爪切り。カーブが凄すぎて爪が切れない。
テコの原理が効きそうなデザインなのに「なぜ切りにくいんだろう」と不思議に思いました。
理由はテコ部分の高さにありました。カーブがあり、約45度まで上がります。このカーブのお陰で持ちやすいですが、高さがあるために大きく手を広げて持つ必要があるんです。この持ち方を続けると疲れるので、無意識に力が入って刃を閉じてしまう。だから上刃と下刃の間に爪がなかなか入らない、切りにくいということが起こっています。
爪を切るための製品なのに、切りにくいなんて本末転倒ですね。デザインが良いだけに残念。
注)主治医はプロダクトデザイナーではありません。UI/UXデザイナーから見た考察となります。
役割
テコの原理を利用したデザインは、本来、少ない力で効率的に作業を行うためのものです。特に爪切りのような製品では、テコの原理を活用することで、軽い力で爪をスムーズに切ることが期待されます。ユーザーが簡単に使えるように設計されることが、このデザインの重要な役割です。
課題
冒頭で記した通り、この爪切りはテコ部分の高さが使いにくさを生み出しています。テコ部分のカーブとヘアライン加工されたステンレススチールの美しさには目を見張るものがありますが、このデザインの良さが逆に使いにくさを引き起こし、ユーザー体験を低下させています。
これらの課題は、ユーザビリティの基本原則である「柔軟性と効率性(Flexibility and Efficiency of Use)」に反しています。また、人間工学的な「快適性」の観点からも問題があります。
リスク
このようなデザインの問題にはいくつかのリスクが伴います。
ユーザーのフラストレーション
使いにくい爪切りは、ユーザーにストレスを与え、製品の使用を避ける原因となります。健康リスク
手に無意識に力を入れることで、手の疲労や痛みを引き起こし、長期的には手首や指の問題につながる可能性があります。怪我リスク
爪切りが使いづらいことで、誤って皮膚を傷つけるなど怪我をするリスクが高まる可能性があります。製品やブランドの信頼性低下
切りにくい製品は、ユーザーの満足度を下げ、ブランド全体の評価にも悪影響を及ぼします。ユーザーは一度不快な体験をすると、その製品やブランド全体に対してネガティブな印象を抱きやすくする傾向「選好逆転(Preference Reversals)」があります。製品の乗り換え
使用するたびに疲労感や不快感を覚えると、ユーザーはその製品を避けるようになり、最終的には他の製品に乗り換える可能性があります。
解決案
この爪切りの使いやすさを向上させるためには、以下のようなデザイン改善が有効と考えられます。
テコ部分の高さの調整
カーブの高さを低くすることで、手を広げる必要がなくなり、長時間の使用でも疲れにくくする。これにより、力の入れ過ぎを防ぎ、刃の間に爪が入りやすくなるはずです。グリップ改善
握りやすい素材や形状を採用し、少ない力で安定して持てるようにする。刃の角度調整
爪が入りやすい角度に刃を設計する。スプリング機構の改良
適度な抵抗を持たせ、無意識の力の入れ過ぎを防ぐ。エルゴノミクスの改善
持ちやすさを保ちながら、手の自然な形状にフィットするデザインを採用する。例えば、グリップ部分に滑り止め加工を施すことで、安定した操作を可能にするなどです。
これらの解決策は、「ユニバーサルデザイン」の原則に基づいています。これは、可能な限り多くの人が使いやすい製品を設計するという考え方です。
まとめ
爪切りのデザイン改善は、日常的な爪の手入れをより快適にし、ユーザー体験を向上させる可能性があります。例えば、ペンのグリップ部分が手の形に合わせて設計されているように、爪切りも手の自然な形状や動きに合わせたデザインを採用することができます。
テコの原理を活かしつつ、使いやすさを向上させることは、一見相反する要求のように思えますが、細かな調整と工夫により両立可能です。例えば、カーブを維持しながら全体の高さを低くすることで、持ちやすさと使いやすさの両方を改善できるかもしれません。
このような改善により、爪切りは本来の目的である「簡単に爪を切る」という機能を十分に果たすことができます。結果として、ユーザーの満足度が向上し、製品の価値も高まるでしょう。小さな日用品でも、適切なデザインが大きな違いを生み出すのです。
お問い合わせはこちらから(ヒアリングからお見積りまで無料です)。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?