ラ クレリエールの料理集 vol.14
東京・港区白金のフレンチレストラン「ラ クレリエール」のオーナーシェフ、柴田が日々、何を考えているかを綴ります。
2020年10月にスタートした連載「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」では、柴田の料理人人生を振り返りつつ、なぜ今ミシュラン三つ星に挑戦するのかを綴りました。そして今度は「クレリエールの料理」を切り口に料理人として、シェフあるいは経営者として、考えていることや思っていることをお伝えしたいと思っています。
今までの連載「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」はコチラからどうぞ
→ 第一章 レストランのシェフになる
→ 第二章 プロの世界へ
→ 第三章 「料理長」を見据えて
→ 第四章 レストラン ラ クレリエール
→ 第五章 オーナーシェフの「仕事」
→ 第六章 ミシュラン三つ星を目指す
「料理集」のバックナンバーです。
→ 「ラ クレリエールの料理集1(第一皿~第五皿)」
→ 第六皿パロンブのロースト
→ 第七皿(résumé) 仔羊のロースト トリュフのソース
→ 第七皿(recette) 仔羊のロースト トリュフのソース
→ 第八皿(résumé) 常陸牛のウデ肉の赤ワイン風味
第8皿(recette) 常陸牛のウデ肉の赤ワイン風味
【材料】(2人分)
常陸牛:ウデ肉60g
塩:適量
コショウ:適量
フルールドセル:適量
黒トリュフ:スライス8枚
<ソース>
*ソース・ボルドレーズ
エシャロット:150g
ベーコン:150g
バター:30g
赤ワイン800cc
フォン・ド・ボー:800cc
*ソース・ペリグー
ポルト酒(ルビー):350cc
マデラ酒:350cc
コニャック:280cc
フォン・ド・ボー:1.5L
バター:50g
トリュフみじん切り:100g
*ソース・ヴァンジョンヌ
ジロール茸:6枚
ヴァンジョンヌ:30cc
フォン・ブラン:50cc
生クリーム:50cc
<ガルニチュール>※作りやすい量
ジャガイモ(インカのめざめ):300g
塩:総量の1%
にんにく:適量
タイム:適量
バター:150g
牛乳:50cc
生クリーム:少量
塩:適量
トリュフのみじん切り:適量
【作り方】
<ウデ肉の準備>
1.常陸牛のウデ肉を3cmの厚さにカットする
★筋肉の繊維を直角に切るようにする
2.塩コショウをして網焼きでグリエする
3.200℃・風2のコンベクションオーブンで1分加熱した後、3分休ませる
4.3.を2~3回繰り返して焼き加減を調整する
5.オーダーがかかったら藁で焼き上げて香りを移す
6.2mmくらいの厚さにスライスし、フルールドセルをふり、黒トリュフのスライスで1枚ずつ巻く
<ガルニチュール>
7.ジャガイモ(インカのめざめ)をにんにく、タイムと共に塩ゆでし、裏ごししてバター、牛乳、生クリームを加え、塩で味を調える
8.トリュフのみじん切りを加え、なめらかなピューレに仕上げる
<ソース>
*ソース・ボルドレーズ
(1)エシャロットとベーコンをバターでよく炒め、赤ワインを加えて水分がなくなるまで煮詰める
(2)フォン・ド・ボーを加えて味がのるまで煮詰め、シノワで濾す
★エシャロットとベーコンを押さえるようにしてソースを絞る
(3)バターを加え、塩で味を調える
*ソース・ペリグー
(1)ポルト酒、マデラ酒、コニャックを煮詰め、フォン・ド・ボーを加えてさらに煮詰める
(2)バターモンテして、最後にトリュフみじん切りを加えて火から降ろす
★状態を見て、必要ならバターモンテする
*ソース・ヴァンジョンヌ
(1)ジロール茸をソテーしてヴァンジョンヌを加えて煮詰める
(2)しっかり煮詰めたらフォン・ブランを入れ、さらに煮詰める
(3)生クリームを加えて濃度と味を調える
<盛り付け>
9.ジャガイモとトリュフのピューレをお皿に敷いて、その上にトリュフで巻いた牛肉のスライスを立体的に盛り付ける
10.お肉の上にソース・ペリグーを少量かけ、お皿の縁にソース・ボルドレーズを配し、上から糸を引くようにソース・ヴァンジョンヌをまわしかける
柴田の工夫
ルセットの中の★は、その工程でのポイントです。一般的なものもあれば、僕自身の経験の中で見出したものもあります。お料理はちょっとした工夫で仕上がりがガラッと変わったりするので、参考にしてみてください。
このお料理の発想のキーワードは、「すき焼き」でした。フランスでは、基本的にお肉は塊で食べるものです。一方、日本には日常的に薄くスライスしたお肉を食べる文化があります。塊では固さを感じてしまうお肉も、薄くスライスすることで食べやすくできるのでは?と考えました。そしてスライスしたお肉を使った日本のご馳走「すき焼き」に着想を得て、火入れや味わいの構成を組み上げていきました。メイン料理にこだわらず、前菜として考えたことも発想の幅を広げてくれたと思います。
しかし筋肉の発達したウデ肉は、ただ薄く切っただけでは柔らかくはなりません。固く感じるのは、筋肉がなかなか噛み切れないからです。それなら噛み切らずに食べられるように調理の段階で仕込めば良い。だからスライスする際に「筋肉の繊維に対してを直角に」切るのです。
今回、常陸牛と出会い、育てているドリームファームさんの取り組みに共感し、料理人として少しでも貢献したいと「使いづらい部位」を使うことにしました。当然、ハードルは高くなりますが、より高いハードルを越えるために頭と腕を使うことは、自分自身を成長させる糧です。それにお客様も、クレリエールでしか召し上がれないお料理を楽しむことができる。料理人というのは大変なことも本当に多いですが、楽しいこと、嬉しいこともたくさんある仕事だな、とつくづく感じます。だからこれからも、料理人としてどんどん挑戦して、いろんなハードルを越えていきたいと思います!
今回ご紹介した「常陸牛のウデ肉の赤ワイン風味」は、『常陸牛フェア』のお料理として3月10日(木)までのご提供となります。お時間がございましたら、ぜひお越しくださいませ。
料理通信社のWEBサイト「The Cuisine Press」では、作り方の概要と共に調理工程の写真なども掲載されていますので、よろしかったらご覧になってみてください。
※ディナーコースの一皿としてのご提供となります。
※仕入れの関係でご提供できない場合もございますので、お召し上がりをご希望の際は、ご予約の折にその旨をお伝えいただけると幸いです。
次回は、「ホワイトアスパラガスの三重奏」をご紹介する予定です。
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このnoteを初めて読んでくださった方へ
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はじめに初めまして。ラ クレリエールの柴田です。
白金でフレンチレストランのオーナーシェフをしています。
2020年のコロナ自粛の間、レストランのあり方や自分が今後進むべき道など色々と考えました。その中で「ミシュランで三つ星を獲得すること」を一つの指標として強く意識するようになりました。
そして、どのようにすれば三つ星を獲得できるのか、三つ星にふさわしいと皆様から認めていただけるのか、日々、考えたことや行動したことを記録に残そうと考えました。
ご興味を持っていただけたら幸いです。
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