映画感想:さがす
嫌な訳じゃないんだけど
この俳優は色が強すぎて
どの役柄でも”その人”のままになってしまう
みたいな役者さんっていますよね。
わかりやすい所で言うと「キムタク」とかね。100%主観だけど小栗旬とか、最近露出の多い方でいうと菅田将暉もそんな感じがする。
この手の「まんま」のなってしまう俳優は、ひょうきんな役柄を演じることの多い役者さんにも多い気がする。
例えば
佐藤次郎とかね
佐藤次郎の出演作品を漏れなくチェックしている訳ではないが、だいたいが「愛されおとぼけおじさん」を演じられている。
もうそれが佐藤次郎の”色”と認識している人も多いんじゃないだろうか。
そんな愛されおとぼけおじさんの印象だと思って観たら、ハンマーで頭をぶん殴られるような衝撃を味わうことになるのが
※こっからネタバレ含んでいきますよー
重要人物である指名手配犯は、実際におきた事件がモデルになっている。
それは9人もの人物を殺害したとして、世間を騒がせた【座間9人殺害事件】である。手口や殺害現場、遺体の処理方法などがあまりにもまんまなので、当時のニュースを覚えている人ならすぐに気づくことだろう。
かなり凄惨な事件だが、そんなもんがモデルになっていることからお察しだろうが本作品はエグい。グロ描写こそないが、暴力描写はもちろんあるし、性的なシーンも少なからずある。
苦手な人は視聴を控えた方がいい。
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ダーク佐藤次郎がみれるぞ!
本作は三部構成となっており
1.失踪した父を探す娘・楓の視点
2.指名手配犯である山内の過去の視点
3.父である智の視点
それぞれの視点で、それぞれの人物がなにかをさがす様を描いている。父を探す楓、自らの欲求を満たす為の獲物を探す山内、そして父である智が探しているものは…
佐藤次郎が演じる父・智は、大衆の印象通りのおとぼけおじさんであることは間違いない。ただ決して善人ではないのだ。
きっかけは不運といえるだろうが、山内の犯行に協力するようになり、報酬である金銭に文句いう姿は到底善人とはいえない。なんなら映画冒頭で万引きしてんすよ、この人。
金と保身の為に山内を殺害することを計画しますが、躊躇なくハンマーを振り下ろし、かつ確実に息の根を止めようと何度も殴る姿、これは常人でない。
ただ巻き込まれた善人では、決してないのだ。
私がこの映画を鑑賞した際に感じたいや~な感じは、必死に探し回った娘・楓があまりにも不憫だからだ。探した末に見つけてしまったのは父の悪人性とでもいうのか。
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本当に死にたい奴なんて誰もいなかった
【座間9人殺害事件】の犯人が裁判でいった言葉「本当に死にたい奴なんて誰もいなかった」はそのまま作中のセリフとして使われている。ただ本当にそうなのかな?とも疑問に思ってしまうのはムクドリの存在だろうか。
私はこの疑問を感じてしまう箇所に、危うさを感じてしまった。
このnoteは佐藤次郎にスポットを当てて、書き出したが最もこの映画を盛り上げた功労者は間違いなく殺人鬼・山内照巳を演じた清水尋也だと思う。
表情がなく感情が読めない、まったく共感できない、いわゆるサイコパスのようで、チラリと見せる人間味。死に際に流した涙はよかった。
ふつうに生きることができない癖を持っていて、それを苦心の末に飲み込んで受け入れている姿は、古谷実作品の「ヒメアノ~ル」に出てくる森田を見ているようだった。
ヒメアノ~ルは、原作漫画も実写映画もともに良作なのでオススメだ。
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性的な描写が生々しい
性的描写がやけに生々しいと感じた。
後から知ったが、「岬の兄弟」の監督だったんですね。納得。
喉越しのわるーい感じは共通っすね、これが片山慎三監督の色なんでしょうね。
最後になんとなく思ったことを書くが
佐藤次郎の大衆的な”いい人”イメージに対して、この映画は「違うよ悪人だよ?」と突き付けてくるので嫌な感じがするのかもしれない。思ってたんとちがーう!!みたいなね。
オススメです。