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ボルダリングの成果
数年前、家の近くにボルダリングができる施設がオープンした。
さっそく、どんなところか見学に行き、どんなもんかやってみた。
見てる分にはただ登るだけだろうと思ったが、実際やるとそれなりの全身運動だ。
特に上半身の筋肉を使う。
以前、筋トレをやっていた時にはあまり鍛えてなかった場所だけに、かなりしんどい。
とはいえ、慢性腰痛だし、このぐらいならちょうどいいかと、しばらく通った。
通ったが、どちらかと言うと、子供向けまたは本気のプロ向けといった雰囲気が強く、どっちつかずのサラリーマンが通うにはちと辛い。
あまり回数いかない内、施設が閉鎖されるとのアナウンスがあり、多少上半身が鍛えられたかな?程度で終わってしまった。
ひがしさぁん、あそこの棚、届きます?
午後、派遣の女性が言ってきた。
オフィスの壁にある、天井近くまで届くロッカーを指差した。
あそこって、どこ?
一番上の棚なんですけどぉ。
一番上?届くわけないじゃん。
あそこに昔の資料があるみたいで、どうしても必要なんですよぉ。
脚立とかないの?資料入れたんだからあるだろ?
それがないんですよぉ。
ホントに?
どうやら、入れた当初はあったものの、今は総務部門にわざわざ言って借りなければならないらしい。また手続きがどーのこーのでメンドーだ。
3メートル近い高さに届く奴なんかいないし、そもそも男子は出払って誰もいない。
あきらめようよ。
えぇっ、例の大事な報告書、昔の経緯が必要なんですけどぉ。
そっかぁ・・・だけどなぁ・・・。
ひがしさん、登れます?
え?登るって、なに・・・?
中段・下段の扉を開け、棚に足をかけて登って取れないか。
とのこと。
いや、そりゃ無理だろ。
じゃ、どうするんです?
ここはいっちょ、ボルダリングの成果を見せるべきか。
少し考え、靴を脱いで、恐る恐る言う通り登ってみた。
最初の一段はよかった。
二段目に移れない。
どうにも動けず、這いつくばったように身体が止まった。
ムリムリ。つかむとこないし垂直だし。
ジャンプして床に着地した。
イテッ、腰イテェ。
腰をおさえながら背伸びした。
やっぱ脚立借りよう、な?
情けな、というシラけた目線で彼女は私を蔑視した。