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ムダに教養がつくかも知れない不定期な雑学講座の連載(講義中は寝ないこと)~世界宗教の基礎知識3「キリスト教」をひもとく 第1講「聖書」の世界 その2

そもそも「福音」とはなにか。

 前回でもいいましたが、「福音」とは「よい知らせ」という意味です。
それで、聖書の中においてのよい知らせとは何か。
と考えてみますと、
「私たちの苦しみを救ってくれる存在」が
目の前に現れるということに尽きるわけです。

 そして、その「よい知らせ」とは、
そういう存在が現れた。
ということなのです。その奇跡に気づきなさい。
という事が根本にあります。

 さて、最初の「福音」は、マタイとルカが書き示した
「イエス・キリストの誕生」にかかわる
一連の「よき知らせ」
の記述です。

 新約聖書においての最初の「奇跡」が大天使ガブリエルによる、
マリアへの「処女受胎」 です。

実は、このガブリエルの受胎告知は
マタイとルカの福音書では、微妙にちがっていて、
マタイでは処女であるマリアの妊娠に悩むヨセフに
大天使ガブリエルが現れて、マリアを妻にせよと告げるのですが、

一方のルカの福音書では、ガブリエルがマリアの前に現れる。
という記述になっています。
この違いは、「聖母の処女性」という事についての論点において、
後世の解釈論議があったことでしょうことは、容易に想像できます。

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この逸話が書かれたであろう時代背景でいえば、
どのような理由であれ、マリアがイエスを身ごもったのは
事実として確かですから、紀元前6年くらいになりましょうか、
この時代のパレスチナは、ローマ帝国の支配下にありました。
ローマ帝国はそもそも中央集権国家ではなく、
服従した地方の民族による「自治権」を認めていました。

その時にこの一帯を統治していたのは、ヘロデ大王でした。
彼の圧政と重税は当時のユダヤ人を苦しめていました。
そんなユダヤ人の社会では、自分たちを解放してくれる
「救世主=メシア」の到来を待ち望むという風潮がありました。

そもそも「ユダヤ民族」は、長く他国の支配を受け続けてきました。
もともとダビデ王によって統一されたイスラエル王国が、
ユダヤ人同士の部族間の抗争で衰退化し、
紀元前6世紀頃に新バビロニア王国に滅ぼされて以来、
ユダヤ民族は国を持たない流浪の民になっていました。

救世主を待望する気持ちは、
このような歴史的背景にもあると考えられます。
 だからこそ「救世主」の誕生は
なによりもの「福音」だったわけです。

なぜイエスが「メシア」の福音になったのか

イエスが誕生したのは、ペツレヘムの馬小屋であるということは、
クリスマスになるとよくお話しで出てきます。
この誕生に関する逸話では、たとえばルカの福音書では、
宿が混んでいたために、宿に泊まれないヨセフとマリアは、
生まれたばかりのイエスを馬小屋の飼い葉桶の中に寝かせました。

すると天使から「救世主」誕生の知らせを受けて
駆けつけたのは貧しい羊飼いだったのです。
というお話になります。
たぶん、カトリック系の幼稚園できいた「クリスマス」のお話は、
これがベースだと思います。

 一方、マタイの福音書では、ちょっと大人の展開になります。
マタイの方の記述では、
東国に住む三人の博士が、星の吉兆を感じて、
その星の導く方向に向かうと、
その方向の先にはベツレヘムの「馬小屋」があり、
「救世主」の誕生を祝福したというのです。

かれらはその場で生まれたばかりのイエスを礼拝し、
黄金、乳香、没薬を贈り物として捧げています。

 そして、続きがあります。
この三博士はイエスの礼拝に向かう途中で、
ユダヤ地方の統治者であるヘロデ大王を訪ね、
「ユダヤの王になられるべく生まれた方はいずこに?」
という、ある意味「天然」な質問をします。

 ヘロデ大王は、自分の地位が奪われることを怖れ、
彼らにその場所を見つけたら報告せよと依頼するも、
三博士は夢のお告げで、いうべきではないとあったため、
その依頼をきかずに帰国してしまったのです。

激怒したヘロデ大王は、
ベツレヘム周辺の2歳以下の子どもをすべて殺すように命じました。

しかし、天使の忠告によって
イエスの一家はエジブトに逃亡してその難を逃れた。
とあります。

数年後にヘロデ大王は死に、
その跡を息子のヘロデの息子たちが分割統治することになりました。
ヨセフは念のため、ガラリアに居を構えたといいます。

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