#29 地方都市の新たな魅力に出会う ブロンプトンとローカル線の旅/氷雨のち花開く 早春の武蔵野
少し前のことになりますが、3月末の旅のことを記したいと思います。
ここ数年、3月の終わりには、長年暮らした小江戸川越を訪問し、週末を過ごすのが定例化しています。2月中旬から5月にかけては仕事が猛烈に忙しいのですが、働き詰めでは体力より気力が持たないので、大好きな町で心穏やかなひと時を過ごそうと、金曜に1日有休を取得して木曜日の終業後に上京します。昨年は天候に恵まれ、しかも桜の満開と重なって、素晴らしい2日間でした。
しかし今回は、スタートからゴタゴタが相次ぎました。
◆ 波乱含みのスタート
3月最終、若しくは4月最初の週末は、例年ならば年度末の色々なゴタゴタは片付いて、ひと息つけるタイミング。なのに、次から次へと、硬直的、官僚的、また身勝手な面倒ごとが舞い込み、血圧が上がって顔が真っ赤なのが鏡を見なくともわかるほど。心臓がバクバクと暴れ、肉体と精神とどちらが先に壊れるか試されているかのよう。
定年を2年後に控え、この職場で働き続けることへの疑問と向き合い続けているこの数ヶ月。転職時期をそろそろハッキリ決めよう、と固く心に決めて、3月28日(2024年)、定時に退社。
明日にかけて寒冷前線が列島を通過するとのこと。天候が崩れ、冷たい雨が降り始めていました。ゴアテックスのウィンドブレーカーを着込んでプロンプトンに跨り、渡月橋を渡って阪急嵐山駅へ。
春先の旅ではいつも、温かく穏やかな心持ちになるような春の曲、例えば「春よ来い」とか、「愛は花、君はその種子」とか、ポプコン世代には懐かしい「青春18」などを聴きながら空港へ向かうのですが、今日は気持ちが昂り、仕事のことが脳内を埋め尽くし、音楽に身を委ねる気分にすらなれません。
伊丹空港に着くと、今夜はここで食事、と思っていた店は設備の故障。
京都から上京するなら新幹線のほうが早いのですが、旅費節約のため、いつも片道はマイルを使っているのです。
今回は、これが完全に裏目に出ました。
飛行機は、21時半の到着予定から20分ほど遅れました。ブロンプトンを受け取っている間に所沢行きの最終バスは出発してしまい、その15分後に発車するふじみ野行きのチケットを買い、土砂降りの中を埼玉へ。
ふじみ野で東武東上線に乗り継ぎ、24時をすこし回った頃、川越に到着。ブロンプトンを組み立てて、土砂降りの雨に打たれ路面に浮いた泥水を浴びながら、予約しているホテルへ。
ところが、ホテルの玄関は閉ざされ、フロントの灯も消えています。コールセンターへ電話してみると、このホテルのチェックインは24時までで、以後、フロントは無人になってしまい、チェックインすることができないのだそう。
予約時に注意事項を読み飛ばした自分のミス故、怒りの持って行き場もありません。
近隣のホテル数軒に電話してみたものの、どこも満室との回答。大雨の中、ブロンプトンを連れて、路頭に迷う羽目になりました。
不幸中の幸いは、勝手知ったる町であること。近くに快活クラブがあったのを思い出し、齢58にして、ネットカフェ初体験。
深夜に近隣のブースでスマホの着信音が鳴ったり、イビキや寝言が頻りに聞こえてきたり、またトイレに行きたくなったりで一時間おきに目が覚めて、身体にだるさの残る朝を迎えました。
◆ 氷雨の小江戸散策
翌朝も雨模様。しかし午後には前線が通り過ぎる予報なので、午前中は市内で過ごし、雨上がりにブロンプトンで走ることにしました。
どこも桜が満開だった去年と比べ、今年は開花が2週間ほど遅れています。ということは、川越で最初に開花する中院の枝垂桜が、ちょうど見頃を迎えているはず。朝食の後、今夜泊まるホテルへ荷物を全て預け、傘を借りて出かけました。
雨の境内には人気がありませんでしたが、枝垂れ桜は期待通り。
夜にはライトアップされるので、夕食の後、もう一度観に来ることにします。
続いて、喜多院、成田山別院、三芳野神社と、かつて暮らしていた頃のジョギングコースを散歩するうち、雨が激しくなってきて、鐘撞き通りのスタバへしばし避難。
川越では中院の次に開花する蓮馨寺の桜は、まだ一輪、二輪が開いたばかり。それでもこの雨が過ぎて午後から陽光が差したなら、一気に花開くことでしょう。明日からは早春恒例のワインフェスも開催されるよう。
昼ごはんは、丸広百貨店にある「ぽんぽこ亭」へ。川越の郊外にある鰻の人気店の支店です。
うなぎ食って外に出ると、薄陽が差し、歩道には影が落ちていました。
よーし、予報より少し早く前線が通り過ぎてくれた。
急ぎ足で荷物を預けてあるホテルへ。ブロンプトンを受け取ります。
晴れてよかったですね、と掃除をしていたスタッフからにこやかに声をかけられました。
川越市駅まで走り東武東上線に乗ります。この駅の先、東上線の運転本数は相当に減るのですが、13時36分発の小川町行き急行が2分ほど遅れてきて、待つことなく都合よく乗ることができました。
先ほどまでの冷たい雨がが嘘のよう。もう、ベストも不要なほどの暖かさ。
平日昼下がりの下り列車。立っている乗客はおらず、のんびりした空気が満ちています。
奥武蔵の山々からは、膨大な水蒸気が立ち上っているのでしょう、山脈の上に分厚い層雲が立ち込めています。
昨夜からの雨に洗われた緑が鮮やか。畑の菜の花も目に眩しい。
ところどころ、早咲きの桜が満開になっていました。
◆ 高坂〜武蔵嵐山
14時過ぎに高坂着。ブロンプトンを輪行バッグから出して出発。
近くの採石場へ延びていた貨物線の跡が自転車道になっています。この道を通って都幾川へと緩やかに下っていきます。
ここから小川町まで、昔よく走っていたルートを辿る予定。ルート上には沈下橋が2箇所、菜の花畑と桜並木、静かな山里と小さな分校跡などがあります。以前は、いつも川越市内の自宅からロードバイクで自走していましたが、今日はブロンプトンなので退屈な区間は輪行でショートカットしたのです。
一般道に出て、関越道のガードをくぐると、交通量は少なくなり、走りやすくなりました。
雨に洗われた早春の丘陵を見渡しながらのんびりとペダルを回すうち、最初の沈下橋に至りました。この辺の沈下橋は、四万十川などのような山里の風景に溶け込んだ旅情を感じさせるものではなく、通行量も意外と多くて待たされることも珍しくありませんが、やはり普通の橋よりはこちらを選びたくなります。
その先は、田園の中の細い道や、古い堤防上の道を辿り、次の沈下橋を渡ります。
やがて、菜の花畑が広がりました。ここ都幾川桜堤は菜の花と桜花のハーモニーが素晴らしい場所ですが、今年はまだ桜は蕾のまま。
空はすっかり晴れ渡りました。
長袖ジャージーの袖を捲りあげて走ります。
この先、初夏になるとラベンダーで埋め尽くされる花畑があります。今日は仄かな香りだけが漂う中を走り抜け、槻川橋を渡ります。
槻川橋のたもとには、以前、宿泊施設も併設した昭和な感じの健康ランドがありました。ここの露天風呂やサウナが好きで、日曜の夜など、川越からよくドライブがてら来ていたものです。その後、国内外の転勤生活で10年ばかりもご無沙汰しているうちに不幸な事故や事件が相次いだそうで、ある日ロードバイクで久しぶりに前を通ると、駐車場の入り口はチェーンで封鎖され、あかりが消えていました。今では更地になっています。
ここから大平山の低い尾根を越えて、遠山へ向かいます。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。引き続き、遠山から小川町への道のりについて綴っていきます。よろしければ続きもご覧頂ければ幸いです。
これまでのローカル線とブロンプトンの旅、こちらへまとめております。
私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは主に旅の記録を綴っており、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、また海外旅行のことなども書いていきます。宜しければ↓こちらもご笑覧下さい。
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