人魚姫は電子のナイフで誰を刺すか
しろい波がわたしの足元をすくっていく。海の向こうから流されてきたさまざまなものは、この浜辺に長らくひとりきりの、わたしの退屈を埋める泡になってくれる。
それはだれかが捨てた缶だったり、解消されてしまった婚約指輪だったり、ひとの眼には視えないくらげの赤ちゃんだったり、魚の死骸だったり……いや。
魚は、よくみると、まだ口をぱくぱくさせていた。生きているのだ、この電子の海の墓場のなかで。
わたしがぐっと念じれば、このなにもない小島にだって、いくらでも草を生やすことができ