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歯磨きセット。自立最優先、出し入れ大変

自立することを重視しすぎましたね。筒状のビニールケースは、口がどうしても内側に戻ろうとするので、中身の出し入れが大変です。歯磨き後の濡れた手で、ケースを広げながら歯ブラシを戻す。やってみると分かりますがなかなか難しいです。衛生的にもあまり気持ちの良いものではないですね。

例えば、ファスナーを上部に移動するのはどうでしょうか?「自立する・出し入れ簡単・どっちが上かすぐわかる」。製造工程が変わるとは思いますが、形については大きく変えずに済むと思うんです。


注)主治医はプロダクトデザイナーではありません。UI/UXデザイナーから見た考察となります。

役割

歯磨きセットは、日常生活において重要な役割を果たしています。特に外出先や旅行先での衛生管理において不可欠といえるものです。口腔ケアをどこでも手軽に行えるため、健康を維持する上でも大きな助けとなります。

ユーザー体験観点から見て、「携帯性」と「衛生管理」という二つの重要な機能を提供しているといえます。

課題

冒頭の写真のような筒状のビニールケースタイプには、いくつかの課題があります。最大の問題は、ケースの口が内側に戻ろうとするため、中身の出し入れが困難であることです。

歯磨き後の濡れた手でケースを広げながら歯ブラシを戻すのは非常に不便で、衛生的にも問題があります。さらに、ケースが自立することを重視した設計が、実際の使用感を損ねている点も見逃せません。

これらの課題は、ユーザビリティの基本原則の一つである「柔軟性と効率性(Flexibility and Efficiency of Use)」に反しています。

リスク

このデザインの問題は、ユーザー体験を大きく損なうリスクがあります。

  1. 操作の煩雑さ
    ケースの開閉が難しいため、日常的な使用においてユーザーが大きなストレスを感じます。

  2. 口腔ケア頻度の減少
    特に公共の場や職場で使用する場合、不便さが目立つと使用を避けるようになり、結果として口腔ケアの頻度が減少するリスクがあります。

  3. 衛生面の問題
    濡れた手でケースを操作することで、ケース内部に水分が入り込み、カビや細菌の繁殖を促す可能性があります。大げさにいうと健康を損なうリスクが高まるといえます。

解決案

現在の設計に対する解決策として、以下のような改善案が考えられます。

  1. ファスナーの位置変更
    ケースのファスナーを上部に移動することで、ユーザーがケースを広げずに中身を取り出しやすくする。これにより、使いやすさが向上し、ユーザー体験が改善されるでしょう。この解決策により、「自立する」「出し入れ簡単」「どっちが上かすぐわかる」という利点を兼ね備えることができます。製造工程には多少の変更が必要になると思いますが、ケースの基本的な形状は大きく変えずに済むため、実現可能性は高いはずです。

  2. 硬質素材の使用
    ケースの一部に硬質素材を使用し、形状保持を改善することで、内側に戻りにくい構造にする。

  3. グリップ部分の追加
    濡れた手でも扱いやすいテクスチャーを側面に追加する。

これらの解決策は、「アフォーダンス」の概念に基づいています。これは、製品のデザインがその使用方法を直感的に示唆するべきだという人間工学の原則です。

参考: The Psychology of Everyday Things. Basic Books. Norman, D. A. (1988).

まとめ

歯磨きセットのケースデザインを改善することで、ユーザー体験を大幅に向上させることができます。自立性、使いやすさ、衛生面のバランスを取ることが重要です。例えば、ペットボトルのキャップが上にあるのと同じように、ファスナーを上部に移動することで直感的な使用が可能になります。製造工程の変更は必要かもしれませんが、形状を大きく変えずに機能性を向上させることができるでしょう。

このようなユーザー中心設計のアプローチにより、日常的に使用する製品の価値を高め、ユーザーの満足度を向上させることができます。小さな改善が、大きな変化をもたらすのです。


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