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ストローレスリッド。ストローを使う人が減らない

コンビニやテイクアウトできるコーヒーショップで見かけるようになったストローレスリッド。飲み口付きの蓋でストローを使わずにドリンクを飲むことができます。プラスチック削減を目的としたSDGs観点から注目を集めているこのリッドですが、ストローを求める客が減らず、採用の取りやめを検討する店舗があるそうです。

ストローレスリッドの課題の一つは中身をかき混ぜられない点です。これはストローを求める客が減らない要因の一つでしょう。また、「映え」するドリンクではデコレーションされており、結局ストローに類するものが必要になってしまいます。

このリッドを初めて見た時、「なんて素晴らしい発明だ」と思いました。環境負荷への意識を、提供する側と購入する側の双方が高める必要があるでしょう。

この記事は、主治医の友人である「SPIEL COFFEE」店主からリクエストをいただきました。新高円寺のすぐそば、英国調の洗練された佇まいが、優雅で静かな街並みに見事に調和しています。
ここで味わえるスペシャリティーコーヒーは、香り高く深みのある格別な一杯。ぜひお店に足を運んで、贅沢なコーヒー体験を楽しんでみてください!
https://www.instagram.com/spielcoffee/
https://www.facebook.com/spielcoffee

WeWork仲間たちとの秘密の会合場所

注)主治医はプロダクトデザイナーではありません。UI/UXデザイナーから見た考察となります。

役割

ストローレスリッドの主な役割は、環境に配慮しながら飲料を楽しむユーザー体験を提供することです。具体的には下記の通りです。

  1. プラスチック使用量の削減

  2. SDGs達成への貢献

  3. 従来のストロー使用からの行動変容促進

  4. 飲料容器としての機能性維持

このデザインは、ユーザーインターフェース(UI)の観点から見ると、環境配慮型の新しい飲用方法を提案しています。ユーザー体験(UX)設計においては、使いやすさと環境への配慮のバランスを取ることが重要となります。

課題

ストローレスリッドの普及には、以下のような課題があります。

  1. 機能性の制限

    • 飲料のかき混ぜが困難

    • デコレーションドリンクへの対応不足

  2. ユーザー習慣の変更

    • 長年のストロー使用習慣からの移行の難しさ

  3. 視覚的魅力の維持

    • SNS映えを重視する現代の消費文化との整合性

これらの課題は、「機能的固着(Functional Fixedness)」という認知バイアスと関連しています。ユーザーは既存の方法(ストロー使用)に固執する傾向があり、新しい解決策への適応に抵抗を感じる可能性があります。

参考:Functional Fixedness as a Cognitive Bias, By Kendra Cherry, MSEd.

また、ユーザビリティ10原則の「ユーザーのコントロールと自由度(User Control and Freedom)」の観点からも、ストローレスリッドはユーザーの選択肢を制限している面があるのは否めません。

リスク

ストローレスリッドの導入には以下のリスクが考えられます。

  1. ユーザー満足度の低下

    • 使い勝手の悪さによるネガティブな体験。リッドからドリンクがこぼれて服を汚してしまうなど(一般的なマグカップなども該当)。

    • 選択肢の制限による不満。とりわけストローを求める消費者にとって、ストローレスリッドにストローを入れる本末転倒の行為はストレスにつながる可能性があります。

  2. ブランドイメージへの影響

    • 環境配慮と顧客ニーズのバランスが取れていないという印象を抱かれる可能性があります。

  3. 売上への影響

    • ストローを求める顧客の離脱。

    • デコレーションドリンクの需要減少。

ストローレスリッドは導入単価が高いため、ストローを求める人が多い場合、純粋にその導入コストが店舗運営をひっ迫することにもなります。

これらのリスクは、心理学的概念である「変化への抵抗」と関連しています。人々は慣れ親しんだものを好む傾向があり、新しいシステムへの適応には時間がかかる場合があります。

参考:How to Deal with Resistance to Change, Harvard Business Review.

解決案

ストローレスリッドの課題を解決するためのアイデアは以下の通りです。

  1. ハイブリッドデザインの開発

    • ストローレスリッドのリッドを、そのままでもストローでも、どちらでも快適に利用できるように調整・改良する。

    • かき混ぜ機能付きの蓋。例えば、蓋の内側に折りたたみ式の小さなスプーンやパドルを組み込む、飲み口の周りに回転可能な羽根状の突起を設置など。

  2. 内側に溝をつける改良

    • 容器本体の内側に波型や螺旋状の溝を付けることで、容器を傾けるだけで自然にかき混ざるようなデザインを試行して改善する。

  3. エコフレンドリーな代替品の提供

    • ストローを必要とする消費者に対して、紙ストローやバイオプラスチック製ストローを提供する。

  4. ユーザー教育とマーケティング

    • 環境意識向上のためのキャンペーンを実施する。

    • ストローレスリッドで飲用するメリットを訴求。例えば「一杯のコーヒーで、地球に優しくなれる」など。

    • オリジナルのマイストローが作れる市場を創出して、自分専用のストローを持つことが環境に優しくクールである文化を根付かせる。

  5. インセンティブプログラム

    • ストローレスリッド選択時のポイント付与や割引プログラムの提供。

これらの解決策は、人間工学的アプローチを取り入れることで、より効果的になる可能性があります。例えば、手の動きや口の形状により適合した飲み口のデザインなど、人間の身体的特性を考慮した設計を実現できれば、ユーザー体験が高まり、ストローレスリッドが市民権を得る日が来るかもしれません。

ただし、複雑な構造になる場合、製造コストの上昇や耐久性の問題を引き起こす可能性もあります。そのため、シンプルさと機能性のバランスを取ることが重要となり、抜本的な解決まで乗り越えなければならないハードルが多くあるのが現状といえるでしょう。

参考:What is ergonomics?, by Chartered Institute of Ergonomics & Human Factors.

まとめ

ストローレスリッドは、環境配慮型デザインとして大きな可能性を秘めています。しかし、その普及には多くの課題があります。ユーザー体験を向上させつつ、環境への配慮を維持するバランスが求められるからです。

解決策としては、技術革新だけでなく、ユーザー教育や行動変容を促すアプローチがとりわけ重要です。例えば、ストローレスリッドを使うことで「一人ひとりが環境保護のヒーローになれる」というポジティブな意識付けも効果的でしょう。

最終的には、提供する側と購入する側の双方が環境意識を高め、協力して持続可能な社会の実現に向けて歩みを進めることが重要です。ストローレスリッドは、その一歩として位置づけられ、より良いユーザー体験と環境保護の両立を目指す象徴的な製品となるでしょう。


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