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カップ麺。調理時間とお湯の量が分かりづらい

全世界で年間約1,000億食も消費されるインスタントラーメン。お湯を入れて数分待つだけで、サッとおいしくお腹を満たせる国民食といってもいい食べ物です。

しかし、毎回思うのは調理時間とお湯の量です。「なぜ?」というくらい、パッケージの隅っこに小さい文字で印刷されていることが多いですよね。調べてみると、実際に「分かりづらい」という声が上がっていて、改善に取り組んでいるメーカーもあるようです。その改善後パッケージを見てみると、どうしても主役であるラーメンのビジュアルは崩したくないようですね。

そう、主役は確かにラーメンです。しかし、私たちがカップ麺を作るときに最初にやることは……この辺でやめておきましょう。


注)主治医はパッケージデザイナーではありません。UI/UXデザイナーから見た考察となります。

役割

インスタントラーメンのパッケージデザインは、製品の魅力を視覚的に伝え、必要な調理情報を提供する役割を果たします。これは、ユーザー体験観点から、「製品訴求」と「使用方法の伝達」という二つの重要な機能を担っています。

特に後者において、ユーザーが簡単かつ直感的に調理できるようにするためには、情報の視認性と理解のしやすさが求められます。適切なデザインは、ユーザーが商品を購入または調理する際のフリクション(摩擦)を減少させ、満足度を高めることができるのです。

課題

冒頭で指摘した通り、多くのインスタントラーメンのパッケージでは、調理時間やお湯の量が小さい文字で隅に印刷されていることが多く、ユーザーにとって非常に見づらいものとなっています。

この問題は、ブランディングとマーケティング(売れるパッケージデザイン)と密接であるため、ユーザー体験の良し悪しだけで結論付けられる問題ではありません。

しかし、ユーザーが必要な情報を迅速に見つけられないというフラストレーションは、間違いなくユーザー体験を損ねているといって良いでしょう。ユーザーは、主役であるラーメンのビジュアルから得られる味への期待をつのらせる一方で、実際の調理プロセスにおいて重要な情報を見逃す可能性があるということです。

これらの課題は、ユーザビリティの基本原則の下記に反しています。

  • システム状態の可視化(Visibility of System Status)

  • 柔軟性と効率性(Flexibility and Efficiency of Use)」

リスク

ユーザビリティの観点から、このようなインスタントラーメンのパッケージデザインの問題は以下のリスクを伴います。

  1. ユーザーのフラストレーション
    調理時間やお湯の量が分かりづらいことで、ユーザーがストレスを感じる可能性があります。必要な情報を見つけるのに余計な労力がかかることで、ユーザーの認知リソースが不必要に消費させる点も見逃せません(認知的負荷)。

  2. 調理ミスによる品質イメージ低下
    視認性が低い情報により、ユーザーが誤った調理を行うリスクが高まります。これにより、製品本来の味や品質が損なわれる可能性があります。

  3. ブランドの信頼性低下
    ユーザーが製品の使用に困難を感じることで、ブランド全体に対する信頼性が低下するリスクがあります。

認知バイアスの一つである「視覚優位効果(Visual Dominance Effect)」によって、ユーザーは視覚的に目立つ情報を優先して認識する傾向があります。このため、重要な情報が目立たないと、ユーザーが見落とす可能性が高くなります。

参考: Visual Intelligence: Perception, Image, and Manipulation in Visual Communication by Anne Marie Seward Barry.

解決案

インスタントラーメンのパッケージデザインを改善し、ユーザー体験を向上させるためには、以下のような対策が有効だと考えられます。

  1. 情報の階層化
    最も重要な調理情報を目立つ位置に配置する。

  2. 情報の一貫性
    異なる製品ラインでも、情報の配置や表現方法を統一することで、ユーザーが一貫した体験を得られるようにする。

  3. ビジュアルガイドの導入
    テキスト情報だけでなく、アイコンや簡単な図解を使用して、調理方法を視覚的に分かりやすく伝える。これにより、情報の理解度が向上し、誤使用を防ぐことができます。

  4. QRコード活用
    詳細な調理情報をオンラインで提供する。

これらの解決策は、「情報デザイン」の原則に基づいています。これは、複雑な情報を理解しやすく、使いやすい形で提示する手法です。

参考: Information Anxiety. Doubleday. Wurman, R. S. (1989).

まとめ

インスタントラーメンのパッケージデザイン改善は、製品の魅力を損なうことなく、ユーザビリティを向上させる可能性があります。例えば、交通標識が一目で情報を伝えるように、調理時間や湯量をアイコンで表現することで、言語に関係なく情報を伝達できます。

製品ビジュアルと調理情報のバランスを取ることは難しい課題ですが、創造的なデザインソリューションにより解決可能です。例えば、パッケージの開封部分に調理情報を配置することで、ユーザーの行動フローに沿った情報提供が可能になります。

このような改善により、ユーザーは簡単に必要な情報にアクセスでき、より良い調理体験を得ることができます。結果として、製品満足度が向上し、ブランドロイヤリティの強化につながるでしょう。インスタントラーメンという日常的な製品でも、適切な情報デザインが大きな違いを生み出すのです。


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