チキンライスと枝垂桜
ただいま。
まだばあちゃんが
認知症になるかならないかのときに、
気分転換を兼ねてドライブするのが
夜勤のときのひそかな楽しみだった。
桜 、 紅葉 、 富士山。
1時間ほどで行けるところは
だいたい行った。
何も変わらない天井ばかりの景色よりも
変わっていく山梨の景色を見てほしかったから。
向かった先は、慈雲寺。枝垂桜で有名なお寺。
「疲れているから寝たほうがいいよ。」
「いやっいいよ。いちばんタイミングが良いから、今日行こう。」
どんどん消されていく記憶を、
下に跡が残るくらいにもう一度強く書けたら。
なんてことばかり考えていた。
ナビを設定して、てきとうにCDを入れた。
音楽が認知症をやっつけてくれる。
そう思ったからだ。
流れてきたのは、チキンライス。
「まあいいか。らしいな。」
外は春
歌はクリスマス。
そんなわけのわからない、
片道1時間のドライブ。
春の風を感じながら、
桃の花 、すももの花 や 桜 。
山梨の春を堪能した。
親孝行って何?って考える
でもそれを考えようとすることがもう
親孝行なのかもしれない
そう言えばちゃんとばあちゃん孝行できてないな…
畑もろくに手伝えないし、
まだ結婚もしてないし、
ぜったい子供見たいだろうな…
コンビニでペットボトルのお茶を買って、渡した。
「あぁっごめん、ごめん。」
フタも開けれなくなっちゃったか…
寂しくなったけど、
ズズーっと美味しそうに飲んでいた。
まだ9時だというのに、
ベストタイミングなこともあって
観光客でごった返していた。
ぶつからないかな?
ころんだりしないかな?
服の端っこををつかみながら、
後ろをついていった。
てくてく。
てくてく。
ようやくたどり着いた
枝垂桜の目の前にベンチがあった。
「ばあちゃん、ちょっと写真撮ってくるからここ座ってて。」
「んっああ。」
樹齢300年って人間でいうとどれくらいなんだろう?
そんなことを考えながら、
買ったばかりの一眼レフで
カシャカシャ、シャッターを切っていた。
ひと通り撮り終わって、戻ると
ばあちゃんがベンチから立っていた。
いちばん大きな枝垂桜を見上げて
なんだか会話しているようだった。
「おかげさま」
「おかげさま」
カシャカシャ。
おもわず、シャッターを切ったことを覚えている。
いそいで撮ったため少しピントが合っていないのか、
透明なものが邪魔しているのか何度見てもはっきり見えない。
「綺麗だったね」
「寝てないから眠いやろ?」
「だっ大丈夫だよ。冷めること言うなよ」
「だって今日も仕事だから…」
いつも自分のことよりも僕を優先する。
「また来年も行こうね。」
「……」
もう来れないことは
わかっていたのかもしれない。
もう一度見せたい景色。
あの景色は何年経っても忘れない。
次はきいちゃんと行こう。
「おかえり。」
きっと枝垂桜が言ってくれる。
きゃらおさんの企画に参加させていただきました。
写真ないかなーって探していたら
一枚の写真が目に留まりました。
きゃらおさん、思い出させてくれてありがとう。
推定樹齢300年超のイトザクラがあり1971年(昭和46年)4月1日に当時の塩山市(現・甲州市)の天然記念物に指定され、2005年(平成17年)12月26日には山梨県の天然記念物に指定された。幹の目通り3.2メートル、樹高15.0メートル、枝張りは東西20メートル、南北18メートルの巨大なものである[2]。1691年(元禄4年)の堂宇再建時に植えられたものと伝わることから、樹齢はおよそ320年と推定されている。
ウィキペディアさんから。
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