「最凶女装計画」の感想/"A Thousand Miles"とかいう神曲
映画と曲の二本立てです。
「最凶女装計画」の感想
45点
「黒人男性のFBI捜査官2人が、特殊メイクで白人女性になりきる」という話なんだけど、あんまり面白くなかった。
ハリウッドで行われてきた黒人のステレオタイプ表現の1つに、黒塗りをした白人が黒人を演じるというものがある。ブラックフェイスというやつだ。黒人の2人が特殊メイクで白人を演じる今作には、そんなステレオタイプ表現への意趣返しの意味が込められている。
護衛対象を怪我させちゃったので、それが上司にバレないように成り代わる必要がある。
というようにかなり厳しい理屈ではあるんだけど、主人公2人が白塗りして女装しないといけない理屈は説明されている。これはブラックフェイスが何の必然性もなく行われてきたことへの批判なんだろう。
難しいのは、この白塗り&女装について、作中では理屈の説明は済んでるんだけど、映画全体としては意図のない何となくの面白要素のように感じてしまうこと。端的に言うとスベっていた。
意趣返しをするのであれば上手くやらないと、単に逆張りをしただけで終わってしまう。
その点「ロング・ショット〜僕と彼女のありえない恋〜」は凄い映画だったよなと改めて思った。
この設定とは関係なく話がもたついていて退屈だったりもした。ただダンスシーンはとても楽しかった。
女の子になることで、女性の大変さを知り、妻のことを思いやれるようになるという話が盛り込まれていて、良い話ですねという気持ちにはなった。
女装した主人公達が、女の子達と恋バナしたりしてキャピキャピしてる様子は和んだりもした。
てかこのふざけた邦題はなんだ?「最凶女装計画」?
"White Chicks"(白人の女の子)って原題から、白人って要素を丸々取りこぼしてるじゃん。
最○○○計画っていうパターンの映画のタイトルをやたら見るけど、別に単一のシリーズとかいう訳ではないらしい。原題の意味を潰してまで安易にシリーズ感を出すのは、詐欺じみてるし下品だなって思う。
その他、細かな感想。
・ブルックリンナインナインのテリーが出ていた。昔と今とで全然見た目が変わってなくて驚いた。
テリーの白人女大好き男というキャラが良かった。
・面白要素として出て来る名前のほぼ全てにピンと来なかったので、コメディは文化に依存したものだということを再確認した。前提となる文脈を共有していない相手を笑わせるのは難しい。
・A Thousand Milesという神曲を知れたので良かった。
A Thousand Milesとかいう神曲。
10000億兆点!
映画の途中でカーラジオから流れてくるんだけど、マジで良い曲だった。絶賛鬼リピート中。
もう映画については話したいこともないので、今からこの曲について話そうと思う。
まずイントロが良い。入りのピアノのモチーフ!
このモチーフはここぞというところで繰り返されて、その度に「エモい〜!!」ってなる。
ボーカルが入ってきてから、しばらくするとストリングスも入ってくるんだけど、これも堪らない!ストリングスの入ってる曲大好き!
全体的に音がシンプルで落ち着いていて、それでも魅力的だってことは曲の足腰が強いんだろうなと思う。曲の足腰とかいう謎の言葉が何を指しているのかを僕は知らない、なんか急に出てきた。
ハスキーな声も凄い良い。飾らない感じというかなんというか、歌い方に独白感がある。
無理にボーカルで盛り上げたりはせずに、曲を邪魔しないような歌い方?をしているような感じもした。
洋楽邦楽に関わらず、曲を聴くときには歌詞が全く頭に入ってこないので、後で歌詞を調べてみた。
そしたら歌詞も良かった。
大雑把に言えば、「別れちゃったあなたのことをもう諦めなきゃいけないんだけど、でも恋しいよ」みたいな感じだ。
この曲の彼女は茫然自失気味に街を歩いているようだ。だからとりとめのない連想を並べていくような歌詞になっていた。
この曲の1番好きな部分だ。この部分を歌い終わった後にイントロのモチーフが入ってくるのが「エモい〜!」ってなる。
そして、基本的に平易な文章で綴られた歌詞の中で、この部分だけがちょっと難しい。特に最初の2行。
"time would pass me by"ってどういう意味だ?
「もし空に向かって落ちられたとしたら、あの頃にだって戻れると思わない?」
みたいなことだろうか。空に向かって落ちるみたいに、時間を逆再生できないかな。みたいな?
そして歌詞は「だって、今夜あなたに会えるなら、1000マイルだって歩くから」と続いていく。
まあ意味が分からなくたって別に良いかなとも思う。
むしろ、素朴で傷ついた女の子のとりとめのない独白は、余人には理解できないくらいの方が良い。