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船に乗るということは、つまり漂流するということだから、それは百歩譲って仕方がないことだ。ただでさえ憂鬱なのに、この船の航海士ときたら、まるで他人の気持ちなどに思いを巡らせたことがないような真っ青な顔をしていて、わたしはあの亡霊めいた男のつめたいまなざしが目に入ると、朝晩生きた心地がしないのだった。 ああ、あの男は嫌いだ。ああ厭だ厭だ。 水平線から知らぬ顔の朝日がやってくる。もうすぐ朝食の時間が来てしまう。いまさら胃にも残らない呪詛を吐いたってなにもかも手遅れ。わたしたち