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北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周【43】14.5日目 落車 2016年秋

頚椎ヘルニアが猖獗を極めた2016年の夏。
それが軽快し、週一回の鍼治療の効果もあって、ほぼ問題なくロードバイクにのれるようになったのは、9月下旬のことでした。
まずは平日、帰宅後に軽く30分~1時間のライドから始めました。次は週末に荒川サイクリングロードを50キロ。
そして、そろそろ大丈夫、と確信が持てた10月1日のことでした…

◆ 落車。

その日は土曜日。
荒川サイクリングロード(以下、荒川CR)と見沼代用水を巡る、7~80キロ程のトレーニングに出ました。
次の週末に控える3連休には「北海道一周」の続編に出掛けるべく、航空券も宿も押さえていました。天候は、去年根釧原野を走った時のような快晴無風とは行かなそうだが、概ね晴れ時々曇りといった予報で、悪くはありません。
そんな訳で、この週末は、凝り固まった筋肉に喝を入れようと思ったのです。

この日、午前は小雨模様。薄日の差した14時過ぎに走り始めました。
川越~荒川CR~彩湖~見沼通船堀~見沼代用水東縁~鷺沼公園と、昔から馴染みのコースを走り、まだまだ脚は残っていたので、さらに上尾方面へ北上。
そして、荒川を渡る国道16号線の新上江橋に差し切ったのは、18時過ぎだったでしょうか。既に周囲は夕闇に包まれていました。

荒川CRをよく利用する方にはお馴染みと思いますが、この橋を渡る時は、幅の広い車歩道を走ることになります。途中で、堤防に降りて更に北へ向かうスロープが分岐。直進すれば国道16号線を経て川越に至ります。

さて、落車の原因は、よく覚えていません。
とにかく、薄暮の中で、前輪が何かに激突して、吹っ飛ばされました。
路盤の継目のギャップだったのか、それとも大きな石かブロックが転がっていたのか。
ライトは点けていたが、障害物は視野に入りませんでした。
スピードは、時速30キロ強だったでしょうか。

で、吹っ飛ばされた後のことは、不思議とスローモーションのように記憶しています。
まず、腰と左肩を強打しました。
続いて、縁石が頭にぶつかりました。ヘルメットのお陰で命拾いした、とその瞬間思ったものです。
そこへ、バイクが天から降ってきました。

背中を強打した衝撃と、脳を揺さぶられたお陰で、暫くは立つことができず、そのまま車歩道に倒れていました。もしかしたら、しばらく意識を失っていたのかもしれません。
日中は多くのサイクリストが行き来する道ですが、時間も時間、柵の向こうを猛スピードで駆け抜ける車ばかり。
やがてやって来た、中学生風の男の子が「大丈夫ですか」と声を掛けてくれました。
彼に救急車を呼んでもらおうか、という考えも少し頭を過ぎりましたが、ゆっくりと、体を起こします。取り敢えず歩くことはできそう。
「ありがとう、大丈夫」
男の子は、飛び散ったツール缶やボトルを拾い集めてくれました。

頭を打って、脳震盪を起こしたのでしょうか。自分がどこにいるのか、どんなルートを走ってきたのか、しばらく記憶が飛んでいました。
自転車を牽いて橋を渡り、もう真っ暗になった川越の郊外に伸びる国道16号線の歩道を、市街地の自宅へ向かって歩くうち、脳みその振動が収まったのか、徐々に客観的に状況を捉えられるようになってきました。

【自転車の被害】
1. 前輪がバースト。
2. 右側のブレーキ台座の取付角がずれてしまった。
3. フォークの取付角もずれてしまった。
… 目視できないカーボンフレームのヒビなどあったら一大事だが、差し当たってこんなところ。調整とパンク修理くらいで済みそう。

【ヒトの被害】
1. 腰の打撲。派手に腫れ上がった。
2. 左肩甲骨周りの強い打撲と、筋を違えたような痛み。
日常生活では、この二つがシビアに影響し、事故の夜は、座る、立つ、寝る、しゃがむ、といった動作が遅く悉く辛かった。
3. 額にたんこぶ。
4. 左膝裏から脹脛にかけて、筋を伸ばしてしまったような鈍い痛み。
5.擦り傷はいくつもできたが、大きいものはなし。

… あと一週間で、果たして北海道を走れるまでに腫れや痛みが回復するものか。
幸い、大事に至る怪我はなさそうでしたが。

最大の被害はこちら。

▲ 最大の損害

背中のポケットに入れていたiPhoneが、無残なことになってしまいました。
液晶画面だけでなく、筐体も破損。もはや電源も入らず、買い換えるしかありません。
まだ分割の返済も残っており、痛い出費。

翌日、仕方なく、痛む身体を宥め宥め携帯ショップへ赴き、iPhone 7 を新調しました。

◆ 肋骨骨折判明

腰はパンパンに晴れ上がり、身体を動かすたびに、背中に激痛が走ります。
左膝の裏を伸ばしたらしく、左足で踏ん張ろうとすると腱に嫌らしい痛みが走ります。
左手首も捻った模様。ただ、これらは然程の激痛ではなく、湿布と安静で治りそう。

切傷、擦り傷は何箇所もあるが、大事に至りそうなものはなし。消毒して馬油を数回塗り込んだところ、かなり迅速に回復に向かいました。

腰の腫れはひどく、仰向けに寝そべることができないほど。
それでも、一晩経って多少回復した実感はあり、さらにその翌日、翌々日と、徐々に回復に向かってはいました。

これなら、もしかしたら三連休の「週末北海道一周」の続編も何とか走れるのではないか。
微かな希望も芽生えたものです。

一番の問題は、左側の背筋から脇腹にかけての激痛でした。
寝る、起きる、しゃがむ、座る、といった日常生活の動作が、全ていちいち辛いのです。咳、クシャミもまた患部に響きました。

落車から3日後の火曜日の夕刻。
会社を早退させて貰い、いつもの整形外科で診察して貰いました。
レントゲン撮影の結果は、案の定「肋骨骨折」。

これで、北海道を走るどころか、向こう1ヶ月程度は、バストバンドを装着して運動を控えねばならなくなってしまいました。
当然ながら、もう一つの趣味であるスキューバダイビングもご法度。

◆ 道東への小旅行

北海道への航空券と初日の宿はANAのダイナミックパッケージで手配していました。このため、キャンセル料は旅行代金の50%もかかってしまいます。 これは、何とも勿体ない。

そこで、ロードバイクは無理でも、レンタカーで道東の景勝地を回り、せいぜい秋の風景と味覚だけでも楽しもうと考えました。パッケージで予約していたホテルは初日の釧路のみだったのが不幸中の幸い。2日目以後の旅程は柔軟に組み直すことが可能でした。

その週末、釧路空港へ。
市内で一泊した後、レンタカーを借り、前回走った難読地名ロードを東へ。5ヶ月ぶりに訪れた尻羽岬は鈍色の空の下にありました。

▲ 秋の尻羽岬

再び厚岸で牡蠣を食い、北海道一周では縁のない内陸の道を、硫黄山などに立ち寄りながら網走へ。

▲ 硫黄山

いつも通過してばかりだった網走、一度泊まって酒場放浪記もやってみたいと思っていました。でも、こんな形でそれが実現するとは悲しい。

▲ オホーツクの食の幸たち(涙)

翌日は美幌峠を越え、摩周湖、阿寒湖を巡って帯広泊まり。

▲ 美幌峠から屈斜路湖を望む
▲ 摩周湖
▲ オンネトー
▲ 北の屋台村@帯広

最終日は紅葉に染まる十勝平野を走り、紫竹ガーデン、幸福駅跡や中札内の六花亭アートビレッジを訪ねてから、道東自動車道で一路千歳へ。

▲ 旧国鉄・幸福駅
▲ 柴竹ガーデン①
▲ 柴竹ガーデン②
▲ 紫竹ガーデン③
▲ 中札内アートヴィレッジ①
▲ 中札内アートヴィレッジ②
▲ 中札内アートヴィレッジ③

▼ 紫竹ガーデン

▼ 中札内アートヴィレッジ

この年は、8月に5つの台風が連続的に北海道へ上陸・接近し、特に8月30日に上陸した台風10号が十勝にも甚大な被害を及ぼしていました。
あちこちで橋が流され、道路網が寸断されており、遠回りを余儀なくされました。また、十勝を後に千歳へ向かう道も、日勝峠を越える国道274号線が大規模な崩落で普通となった影響で、道東道は大変な混雑でした。

▼ 台風10号の被害を伝える十勝毎日新聞の写真特集

道東の秋の風景と、釧路、網走、帯広の夜を、それなりに愉しんだ旅ではあったものの、パック外のホテル代、レンタカー代と出費がかさみ、さらには阿寒湖でネズミ捕りに捕まってしまい、高くついた3泊4日でありました。

そればかりではありません。
かつては、ハンドルを握って長距離を運転しすることが大好きだったのに、それがなんとも味気なく、物足りなく感じられてならなかったのです。

絶景の道を走っても、風景たちはあまりに早く過ぎ去ってしまう。風や、鳥たちの歌を感じることもない。1日の旅程を終えて宿泊地に到着しても、今日一日を無事に走り切れたことへの充実感もない。

自転車に乗りたくて、堪りませんでした。

※ 最後までお読み頂き、ありがとうございました。こうして2016年の秋も深まり、北海道は間もなく長い冬。そこを無理して少しでも轍を伸ばそうと… よろしければ、続きもご笑覧下さい。


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