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ボードゲームを作って、テストプレイ会に持っていった話。

ボードゲーム精査の記事の前に一つ、「自分で作ったゲーム」で記事が書けそうな位の情報を仕入れてきたので、それを記事にします。これを以て、私もクリエイター、というには烏滸がまし過ぎますが、お付き合いいただければ幸いです。


プレイする側から作る側への興味が諦められなかった。

実はボードゲーム制作に関して、ちょうど1年ほど前に私は一度挑戦し、やむない事情で離れた事が有る。それでもまたこの世界に足を踏み入れたくなったのは、その事情にひと段落ついた事と、別界隈で同人活動をやっていたモノづくりの刺激が忘れられずにいたからである。

ゼロベースからの再挑戦。

さて、ボードゲーム制作再挑戦に当たって、一年前のプロジェクトを見つめ直すか、ゼロベースから始めるかを迷ったが、心機一転の意味も込めて、ゼロベースから始めることとした。

最初に、「世界観」という卵が産まれた。

物作りの取っ掛かりはどこにあるものか分からないもので、このゲームが誕生した切っ掛けはテネシーウイスキー「ジャック・ダニエル」からだった。ジャック・ダニエルを生み出すテネシー州は、実は未だに「禁酒法」が一部地域で有効な州である、とWikipediaで見たことが有り、禁酒法→ギャング→アル・カポネ→禁酒法の時代のアメリカ、と調べ物が進んでいき、ふと、
「この禁酒法の時代、ボードゲームに出来ないかな?」
と、禁酒法の時代を背景に、酒を賭けたゲームという、いささか物騒なゲームの世界観が生まれたのである。

そこから生まれたヒヨコはカード52枚の、3すくみの幼稚なゲームだった。

まだ調べ物が浅かった頃は、まず酒を売り捌こうとする「ギャング」、酒を押収する「警察」、酒を飲みたい「市民」が登場し、どうにかしてそれぞれが酒を取り合うゲームにしよう、としていた。そこに、
「あ、この3つで3すくみが成り立つ」
とすぐにピンときた。つまり、
「ギャングは警察に弱く、警察は市民に弱く、市民はギャングに弱い」
という図式がすぐに出来上がったのだ。(警察が市民に弱い?というは・・・まぁ、善良を装う市民に警察は手が出ない、という事で)さらに、
3すくみが崩れた時に、最低2人は同じカードになるため、そこに勝負を付けるために、カードに1~13のランク(数字、多い方が強い)を設けた。
そして、次は酒はどういう風に手に入れるか?という所に着手した。流石に
「3すくみで買ったら1つ酒が手に入る」
だけなら、「じゃんけんで1ポイント」とそう変わらない。なので、酒を手札から別に山札に切り離し、酒が手に入る量に1~3と変動を設けることにした。さらに、得点にマイナス要素を足し、「いつまでも勝たない事」をゲーム要素として組み込むため、山札に酒カードの他に「抗争」というカードを考案した。勝ってしまった者はこの抗争カードでマイナス1点、となる。ここに、市民13枚、ギャング13枚、警察13枚、酒+抗争カード13枚で13ラウンドの3すくみゲームが出来上がったのである。

ここまで、モックアップの出来上がりまで三日かかったか位である。ゲームが出来上がった!!と喜んだのも半日くらいで、
「このゲーム、どんな層に向けて作ったんだ?」
という自問自答
が始まった。さらに、そもそもどんなところに持っていき、どういう売り文句で販売するんだ?という疑問も次から次へと押し寄せた。そもそも、「3すくみが主要なメカニズム」という時点で、相当対象年齢が低いことになる。そこにこの世界観はミスマッチ過ぎるし、売り文句も、
「禁酒法の時代をバックボーンにした変則じゃんけんです。」
では、例えばゲームマーケット等、イベント販売では目もくれやしないだろう。あっという間に開発は暗礁に乗り上げた。

意外にも、そのヒヨコはトリックテイキングゲームというニワトリに成長した。

それからは、「禁酒法時代のアメリカ」というテーマについては、なぜだか頭から離れなかったので、それに関する事象をネットで調べ上げたり、その時代を描いた映画などを見たりして、どうにかならないかと時々考えるようにしつつ、ボードゲームの研究もして解決の糸口を探そうとしていた。
ちょうどこのころ、愛知県長久手市で開催された「長久手ボードゲームホリック」(以下ボドホリ)参加やnoteの編集なども始め、家で禁酒法時代を描いた映画「アンタッチャブル」(1987年)を見ていて、ボドホリでプレイした「ドルイド」というトリックテイキングゲーム(以下トリテ)、noteで精査した「サンリオキャラクターズ・スポーツフェスタ」、そして映画の中で出てきた「特別捜査官」(当時はFBIが無いので特別捜査官とされていた)、これらと頓挫していた3すくみのカードがなぜか1本に繋がって、
「特別捜査官を足して4色のトリテにしてみては!?」
という発想に至った。これは理詰めの結論ではなく、「閃き」という言葉でしか表現できないものだった。(色々と調べて、見て、考えたので、頭のどこかで理詰めしていたのかも知れないが・・・)

そこからはトリテをネット上で調べ上げ、
「スート4色(市民、ギャング、警察、特別捜査官)の切り札有り(特別捜査官)、ランクは1~10、マストフォローのマストラフ(親が切り札を出したら、出来る限り次プレイヤーは切り札を出さなければならない)」これに、
「テイクしたら山札(14枚)の酒カード、抗争カードを1枚取らせて得点、失点にする」
というルールを乗せて骨子が出来上がり、3すくみのゲームが4スートのトリテに様変わりしたのである。合わせて54枚としたのは、トランプの枚数でちょうどどうにかなったので、どこかの印刷所さんがお得なパックで印刷できた(萬印堂さんだったかな?)のを思い出し、一応、それに収めたわけである。

各スートのモックアップ。BOIが特別捜査官(切り札)に当たる。

さあ、このニワトリ、どう育てるか?

さて、ここにトリテ「禁酒法(仮)」が仮にだが、出来上がった。しかし、ここからどういう方向で味付けをしていくか、結構な日時を費やした。

直近のテストプレイ会に出す前に・・・。

幸い、直近のテストプレイ会まで3週間以上有ったので、時間はある。なので、太らせた。盛れる物は最大限盛って、テストでやりすぎならそぎ落とせばいい、という方向性で行こうと思った。以下、盛ったものを箇条書きにしていく。

  • 抗争カードを3枚取ったら、即そのゲームは負けとする。抗争カードは酒カードと合わせた山札の14枚中5枚だが、後述のカード能力の発生で、負けになりやすくなっている。

  • 市民、ギャング、警察カードに能力を付与する(これによって、負けが発生しやすくなっているはずだった)

  • 負けが早期に発生し、ゲームがすぐに終わることも考え、3ラウンド制の点数の合計値で勝負することにする。

  • 酒カードと抗争カードの山札は、戦略性を考えて、2枚公開とする。(1枚だけだと、場当たりの運任せになると思ったため)

山札の公開。次に来るものが分かるため、トリックをテイクするしないの戦略性が生まれる。

あとはもしも、活用できる部分が有れば前の3すくみの状態のゲームも、切り札を抜くだけで10ラウンド制のゲームに戻せるので、それのテストプレイもお願いすることにした。

緊張のテストプレイ会。

こうして出来たトリテ「禁酒法(仮)」と3すくみ「禁酒法イージー(仮)」を持って10/14(土)、名古屋市西区生涯学習センターにて「名古屋テストプレイ会」に参加した。主催者へのあいさつや主催からの注意事項、自身の自己紹介と済んだ後、メンバー分けが振られた結果、一巡目の卓で「禁酒法(仮)」と「禁酒法イージー(仮)」のテストが出来ることとなった。

ちゃんと説明書を人数分配り終え、説明も終わり、順番通りにテストしていく・・・事前に頭の中で構成を考えていても、緊張で忘れている部分が多々あり、テストプレイヤーの方達に分かりづらい部分もあったと思う。3ゲーム程「禁酒法(仮)」を回してみて感想戦。
「得点の可視化の問題(市民で酒をテイクしたときや、警察で抗争をテイクした時の分かりやすさ)」
「切り札が出やすい&切り札でテイクしやすい問題」
「もっと抗争を入れても良いかも知れない(1ゲームも抗争3枚分負けが発生しなかった為)」
など、様々な問題が浮き彫りになっていく。流石は歴戦の猛者たち、特に得点の可視化問題については会心の策を出して下さった。そして、私は3ゲームの得点の合計を出し忘れていた・・・。「禁酒法イージー(仮)」の方も、「低年齢向けでテーマが大幅に変わる可能性」を前置きしたら、そのようにフィードバックを返して下さり、非常に参考になった。そして、問題なくテストが回り終わり、
「何とか第一関門を突破した・・・」
という、安堵の気持ちでいっぱいだった。

余りの時間でもう一度テストプレイできた、のだが・・・。

さて、テストプレイが全員分済み、ありがたいことに時間が余ったので私の作品を別メンバーで、もう一度テストプレイをしてみる事が出来た。ここで2ゲーム程回してみて感想戦になったのだが、ある方の開口一番、さっきまでの安堵が揺らぐ発言が飛び出した。
「上手くは出来てるけど、どこかにありそうなモノだよね・・・。」

トリテは群雄割拠。

カードを投げればトリテプレイヤーが触る時代。

(石を投げれば、としたかったがなんとなく悪い感じが否めなかったのだが、カードを投げるのはマナー違反か?)
その方曰く、ちょっと前まで日本でのトリテは、
「ニッチなジャンル」
だった
ようだ。これについては、ボードゲーム雑誌「本当に面白いボードゲームの世界 Vol.2」でも、
「日本はトリテ後進国」
と触れていたように思う。ただ、「トリテというだけで買う」熱狂的なトリテファンがいて、作る側も面白さに気付いたら、そこからは一気に熱量が上がったようで、ここから詳しい話を聞けなかったが、BGG(ボードゲームギーク)というボードゲームサイト(リンク)内の、年一回開かれる?トリックテイキングジャンルの品評会みたいなものでも、日本のトリックテイキングは上位に食い込む実力を見せているらしく、別の所では、先のEssen Spielにて「エキスパートゲーム部門」に日本の「CAT IN THE BOX」というトリテが選ばれた。日本のボードゲーマー側から見たらトリテはとっつきにくく感じていても、クリエイター側では日本のトリテは世界に通用しているという、いびつな構造をしているのである。

トリテプレイヤーはもっと変則的で刺激的なトリテを求める!?

ただ、「CAT IN THE BOX」をみた、又はプレイした方ならわかると思うが、このトリテ、かなり変わっている。まず、
「手札が配られた時点では、スートなし」
「親が色を決めて、そこでそのトリックのスートが決まる」
など、とても変則的なのである。そして、ゲームを進めていくと、
「トリック出来ない」
状態が発生することが有る。これをパラドックスと言い、負けとなる。ある程度進めてみないとこのパラドックスが発生するか分かりにくく、それがとても刺激的と受け入れられているようで、今のトリテプレイヤーはこういうモノを求めているのだろう。だから、私が言われた、
「上手く出来てるけど、どこかにありそう。」
というのは、トリテ界隈最先端からみたら、的を射ているのだ。

私のトリテは、どうあるべきか?

さて、ここで私の作品は、岐路に立たされたと言ってもいいだろう。
「このまま細部を整えて作品として出せるようにするか?」
「実験的な試みを加えて、開発を続けるか?」
一つ言えることは、この作品が「かなりレシピ通り」の根幹の元、作られていることだ。トリテはスート、ランク、フォローの仕方等、トリテの根幹に沿って作っていけば、「ある一定の物」が作れてしまう物である。私の作品でレシピ通りでないのはトリックとは別に分けた点数の「山札」と、手札カードに付与した「能力」の存在で、これでもトリテ愛好家には「物足りない」と言われてしまえば、後者を取るべきなのかな?と思ってしまう。ただ、テーマ的に新しい試みを加える事が難しく思えた事と、システムが「有りそう。」であり、「有る。」と断言されたわけではないという事、トリテ自体がゲーマー向けゲームというカテゴリーである事から、必ずしもこれを真に受けて複雑なシステムを取り入れて、更に複雑化する必要は無いと感じている。だが、最後に言われた、
「トリテにまだ疎いようなので、トランプの書籍などで研究が先かも」
という言葉、これはその通りだと思った。所詮、ネットでは必要知識しか手に入らない。「トランプの歴史=トリテの歴史」という事なので、突破口となる可能性は十分にある余地だと思うからだ。勉強が必要だと思った。

最後に。

最後に、この場を借りて、名古屋テストプレイ会の主催のみさきさん、及び参加してくださった皆様にお礼申しあげたい。自身のテストだけではわからない事を指摘して下さり、作品の飛躍的な成長、更には自身の成長にも繋がったことに深く感謝している。

あとがき。

さて、いかがでしたでしょうか?物事を忘れないうちに仕上げようと思い、取っ散らかった文章になっているかもしれませんが、経験した事を全部とまではいかないが、書けたかと思います。テストプレイ会で磨き上げたものが、いつか作品となる日が来るよう、精進していきたいと思います。


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