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教員不足で成績が出せなくなった学校
公立学校の教員不足が問題となっています。現場では教員の欠員によって子どもに影響が生じないように必死に努力してきました。しかし、そろそろ限界に近いと思わせるようなニュースが埼玉県から飛び込んできました。
教員不足でテストできず…埼玉県吉川市
埼玉県吉川市では欠員となった教員の補充が追い付かない状況です。結果、中学校1校で定期テストが実施できずに1学期の成績がつけられなかったり、複数のクラスで英語の授業ができなくなり2週間にわたり自習が続くなどが発生していました。
これまでは教員不足による欠員が生じても、教頭や教務主任が担任を兼務したり自習監督に入ったり、クラスを合同にして授業を行ったりなど、生徒に直接的な影響が出ないように教員が身を削って創意工夫で乗り切っていました。しかし、とうとう生徒に直接的な影響が出ている事例がニュースになりました。
これまで必死に堪えてきた学校現場
教員不足は近年、頻繁にニュースになっています。足りない人員を補うために、残った教員で血が滲む努力をしていることが度々報道されています。
「教頭と教務主任が担任に入り、この2人の残業時間が100時間を超えた。そして教頭が病休に入った」(青森県・中学校正規教員)
「教務主任が担任を兼任。学年主任としてこのクラスをフォローしましたが、不登校やトラブルが多く大変でした。事務作業や会計、成績処理、所見記入も全て2クラスぶん担当しました。それでも仕事が終わらず保育園児のわが子を連れて土日出勤。これが2年続き、限界を感じて退職しました」(神奈川県・小学校臨時講師)
これまでの教員不足の影響は、授業が自習になる、教員の長時間労働が悪化する、病気で連鎖的に教員が倒れたり退職に追い込まれる、などに留まっていました。今回のような、成績評価という学習の重要な要素が提供できなくなった事例は、とうとう学校が破綻し子どもの学習の権利を保障できなくなりつつあることを示唆しています。
埼玉県の対応の功罪
今回の事態を受けて、埼玉県教委小中学校人事課の担当は『教員の補充がすぐにできない状況を重く受け止めている。今後代替教員の確保に向け方策を講じて対応したい。今後このようなことがないよう、市町村と連携したい』と述べています。
市教委は、市内の駅や公共施設にポスターを張り、臨時的任用教職員を募集することで欠員補充を狙っています。退職教員や教員免許を持つ知人に声をかけるなどで、教員を確保したい考えです。
しかし、教員不足の根本的原因に目を向けず、人員補充のみを行おうとしても、なり手は増えることはないでしょう。部活動、無駄な書類作成、生徒・保護者の教員に対する理不尽な言動、全てを学校の責任として押し付ける風潮、増え続ける業務など、教員の長時間労働から目を背けていては教員不足の解決は叶いません。教育委員会もそれは分かっているでしょう。しかし、魅力発信などのその場凌ぎの姑息な手に終始しているせいで、事態は悪化の一途を辿っています。
まとめ
教員不足による子どもへの直接的な悪影響を紹介しました。教員が足りないことで、学校は機能不全を起こし始めています。結果、未来を担う子どもの学ぶ権利が侵害されています。しかし、教育委員会やトップらは、直接的な原因からは目を背けるだけで、根本原因の解決には二の足を踏んでいるようです。今後はますます授業が行えなかったり成績が出せずに進路に支障が出る事案が全国に広がっていくことでしょう。解決策を実行せず、誰も責任を取ろうともしないようです。