『バイオレント・ナイト』の感想。ジョンウィックシリーズとそのフォロワーとの違い。
サンタ姿のデヴィッドハーバーが観れる=最高の映画! それ以外の良さは無い!!
感想
面白くは無い。可愛くはある。
見ている間ずっと 「つまんねー映画だなー」と、「いやでも、デヴィッドハーバーがサンタなんだぞ?最高だろ?」 という感想が競り合っていて、最終的には「つまんねー映画だなー」が勝った。
結局のところこれは、劣化ジョン・ウィック(#1)である『Mr.ノーバディ』(#2)を作ったスタジオ「87ノースプロダクション」が、またも劣化ジョン・ウィックを作った、という話だ。
87ノースプロダクションが作るのって、こういう「情け無いおっさんが、実は強かったんです!!」みたいな話ばっかりだな。
酔いどれサンタのデヴィッドハーバーがこの映画の唯一の価値だ。 しかし、主役に魅力が集約しているのであれば、それは良い映画だという話もある。全てのシーンでデヴィッドハーバーがかわいい。 冒頭のゲロと、中盤の遊戯室での戦闘が好き。
無双が始まる前はそれなりに面白かったので、戦士になんてならずにただのサンタのままで戦い抜いて欲しかった。 それと、アクションシーンに関して言えば、気の抜けた音楽にのせての戦闘が多すぎて辟易したりした。演出の手数少なくない?
ホームアローン、道徳性、サンタあるある
本作には子供が工夫を凝らしたトラップで悪役を懲らしめるホームアローン的な展開を、もっとゴアに寄せたオマージュがある。色々な感想を見る限りそれが持て囃されてるようだ。 しかし、それに関しても『ベターウォッチアウト』(#3)の方が余程面白かったなという印象。
また、大人向けのクリスマス映画というだけあって、今作にはいくつかの皮肉が入れ込まれている。
・どんな悪党もかつては子供だったんですよ、みたいな話を一瞬ちらつかせていたにも関わらず、サンタは彼らを容赦なく殺しまくる。
・女児もその虐殺に加担しまくるんだけど、何故か彼女は「いい子」として承認され続ける。
こういった歪みはシニカルな笑いのつもりなんだろうけど、普通に不快だった。
あと、女児が親に「サンタなんていない」と言われて悲しむシーンはほぼ機能していなかった。だってこの作中世界にサンタがいることは完全に自明だから。
子供の信じていた世界が壊されちゃう展開はもっと大事に描いて欲しかったけど、まあとりあえず入れとくか程度の扱いで、「人生におけるどっかのタイミングでサンタが居ないって知ってショックを受けるよねwww」というあるある以上の何かにはなっていなかった。
ジョンウィックと何が違うのか。
『バイオレントナイト』や『Mr.ノーバディ』を指して劣化ジョンウィックと言ったけど、具体的にどこが気に入らなかったのか。
それは彼らが満足気に日常に戻っていく点だ。
『バイオレントナイト』は、サンタの仕事にうんざりしていたデヴィッドサンタが仕事へのやりがいを取り戻す話でしかない。途中、かつてミセスクローズというパートナーがいたという喪失が描かれるものの、最終的にはミセスクローズからの手紙が届いて、彼女のことを取り戻す可能性が示唆される。
『Mr.ノーバディ』も酷くて、あっちは家族や周囲の人間から馬鹿にされていた主人公が最終的にみんなからの尊敬を取り戻すだけの話だ。
要はどちらも男が暴力を通じて誇りを取り戻す話であって、必然、悪党をボコすときには両者ともにイキりまくる。これに関しては特に『Mr.ノーバディ』が酷い。
一方、ジョンウィックでは戻るべき日常が初手で完璧に破壊されてしまっている。ジョンがどれだけ敵を殺そうが、もう彼女も犬も戻って来ない。そしてジョンは世界中から命を狙われ、暴力の世界をさすらっていく。
何をしたって元の幸せが帰ってこないことをジョン自身が分かっているので、彼は敵を倒した後もアンニュイな表情をしている。
どんだけ必死で戦っても、虚しい勝利しか残らないという(それでも戦い続けるという)この切なさ!!
この切なさをほんの少しでも取り入れてくれていれば『バイオレントナイト』のことも大好きになっていたと思う。
つまり、ジョンウィックのパクリであることが気に入らないのではなく、ジョンウィックをパクれてないことが気に入らないということだ。
追記
続編が作られるらしい。サンタのデヴィッドハーバーをまた見られるのは嬉しい。けど映画自体には何の期待もしていないし、この制作会社が作る映画が面白くなる訳ないとまで思っている。
それ以上にジョン・ウィック4が楽しみ。もうしっちゃかめっちゃかになってて、今ジョンがどんな状態なのかちゃんと把握してないけど。