少女漂泊~Monologue by HARUKA ι
あたしには、妙に気になる「同期生」がいる
日江倫子と言う名前だが、
なぜかあたしの同期の人たちは、
彼女のことを「ニーチェさん」と呼んでいる。
で、本人もべつにイヤでもないようで、
あたしが「ニーチェちゃん!」と呼ぶと、
にっとニヒルな笑みを浮かべて、
「はるかちゃん、にっちゃんでもいいよ。」
というまで親しい間柄にはなったが、
はっきり言うと彼女は変人だ。
神学系の大学に在籍しながら、
なぜか「キリスト教神学」に批判的なのだ。
で、「あたしのなかでは、神はすでに死んだからです」
と平気で言うので、
いつしか「ニーチェさん」というあだ名が付いてしまった。
まぁ、「にちえ」という名字に充てたのかも知れないけど、
あたし的には言い得て妙だとは思っていた。
3講目が終わったとき、
学食の前で「ニーチェさん」とばったり会った。
「はるかちゃん、あたしはこれからお昼にするんやけど。」
「あ、あたしもお昼にする。」
すると、ニーチェさんは、ちっちっと指を立てて言った。
「あたしも、やのうて、あたしは・・。やろ?はるかちゃん。」
あ、はじまった、
これがこの子がめんどくさいところなのだ。
だけど、つきあうとこれがおもしろい。
こういうタイプは滅多にいない。
「あわせるんやなくて、
自分がどうしたいのかが肝心なんやと思う・・・。でしょ?」
「ようわかってるな。さすがはるかちゃんや。」
ニーチェさんは、とにかく一度で「同意」しない人だ。
一番嫌いなことは、無批判に「同調」することだという。
とにかく自分が納得しないと首を縦に振らない人だ。
「ね~、にっちゃん」 、
「ん?なに?」
「今日、飲みに行かない?」
「ふむ・・・。」
いつもの「思索」が始まった。
実は、これを観るのがおもしろいんだよ、あたしは・・。
どんな答え出すんだろ。
「うん、行こう。」
「あはは、よかった。実はスポンサーのあてがあるんだよ。」
実は今日、、うっちーセンパイに誘われていたのだ。
もちろん、伯母さんの店。
そこにニーチェさんを巻き込んで、
「化学反応」が観たかったのが本音だ。
もしかしたら、御前様とニーチェさんの
邂逅と対決があるかも知れないという
ものすごくおもしろい企画なのだ。
案の定、ニーチェちゃんは、アンカーを食らわせてきた。
「・・おごってもらうってこと?」
「・・あ、いや、あわよくばっていう段階だよ。」
「・・・ふむ、はるかちゃん、
基本的に私はおごられるのはイヤなの。」
「うんうん・・。そうだったね。」
~~~あ~~マジにめんどくさい女だ。
だけど、かなりおもしろい。
彼女といると退屈しないのだ。
でもそう感じるあたしも、
相当に変わってるし、おもしろいのかも知れない。
ニーチェさんがもっとも嫌うのは
「みんながやるから、それは正しいんじゃないか?」
って言う考えなんだそうだ。
彼女はそれを「羊の群れ」って言っていた。
彼女はあくまでも、世の中のことは意味もないのに、
意味のない世の中の「みんな」に従う意味は全くないという。
まずは、「自分がどう思うか」を
第一にするのだというその彼女の言葉は、。
「作られてきたあたし」には、
本当に突き刺さるのだ。