馬たちの何割が、再びこの地に帰って来て余生を過ごすことができるのか知らないけれど、この初夏の一日、日高の馬達は伸び伸びと過ごしているように見えました。
◆ 静内
三石の道の駅で小休止。ここは海浜の立派なオートキャンプ場を併設していました。
ちょっと思うんだが、北海道におけるオートキャンプに適した季節は、せいぜい6~9月くらいではないでしょうか。あまり豪勢な施設を作っても、維持できなくなってしまうのでは… と心配。因みにこの施設は、ツーリングマップに、高額であるとわざわざ記されていました。
気持ち良さそうな施設ですが、職員以外、人影なし。
なおも海岸線をひた走ります。風景は変化に乏しいが、初夏の空に穏やかな海、心地良いライドが続きました。
11時半、あさり浜のドライブインで昼食休憩。少し早いかな、と思いきや、もう家族づれで8割がた埋まっていました。地元の人気店のようです。
エビ天の頭と尻尾がはみ出した、ボリューム感満点の天丼が幾つも運ばれていきます。食指が動くきますが、どちらかというとカツ丼が食べたい気分でした。運ばれてきたカツ丼は期待と違いソースカツ丼でしたが、美味しくいただきました。
静内川の河口に架かる橋を渡り、静内の市街地に入りました。平成の大合併により、今では「新ひだか町」になっていますが、なんだか朦朧とした名前で好きになれないし、隣には日高町があって紛らわしい。
それに、ここは学生時代に合宿やアルバイトで数回訪れた思い出の町でもあり、旧町名である静内の方がしっくり来ます。
昨日の疲れはほとんどなく、快調な走りでここまで来ました。あと50Km、鵡川まで行こうか…という考えが、再び脳裏をよぎります。
しかし、予定通り、ここで打ち止めにすることにしました。日高路を1日で駆け抜けてしまうのは、いかにも勿体ない。次回、また静内まで来て走り始めるのは面倒だけど、そんな手間も「週末北海道一周」の楽しみの一つでもあります。35年前の美女に酒場で再会できるかもしれません。
▼35年前の美女の話はこちら。
国道を外れて静内駅の方へ走っていくと、目立つのは廃屋ばかり。私の記憶の中にある静内は、小さいながらも賑わいのある駅前商店街があって、近在から買い物に来た人たちや近隣で働く人たち、さらに観光客などで、そこそこの活気があったもの。今でも、日高地方の中心地として一定の集客力はあるはずなのに、どうなってしまったのでしょうか。
鵡川行きのバスにはまだ少し時間があるので、市街地を一回りしてみると、国道沿いには馴染みのスーパーや、ドラッグストアや、家電量販店のポールサインが並び、駐車場も結構埋まっていました。静内でも、商業の中心地が駅前からロードサイドに移動してしまった、ということのようです。
輪行の準備を整えて、駅舎を覗いてみました。列車が来なくなってもう2年半というのに、3人ほどの駅員が勤務していました。
代行バスということは、運賃体系も列車と同一の扱いで、新千歳空港まで通しの切符を購入できるのかな、と思い、料金表を見上げていると、駅員の一人が「どちらまでですか」と声を掛けて来ました。新千歳空港までの乗車券を購入すると、鵡川・苫小牧・南千歳での乗継列車を記載した時刻表を一緒に渡してくれ、苫小牧での発着ホームなども丁寧に説明してくれました。
◆ 帰路へ、そして…
鵡川への代行バスは、一般的な路線バスの車両かと思いきや、リクライニングシートの立派なバスでした。JR北海道バスではなく、地元のバス会社に委託して運行しているようです。
代行バスなので、国道を一目散に走るのではなく、市街地や住宅地に入り込んでは一つ一つの駅に停車します。乗降客のいる駅はごく僅かなのだけれど、律儀に停まっていきます。
次回は、またこのルートを静内までバスで戻り、その後ロードバイクで苫小牧へ折り返すことになるので、車窓の風景を見るにも気合が入りません。居眠りしているうちに、外は強い雨が降り始めていました。鵡川まで走破しようなどと考えなくて良かった。
鵡川駅で鉄道に乗り継ぎ、苫小牧着。「ほしみ行き」の電車で南千歳へ向かいます。 ほしみ駅は、札幌の手稲区にあります。
こうして道央に戻って来て、さらにこのような行き先の列車に乗ると、たまらなく札幌が恋しくなります。思えば、このところ道東には何回か来ていますが、札幌にはもう1年のご無沙汰です。
後ろ髪を引かれる思いでしたが、南千歳では、ほしみ行きから下車すると同時に新千歳空港行きが向かいのホームに滑り込んで来るという絶妙なタイミングで、お陰で搭乗前に「松尾ジンギスカン」で一杯やる時間ができました。
しかし、ジンギスカンをつついているうちに、もうが我慢できなくなって、ネットで七月上旬の札幌の宿と航空券を手配したのでした。
3週間後の金曜の夜、私は再び新千歳空港へ飛び、今度は札幌へ。土曜日の早朝、札幌駅前で友人と待ち合わせ、輪行で富良野に近い根室本線の野花南へ向かい、そこから中富良野~上富良野~美瑛と、初夏の「カムイミンタラ」のライドを楽しみました。かねてより、このエリアの風景は日本の宝だと思っています。様々な季節に幾度でも訪れて、サドルの上で1日を過ごしたい場所です。
その夜のうちに札幌へ戻り、2日目は、久しぶりで札幌市内をポタリングして、北大の学食で牛トロ丼を頂き、その後北広島まで続くサイクリングロードなどを辿って新千歳空港まで自走。
これで帰るのが何とももったいなく、夏の北海道をもっと走りたい、という欲望が頭をもたげてきました。
幸いこの頃は、担当していたプロジェクト、と言っても大したもんじゃないのだけど、ともかくその一つがほぼ片付き、あとは形式的な承認を得るばかりとなって、肩の荷が降りたと同時に、当面は何かに追い回されることもない比較的気楽な状況でした。
ちょうど7月末の金曜に人間ドックを予定していました。朝一番でこれを終わらせれば、以後はフリーにできます。
よし、今度は、真夏の日高へ。
そんなプランがむくむくと頭をもたげてきました。
<第18日目 以上>
【本日の走行記録】
走行距離 81.9Km
走行時間 3時間06分
平均時速 26.4Km/h
消費カロリー 2079kCal
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最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
富良野と美瑛を走ってから一月も経たずして、次は真夏の日高へ… 今になって思えば、いくら何でも遊び過ぎ。
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