
東洋医学講座 317
脾と肺
相生関係における力差
脾は、脾体としては全ての臓器に複合的に相生していますが、脾気という単気としても肺と相生しています。ところがこのような相生の関係でも、両者の間で力に差があり過ぎるとよくありません。差はバランスを崩す元になります。
差があるときに力がない方は礼を尽くして接し、力がある方はそれに応えて、力がない方に自分の力を合わせればいいのであります。例えば、結婚のときの相性でも先天の星が相生関係にあっても、お互いに力の差があり過ぎて、しかも心が狭くて包容力がなければうまくいきません。
力のある方は自分のペースで進み、「あなたが速く歩かないから、一緒にいけない」といい、力がない方は「あなたが速すぎるからついていけないのです」といえば、両者が不満を持つことになり、相生の力が何ら発揮されない結果となります。したがって、相生よりも人間の包容性、要するに人徳が第一になります。
相生ばかり固執して、差や人格の包容性を見ない人は、相生の真理を知っていても、全体の宇宙真理、すなわち中庸の真理、バランスの真理を知らないことになります。相剋関係でも、差がなければはるかに力を発揮することが出来ます。お互いに違う性質を持って補い合うからです。
刀でいえば、二刀流ということになります。右も左も攻められて、防御も出来ます。相生関係が一つのところに深く働けるのに対し、相剋関係は多面的に働くことが出来ます。そのかわり相剋はお互いに少しの差が生じてもうまくいかなくなる危険性をもちます。いずれにしても、差があってもなくても人格が優れていることが相生よりも先行します。
人体においても、五臓の間に差がないことが重要であります。差があると、全ての負担が力がないところにかかり、そこはますます機能が低下していきます。
ここでは脾と肺の話なので、それを例に挙げますと、脾旺タイプの人はどうしても過食気味になる傾向があります、持っている力の特徴を使い過ぎるからですが、普通この場合、土剋水と腎に負担がいきます。しかし、肺が極度に機能低下していれば、腎よりも肺に負担がかかり、肺が一層傷つけられることになります。
要するに、臨床面ではその人の体質の特徴と欠点を見つけることが第一になります。