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「あなたってとても気高いのね」 烏の濡れ羽色をした長い髪が、図書室の窓からさしこむ夕陽を映して燃えている。彼女はまるで魔女のようだった。 おなじ図書室の常連で、たびたび姿を見かけてはいたけれど、会話を交わしたことなんて一度もなかった。夕暮れがひっくり返って、このまま校舎が空のそこへ落ちてしまうんじゃないかと思った。僕はただの冴えない本好きで、そんな気取った形容詞とはまるで無縁の平凡な人間だった。 そう、気高いなんて行き過ぎた賛美の言葉は、彼女のほうが僕よりもよほど