北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周 【4】1日目 札幌〜留萌③ 2015年5月2日
「週末北海道一周」初日の記録。かつての陸の孤島・雄冬岬から、「駅ーStation」の世界を垣間見つつ、春の日本海を北上して留萌を目指します。
◆ 雄冬岬→増毛
雄冬岬は、北海道三大秘岬の一つといいます。しかし、半島の突端にあるわけではなく、単なる国道の曲がり角的な感じ。
次々と車が駆け抜けてゆき、はるばる来た感慨も今ひとつ。
山上に展望台があるそうですが、距離メーターは90Kmを指しています。GPSが電波をキャッチできなかった長大トンネル内を含めれば、走行距離はそろそろ100Kmを越えたかとと思われるので、ここで脚を使ってしまうのは忌避。
岬の少し先に雄冬集落がありました。映画「駅-Station-」では、それなりに賑やかな年末年始の風景が描写されていましたが、今や人口70人足らずだそうです。
「あったまーる」なる名称の温泉施設がありました。通り過ぎる車の中から、中学生くらいの女の子が指差して笑っています。
雄冬の先は、波打ち際を春風と共に気持ち良く駆け抜けて留萌へ…という展開になれば楽なのですが、かつての陸の孤島故、増毛側にも険路が待ち構えていることは覚悟していました。
が、全長3キロ弱にも及ぶ上りっぱなしのトンネルを走らされる羽目になるとまでは考えていませんでした。
陽だまりを走っている限りはぽかぽかと心地よいのですが、ゴールデンウィークの北海道といえば時折雪が降って峠が通行止になることすらあるわけで、トンネル内は寒々しいものでした。上りっぱなし、といっても、後でランタスティックで確認すると2Kmの間に約100Mの高度差であり、5%程度のさほど厳しくない坂道なのですが、疲労が溜まってきたことに加え、さすがに長大トンネルの連続に辟易としてきたので、精神的に堪えます。
結局、この日は主なトンネルだけでも総延長15Km近くにわたり、地中を走ったことになります。
この2900mの日方泊トンネルと、それに続いて増毛へ向かって下る1992mの大別苅トンネルが、この日最後の難所でした。
◆ 増毛散策
険路を越えて到着した増毛は、午後の陽光に包まれて、初夏のような陽気でした。観光客の多さに驚かされます。
増毛には、旧本間家住宅など、この地がニシン漁で賑わった往時の建造物が幾つか残され、独特の風情のある街並みが形成されています。
増毛駅前には「風待食堂」の看板を掲げた観光案内所がありました。映画「駅 STATION」の重要な舞台の一つです。若き日の烏丸せつこ演じる、殺人犯の兄を持つ女性が、ここで働いているという設定でした。
風待食堂から道路を挟んだ反対側に、主人公たちが張り込んだ旅館があったのですが、取り壊されてしまったとのこと。
増毛駅もまた、作中、何度も登場します。今では無人駅になり、待合室で蕎麦屋が営業していました。その当時から今に至るまで、この駅の入場券は安定した人気を誇っているといいます。
ちょっと裏町をうろついて、妙齢の女将が一人、八代亜紀の「舟唄」を聴きながら店番をしている「桐子」という飲み屋が実在したりしないだろうか、と探してみたくもなります。
しかし今日は、通りを堆い雪が埋め尽くし寂寞とした抒情溢れる劇中の風景とは真逆と言っても良い、そんな気恥ずかしいファンタジーが甚だ似つかわしくない、日光が燦々と降り注ぐ春の午後。
暖かいうちに留萌を目指すことにしました。
◆ 増毛→留萌(今日のゴール)
増毛から留萌へは20Km弱。こんどこそ、潮風に吹かれながら、西へ傾いた午後の日差しを浴びて、海岸沿いの平坦な道を流しました。
海外勤務の4年間、100キロを越す距離を走ったのは、インドネシアでジャカルタ~ボゴール往復、タイでバンコクからアムパワーを経てメークロンまでと、僅か2回しかなかったこともあり、さすがに大腿筋はきしみ、腰がこわばり、尾てい骨が痛みます。それでも、走りきった充実感は、そんな疲労感を遥かに超越していました。
15時10分、留萌市街地の西側にある黄金岬に到着。
来た道を振り返ると、海の向こうに暑寒別岳の純白の姿が浮かんでいます。
あの向こう側から走りきったのだな。
ランタスティックの距離メーターは、131.6Kmを指していました。GPSが電波を受信できなかったトンネル内を加算すると、概ね146Kmということになります。センチュリーライドには若干不足していますが、それはどうでもよくなりました。行楽客で賑やかな岬で、ストレッチしてしばし身体を休めながら、全くのトレーニング不足でも何とか走れるものだ、と、大げさに言えば自分の可能性が広がったような嬉しさを感じていました。
留萌駅で自転車を輪行袋にパッキングし、札幌までの乗車券と、深川からの自由席特急券を購入。
かつては羽幌線との分岐駅だった留萌駅は、広いホームが往時の賑わいを偲ばせます。鉄道作家の宮脇俊三氏がかつて、関西本線の亀山駅を「没落した旧家のよう」と評していましたが、ここもそのようなイメージです。しかし、長大なホームに到着した単行のディーゼル車は、意外と混んでいました。
かつてNHKのドラマの舞台になった恵比島や、札沼線の終着駅であった石狩沼田、難読で知られる北一已などに一つ一つ停車する汽車旅は、退屈を感じる間もなく過ぎていきました。
<第1日目 走行記録>
走行距離:145.96Km ※Runtastic の記録プラスGPSが作動しなかった長大トンネルの距離合計
所要時間(休憩除):5時間38分 プラス上記GPS非作動時間
平均時速:23.4Km/h(Runtastic計測数値) 最高速度:52.8Km/h (送毛から浜益への下り)
獲得標高:1204m (Runtastic 計測値)
消費カロリー:3134Kcal (同上)
※次は第2レグ。留萌から強風のオロロンラインを北上し、稚内を目指します。
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