見出し画像

ビフォーアフター。必ずしもデザイン改善前が悪いわけではない

Highlightによるビフォーアフター形式の解説。必ずしもデザイン改善前(ビフォー)が悪いわけではないのが難しいところです。

昨今は、CDOやCXOがいたり、インハウスデザイナーがアプリのUI/UXデザインに協力していたり、外部のデザイン会社が伴走していたりと、最初から使いやすいアプリをリリースしようという風土が出来上がってきているように思います。しかし、業務システムの世界はまだそうではありません。「使えればいいじゃん」という発想、正確には、あらゆるニーズを満たすことを要求され、デザインは後回しにされてしまうケースがまだ多いのです。

業務システムが使いにくいと誰が困るのか。まずは従業員(Bad EX)ですよね。彼らが快適に仕事をできないと、次に困るのはその企業の顧客(Bad CX)です。例えば在庫の問い合わせにタイムリーに対応できなかったりして、他のお店に行かれてしまうなど、ブランドの乗り換え(Bad BX)が起こります。これは仮説ではなくて、実際に現場で起こっている事実です。

この状況を放っておいてよいのか、とモヤモヤを抱える方々に向けて、もっと気軽に相談できる場所を作ろうと目指してローンチしたのがHighlightですが、実際にシステムを見せてもらうと、特段悪いというわけではない場合も多いです。ただ、「使えればいい」で停滞してしまっていて、そこが打破できない。「悪い」とダメ出しをするのではなく、「こうすればもっと良くなりますよ」を丁寧かつ相手への敬意を忘れずに、ときにはズバリと伝えるのが、信頼できる主治医の役割であろうと考えています。

今回は、そんなレビュー結果の一端が垣間見えるように、LP用に作った3例についてお話しします。


LPのレビュー結果はアレンジしている

LPに掲載されている3つの事例は、いずれも実例からピックアップしたものです。ただ、誰もが閲覧できるものなので、企業名や製品名が特定できないようにアレンジしています。

そして、LP用に何をピックアップするか、スタッフ全員でかなり悩みました。全体の中の1要素だけを抜き出しても理解してもらうのは難しいですし、全体過ぎると説明が複雑になります。結局、実例を簡略化し、「こういう感じに診断してもらえるんだ」が伝わることを最優先に考え、方針を固めて作成しました。

下図は、LPには載せていないHighlightの実例です。業務システムのフォームに関する共通の前書きとして使ったものです。レビューの規模が大きい場合、複数画面に共通する課題が出てくるため、このようなページを織り交ぜることがあります。

本物なので一部ぼかしています。

例1:ドロップダウン vs ラジオボタン

「そんなの知ってるよ」と思った皆さん。それはおそらく皆さんが業界人だからです。両者は「VS」の対決構図でもありません。選択肢の数や、それが置かれる場所の前後の文脈によって、おのずとどちらかに決まるものです。皆さんも適切なほうを選んでいるはずです。

デザインが本業ではない方が、UIデザインの一端を垣間見ることができる例。

しかし、まったくデザインに詳しくない人に聞いてみたところ、「へぇ!なるほど」という反応がありました。UI/UXデザイナーにとっての当たり前は、一般の人にとって当たり前ではない、という気づきからピックアップした例です。

例2:エンプティステート

これは業務システムや管理系サイトでよく見るタイプのものです。業界の方でも「エンプティステート(Empty State)」と呼ばれていることを知らない場合がありますね。と、偉そうに言いながら、実は私も最近知りました(笑)。それまでは「空のときのやつ」みたいな呼び方をしていました。

エンプティステートがないとユーザーは固まります。

データが登録されるとUIの全体像が初めて見えてくるタイプのものですが、データがないとき、あるいはデータがすべて削除されたときに、このエンプティステートを用意していないと、ユーザーは「何かが行われているんだろう」と手を止めて待ってしまいます。何も行われていないにもかかわらず。

このビフォーは「データなし」と記されているので、まだ良い方です。ここが真っ白の場合、多くのユーザーはサポートに問い合わせます。そして、サポートは「お客さま、データは登録されていますでしょうか?」と答えることになります。こんな場面を何度も見てきました。エンプティステートを適切にデザインして配置すれば、そんなことは起こりません。

ユーザーが困りそうな場面に先回りするのは、UXを高めるための重要な思考の一つですが、先回りし過ぎるとおせっかいになることもあります。そうなってないか、まずは自分たちでチェック、次にユーザーテストです。手間も時間もかかりますが、そうして最適なおもてなしバランスを見つけていきます。

例3:ビジュアル

最後に、デザインのもっとも光の部分、すなわちビジュアルの魅力がアプリの世界観を変える可能性についてご紹介します。ちょうど良い実例があったため、そこから抜粋してきました。申請から承認までの状態を表すUIです。

人の顔が見えると、親近感が生まれ良い行動に導けることがあります。

淡々と見えてしまう文字情報を、デザインの力でより伝わりやすくする例の一つです。ビジュアルを良くしようとし過ぎて、肝心の「伝わりやすさ」が薄れてしまっては本末転倒です。ビフォーと見比べながら、そこがクリアできているかどうかを客観的に見る力が必要になる場面ですね。UIデザイナーの腕の見せ所でもあります。

ちなみに、このように表示されることが分かると、皆さん積極的にプロフィール画像を登録する傾向が見られました。クライアントとの雑談で「顔が見えると頭に残る」という話も。その方は、このアプリで申請を止めている張本人です(笑)。擁護すると、申請が特定の担当者に集中するという別の課題があり、その集中砲火にあっているご本人でもあります。

デザインの力でアプリの価値を高められる

以上、3つの例を通して、デザインがいかにアプリの使い勝手や魅力を左右するかを紹介してきました。

  1. ドロップダウン vs ラジオボタン

    • UI/UXデザイナーにとって当たり前のことが、一般ユーザーには新鮮な発見であることがあります。選択肢の数や文脈に応じて適切なデザインを選ぶことが重要です。

  2. エンプティステート

    • データがない状態でも、ユーザーが困らないように配慮したデザインが必要です。これにより、ユーザーの混乱を防ぎ、サポートへの問い合わせも減らすことができます。

  3. ビジュアルの魅力

    • ビジュアルデザインは、アプリの世界観を一変させる力を持っています。プロフィール画像の表示ひとつで、ユーザーの行動や印象が大きく変わることを示しました。

デザインは単なる装飾ではなく、アプリの価値を高め、ユーザー体験を向上させる重要な要素です。Highlightのレビューを通じて、より良いデザインを追求し、ユーザーの期待を超えるアプリを目指していきましょう。


お問い合わせはこちらから(ヒアリングからお見積りまで無料です)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?