人材育成が上手になるたった2つの方法

私はこれまで、数人規模の中小企業から1000人以上の大企業まで、さまざまな職場を経験してきました。
その中で、多数の仕事がデキる人と接する機会があったのですが、その中でも、幸せそうな人とそうでない人の間には、明確な違いがありました。

後輩や部下を伸ばせる人は当然周囲から慕われており、チーム全体の成績もよいので上司からも頼りにされ、幸せそうでした。
一方、後輩や部下を伸ばせない、あるいは辞めさせてしまうような人は、どんなに仕事ができても部下や同僚から陰口を言われ、上司からも信頼されず、いつもイライラしていました。

皆さんも、そういう例を見たことはあるのではないかと思います。
この差はどこから来るのか?
それはずばり、人に仕事を教えるのが上手いか下手かという一点だけです。

私たちは学校や会社で多くのことを教わりますが、教えることに関して訓練を受けることはまずありません。
そのせいで不幸とは言わなくても、いまいち幸せを感じられない、ということはあると思います。
もしあなたが、幸せな会社員になりたいなら、この「教える力」は必須スキルと言っていいでしょう。

そこで今日は、「教える力」を伸ばすために必要な知識の話をしようと思います。
それはたった2つの技術、ティーチングとコーチングです。

ティーチング

ティーチングとはその名の通り、一方的に教えることです。
「教える」という言葉から連想するのは、まずこちらになるでしょう。

イメージしやすいのは、まだ何の知識もない新入社員に、ベテラン社員が業務の進め方を一から教える、というものです。
ティーチングでは、教える側から教わる側に一方的に知識を授けます。
それだけ聞くと簡単なことのように思えますが、実際には業務を深く理解していることを求められますし、新人にもわかるように言語化する力も必要です。

私も古い人間なので、新人に「見て覚えろ」的な態度を取ってしまうことがあるのですが、これは教える側の甘えとして反省せねばなりません。
新人教育も仕事の一環である以上、給料も発生していますし、責任をもって完遂する必要があります。

教え方としては、まず業務全体の流れを伝えてから、個別の業務のやり方を教えていくことになりますが、決してぶっつけ本番でやってはいけません。
事前に教える内容を体系的にまとめ、必要なら資料を作り、どのような日程で教えていくかのスケジュールも立てます。
そして、何度か練習してブラッシュアップしたうえで実際の新人教育に向かうのです。

「なぜそこまでしなくちゃいけない?」と思ってしまった人は、そもそも人に教えられるだけの業務知識や理解が自分にあるのか、振り返ることをお勧めします。
人に教えることほど、自分の理解不足を痛感し、勉強しなおす必要性を実感できる機会はないからです。

コーチング

新人がある程度経験を積んで、一人で仕事ができるようになってきたら、コーチングに移る必要があります。
コーチングはティーチングと違い、一方的に知識を授けるのではなく、双方向のコミュニケーションになります。

この段階に入ったらむしろ、直接的な指示やアドバイスをすることは避けなければなりません。
仕事のできる人ほど、ついつい具体的なアドバイスをしてしまいますが、いつまでもティーチングをしていては、本人の力で問題を解決する力が育まれないからです。

ではどうするのか?
まず教える側は、教わる側の話をよく聞かなければなりません。
今どんな仕事を進めていて、何に困っているのか、どうしたいと思っているのか、教わる側が安心して話せる環境を作るのです。
話をさえぎって自分の意見を話し出すようなことは厳禁です。

そして、一通り聞き終えたら、今度は質問するフェーズになります。
といっても「なぜ?」「なんで?」「どうして?」というWhy質問は避けるべきです。
Why質問は相手に責められているような感覚を与え、委縮させかねないからです。

「何が問題の原因だと思う?」「ほかにも原因があるとしたら何?」というようなWhat質問や、「どんな解決方法が考えられる?」「どんな状態になるのが理想?」などのHow質問で、相手の思考を整理させます。
この時、教える側が正解を知っている必要はありません。
あくまでも本人が自力で正解にたどり着けるよう、手助けをしてあげるのです。

ある程度解決方法の候補を絞り込めたら、「どの方法が現実的?」などクローズドな質問で結論を出させましょう。
コーチングとは、「あなたはすでにその問題を自力で解決できるんだよ」と教えることなのです。

ティーチングとコーチングの使い分け方

ティーチングは先述の通り、知識や経験のない新人に有効な教え方です。
一方、コーチングはある程度経験を積んだ中堅やベテランに有効な教え方です。

しかし注意しなければならないのは、「新人には常にティーチングで接する」「中堅やベテランには常にコーチングで接する」という考え方は間違いだということです。

新入社員であっても、すでに入社前から専門知識があって、得意分野のことなら自分で解決できる実力があるのであれば、その分野に限ってはコーチングで接したほうが成長を早められるでしょう。

逆に、社歴は中堅やベテランであっても管理職としては新米であったり、違う部署に異動したばかりで必要な知識が不足している場合などには、ティーチングで接する必要があります。
また、社歴のわりに苦手分野を克服できていないような場合も、その分野に限ってはティーチングをする方が効果が見込めます。

このように、ティーチングとコーチングは、人や社歴ベースで使い分けるのではなく、スキルの成長段階に沿って使い分けるべきものです。
これを知っているだけで、あなたは他の人よりずっと「教える力」を手に入れやすくなるでしょう。

「教える力」がある社員は、ない社員より必ず幸せに近づけます。
この力で周囲の人々をより成長させ、自分を含む全員を幸せにできるようになっていただけたら、私もとても嬉しいです。

#仕事の心がけ

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