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【書籍】多読を超えて深読へ:「完コピ読書術」が導く自己変革の道ーあつみゆりか氏

 あつみゆりか著『今度こそなりたい自分になる! 1冊まるごと「完コピ」読書術』(PHP研究所、2024年)を拝読しました。

 本書は、あつみ氏が、自身の数多くの試行錯誤と読書体験を通して辿り着いた、他に類を見ない独自の読書術、「完コピ読書術」について、その本質的な考え方、具体的な実践方法、そして、読者の自己変革を促すための情熱的なメッセージを、余すところなく綴ったものです。

 この「完コピ読書術」は、単に書物を読み進めるという、ともすれば受動的になりがちな行為を、はるかに超えたレベルへと昇華させ、読者がその内容を徹底的に理解し、自らの血肉に変え、具体的な行動変容へと繋げることによって、真に理想とする「なりたい自分」へと着実に近づくことを、最終的な目標としています。その意味では、自身としては企業の人材育成等の面からも考察したいところです。

1. 多読の呪縛からの解放:真の読書とは何か、そしてなぜ「完コピ」なのか

 あつみ氏は、かつて、書店に溢れかえる多くの書籍を前に、どれを読めば良いのか迷い、次々に読み進める多読の限界を痛感しました。そして、そのような読書体験は、表面的な理解に留まり、結果として自己変革への足がかりとはならない、という結論に至ったのです。

 それゆえ、あつみ氏は、この「完コピ読書術」こそが、自己成長を加速させ、人生の質を飛躍的に向上させるための唯一無二の道であると信じ、その確信を本書を通じて、読者に熱く語りかけます。

 本書は、従来の読書に対する固定観念を打ち砕き、真の読書のあり方を再定義する、まさに革新的な一冊と言えるでしょう。読者は本書を通じて、単なる情報収集や知識の獲得に留まらない、自己を深く見つめ、変革へと導くための読書を体験することになるでしょう。

2. 「師匠本」という羅針盤:人生を導く運命の一冊を見つけ出すための羅針盤

 本書ではまず、巷でよく耳にする「多読こそ正義」という誤った考え方に対して、明確な警鐘を鳴らします。多くの本をただ闇雲に読み進めることが、必ずしも有益ではないと指摘し、むしろ、目的意識を欠いた読書は、貴重な時間を無駄にするばかりでなく、自己成長を阻害する要因にすらなり得ると警鐘を鳴らします。

 あつみ氏は、真に効果的な読書とは、明確な目的と課題意識を持ち、その目標達成のために、自分自身の内面と徹底的に向き合い、現在の自己を成長させてくれるような、まさに「運命の一冊」と呼ぶに相応しい「師匠本」を選ぶことから始まると説きます。

 そして、この「師匠本」をどのように選ぶべきか、その具体的な手法を詳細に解説します。あつみ氏の数々の失敗と成功体験から導き出された選定方法は、まず書籍の「著者プロフィール」「目次」「はじめに」を徹底的に読み解くことから始まります。これらの情報から、著者の思想や価値観、知識や経験の背景を把握し、それらが自分自身の課題や目指す方向性と合致するか否かを、慎重に見極める必要があると説明します。

 あつみ氏自身が、過去に「師匠本」の選定を誤ったために、時間を無駄にしてしまった経験があるからこそ、この選定プロセスの重要性を力説します。読者は、本書を通じて、「師匠本」という自己変革の羅針盤を手に入れ、真に自分を導いてくれる一冊との出会いを体験することでしょう。

3. 「完コピ読書術」の実践:知識を血肉に変え、行動を加速させる4つのステップ

 書籍の内容を深く理解するだけではなく、その学びを現実世界へと結び付け、具体的な行動変容へと繋げるための、実践的な方法論である「完コピ読書術」のステップを詳細に解説します。この「完コピ読書術」の核心となるのは、以下の4つのステップです。

 第一段階は、「なるほどリスト」の作成です。読書中に「なるほど」と感じた箇所を、感情的になった箇所、疑問に思った箇所、そして、理解が進んだ箇所などを、ありのままに記録していきます。この記録をすることで、自身の知識の偏りや、興味関心の所在を客観的に把握することができます。

 第二段階は、「奥義」の特定です。記録した「なるほどリスト」を分析し、書籍の内容全体を貫く本質的な考え方、著者が最も伝えたい核心部分である「奥義」を特定します。この作業を通して、表層的な情報にとらわれることなく、書籍の本質を見抜く力を養うことを目的としています。

 第三段階は、「滝行」の実践です。特定した「奥義」を自分自身の生活や仕事に取り入れるために、自己の内面と徹底的に向き合い、その解釈を深め、行動変容へのモチベーションを燃え立たせます。

 第四段階は、「特訓プログラム」の構築と実行です。書籍から得た知識を具体的な行動へと繋げるために、実践計画を作成し、繰り返しトレーニングすることで、理想とする自己の姿に近づいていきます。

 この4つのステップを踏むことで、読者は、単なる知識の集積に留まらず、自らを成長させ、行動を変えるための具体的な力を身につけることができると説きます。

4. 実践の壁を乗り越える:立ち止まる時も、諦めないための知恵と戦略

 本書では、完コピ読書術を実践する上で、必ず直面するであろう困難や課題を事前に想定し、その具体的な対処法についても、著者自身の経験に基づいて丁寧に解説します。あつみ氏は、自身の数々の失敗と成功体験から得た教訓をもとに、読者が実践の壁にぶつかった際に、どのようにすれば再び前へと進むことができるのか、その具体的な方法を提示します。特に、読書による変化を実感できない時の心の持ち方、モチベーションを維持する方法、そして実践を軌道に乗せるための具体的な戦略など、実践を継続する上での知恵や、テクニックが余すところなく語られます。

 例えば、目標設定の再検討、行動を促す「仕組み」作り、原点回帰となる「滝行」の再実践、客観的に進捗を測るための「数値化」、そして、他者からのフィードバックやサポートを得るためのコミュニティへの参加などが推奨されています。
 さらに、あつみ氏自身が読書を通して、多くの人々と交流し、刺激を受け、視野を広げてきた経験から、読書で得た学びを自分自身の中に留めておくのではなく、他者と共有し、共に議論し、理解を深めていくことの重要性を説きます。読者は、本書を通じて、実践の壁に屈することなく、継続的に「完コピ読書術」を実践するための知識、そして、困難に立ち向かうための勇気を得ることができるでしょう。

5. 自己変革は永遠の旅:終わりなき成長を約束する「完コピ読書術」の真髄

 本書は、単なる読書術の解説に留まらず、読者自身の自己変革を促すことを真の目的としています。あつみ氏自身の経験から語られる言葉の数々は、読者に勇気と希望を与えると同時に、内なる成長意欲を掻き立てます。著者は、自身が、かつては読書が苦手であり、自分に自信を持てなかった過去の経験を踏まえ、そのような自分を変えられたのは「完コピ読書術」のおかげだと述べ、読者もまた、この読書術を通じて、自己の可能性を最大限に引き出し、自己実現を叶えることができると力強く訴えます。

 本書で解説される具体的なテクニックと、読者への熱いメッセージを通じて、読者は読書の世界への新たな扉を開き、常に成長し続ける自分に出会うことができるでしょう。「完コピ読書術」は、単なる知識の獲得に留まらず、自らの人生を主体的に切り開いていくための羅針盤として、読者の歩みを照らし続けるはずです。そして、読者はこの「完コピ読書術」を通して、自己変革の旅を永遠に続け、自己実現の旅を力強く歩み続けることができるでしょう。

人事の視点から考えること

1. 人材育成の新たな地平:自己変革を促す「完コピ読書術」への期待と可能性

 従業員の成長は、組織全体の持続的な発展を支える根幹であり、常に重要な課題として認識されています。近年、目まぐるしく変化を続けるビジネス環境の中で、企業が競争優位性を維持し、生き残っていくためには、従業員一人ひとりが、常に新しい知識やスキルを学び続け、変化に柔軟に対応できる能力、つまり、自律的な自己変革力を備えていることが不可欠です。多くの企業では、人材育成のため、研修制度、セミナーの開催、資格取得の推奨など、様々な機会を提供していますが、その効果は必ずしも十分とはいえないのが現状です。研修内容が実践に繋がりにくかったり、受け身の姿勢で参加する従業員がいたりするなど、様々な課題が存在します。

 このような状況下において、あつみ氏が提唱する「完コピ読書術」は、まさに、自己変革力を内発的に引き出すための、画期的な手法として注目に値すると考えられます。書籍という、いつでも手軽に入手できる情報源を最大限に活用し、自律的な学びの習慣を身につけさせ、単なる知識のインプットにとどまらず、実際の行動変容へと繋げていくことを目指すこの読書術は、企業が主導的に人材育成を行うだけでなく、従業員個人の成長意欲を最大限に引き出し、その成長を効果的にサポートするための、革新的かつ費用対効果の高いツールとなりうる可能性を秘めているといえるでしょう。人事としては、この「完コピ読書術」という新たな地平を深く理解し、人材育成戦略にどのように組み込んでいくかを検討する必要があると考えられます。

2. 「師匠本」という羅針盤の活用:組織の課題解決と個人の成長を効果的に両立

 「完コピ読書術」において、最も重要な要素の一つである「師匠本」の選定は、企業人事の視点からも、組織全体の成長と、従業員個人の成長の両立を実現するための、非常に有効な手段となりえます。組織が抱える課題は、企業によって多種多様です。例えば、リーダーシップの強化、チームワークの改善、営業力の向上、マーケティング戦略の再構築、組織全体の生産性向上など、挙げれば枚挙にいとまがありません。これらの課題に対し、各分野における専門的な知見が凝縮された書籍を「師匠本」と位置づけ、従業員にその内容を徹底的に理解させ、そこで得た学びを自らの業務に適用、実践させることで、組織全体としての課題解決能力の向上、そして、従業員一人ひとりのスキルアップを効果的に促すことが期待できます。

 また、従業員が自分自身の興味関心や、キャリア目標に基づき、「師匠本」を選択することで、より主体的な学びを促し、自律的な成長を促進できるというメリットもあります。人事としては、従業員の成長と組織の課題解決の両方に繋がる「師匠本」をどのように選定し、その学びをどのように組織に還元していくかを、戦略的に検討することが求められるでしょう。「師匠本」の選定は、組織の課題解決と、従業員個人の成長を、効率よく両立させるための、重要な戦略ツールとなるのです。

3. 「完コピ読書術」の体系的な導入:実践的な人材育成プログラムの設計と実施

 「完コピ読書術」は、その具体的なステップを体系化することで、企業の人材育成プログラムを設計する上での、非常に貴重な基盤となります。単に書籍を読み進めるだけでなく、「なるほどリスト」の作成、「奥義」の特定、「滝行」の実践、そして、「特訓プログラム」の構築と実行という、一連のプロセスを踏ませることで、従業員は、知識や情報といったインプットだけでなく、自らの頭で考え、行動へと繋げるアウトプットまでを含めた、実践的なスキルを習得することができます。
 
 また、定期的に進捗状況の報告を義務付け、それに対するフィードバックを行うことによって、従業員の学習効果を高めるとともに、組織全体での学びを共有し、互いに高め合うことのできる環境を作り出すことが可能となります。さらに、チームで「完コピ読書」に取り組むことで、個人の成長だけでなく、チームの相互理解を深め、より強固なチームワークを形成するための機会にもなりえます。「完コピ読書術」を、体系的な人材育成プログラムとして導入することで、より実践的で、効果の高い研修プログラムを設計、実施することができるでしょう。

4. 組織文化の変革:「完コピ」がもたらす自律的な学習と成長を促す組織文化の醸成

 「完コピ読書術」は、単に従業員の知識やスキルを向上させるだけでなく、自律的な学習を促し、自己変革への意識を高めるという、組織文化の変革にも繋がる可能性を秘めています。あつみ氏が提唱するこの読書術を実践することで、従業員は、書籍を単なる情報源として捉えるのではなく、自己成長を促すためのツールとして活用できるようになるでしょう。そして、自らの課題を主体的に見つけ、解決策を考案し、実行に移すという一連の行動を通じて、自律的な学習習慣、そして、変化を恐れない挑戦心が養われると期待されます。

 このような自律的な学習と成長を促す組織文化は、組織全体の活性化、そして、革新的なアイディアの創出を促進し、結果として、企業の競争力を高めることに貢献します。企業人事としては、この読書術を導入することで、従業員の意識改革を促し、より主体的で、柔軟な組織文化を醸成するための、効果的な一歩を踏み出すことができるでしょう。

5. 継続的なサポート体制の構築:長期的な視点で従業員の自己成長を支え続ける

 「完コピ読書術」は、短期間で劇的な変化をもたらすものではなく、継続的な実践と、適切なサポート体制があってこそ、その効果を最大限に発揮できるという側面も持っています。そのため、従業員が「完コピ読書術」を実践する上で、疑問や課題に直面した際に、いつでも相談できるような、きめ細やかなサポート体制を構築する必要があります。

 例えば、定期的な読書会や勉強会の開催、メンター制度の導入、オンラインプラットフォームを通じた情報交換、そして、進捗状況を可視化し、互いに励ましあう仕組みを導入することで、従業員のモチベーションを維持し、継続的な学習を支援することができます。また、従業員の成長を組織全体で可視化するために、成果発表会や、具体的なスキル評価制度などを組み合わせることも有効でしょう。企業人事として、長期的な視点に立ち、従業員の自己成長を支援し続けることで、組織全体の成長へと繋がるということを、肝に銘じておく必要があります。

 「完コピ読書術」は、企業人事にとって、人材育成の新たな可能性を切り開くための、非常に強力なツールとなりあるのではないでしょうか。本書を参考に、組織全体の課題や、従業員個人のキャリア目標を明確にし、その両方を満たすように「師匠本」を選定、そして、「完コピ読書術」を組織全体へと導入することで、従業員の自律的な成長を促進し、組織全体の競争力強化に繋げていける可能性があるでしょう。

あつみゆりかさんが経営されている「SoZo」社でも、「完コピ読書術」が紹介されています。

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