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ふるびた地図に目をやった。この町は猫の街、とよばれているらしい。 旅人は町の入口に立っていた。白い石壁づくりの家が延々と並び、こんなにも晴々としたよい天気だというのに、人っこ一人歩いていない。不思議な静けさに満ちた街だった。 旅人は、好奇心から街の中へ一歩を踏み出した。一本道の長い坂が続いている。両側には白い壁がひろがり、足元の石畳だけがうすい灰色をしている。草一本も生えていないが、家のかたわらには時折植木鉢が置いてあるところを見ると、ここにも誰かしら住人がいるのだろ