東洋医学講座 286
〇五味の生成
▽五味との働きと人体
▼五味の基本ー甘味
五味には、酸味・苦味・甘味・辛味・塩味の五種類ありますが、これは単なる符号であります。常識的に考えると、間違いやすいのは甘味というと砂糖だけを考えがちですが、そうではなく、甘味は糖質、すなわち含水炭素のことを指します。
五味の母胎は土の甘味です。この甘味がある刺激を受けて、酸味に変化し、その変化の度合いによって酸味の度合いも異なります。カルメラは砂糖を焦がして作ります。糖質が夏・昼の火気を加えられて苦味となりますが、火力の度数によって苦味の度合いも違ってきます。
酸味は苦味の前提に当たり、甘味の変化したものであり、酸味がさらに変化したものが苦味です。苦味は夏の土用によって甘味となり、秋の収斂で辛味となります。そして、冬気によって塩味になります。
甘味はこのように五味が母胎となっていて、春夏秋冬の母胎が大地であるのとまったく同じことであります。すなわち、五味は甘味というものが変化したものといえます。
人体は五味を平均して必要とはしていません。土台である甘味を量的に多くとり、他はその体質づくりに必要な少量をとればいいのであります。肉体全体は、大地に相当する脾体であり、味でいえば甘味です。その甘味を母胎として塩味的に働いたものが骨であり、酸味的に働いたのが筋肉であります。また、苦味が加わって働いたものが血管系に、甘味に辛味が加わったものが皮膚をつくっているものと考えます。
また、甘味の脾体が少しずつ化したものが骨・筋・皮膚となります。要するに、同じ蛋白体でありながら、骨・筋・皮下組織・皮膚などと質や密度が違うのは、五味それぞれの働きによるものであるからです。
別の角度からいえば、地球上でも住んでいる地域や場所によっても変わります。それは五味のあり方、量が変わってくるからです。五味が100・100・100というように均等に働いているわけではないからです。さらに体質によっても五味の摂取量が少しずつ変わってきます。肝旺体質の人は、筋肉・神経体質といわれるくらいなので、酸味を多く必要とします。
そして、甘味には有益性と有害性があります。有益性とは、甘味は五味の母胎になっているので、体形づくりに働き、基礎体力が完成した後は、あたかも車のガソリンのように、カロリーとして体の原動力となっています。有害性については、現代教育ではあまり学べていなくて、わずかに糖尿病くらいであります。糖質過剰の害の第一は、内臓の弛緩です。内臓筋が弛緩すれば、その機能は低下し、関連臓器は全て機能が減退して不活発になります。