異年齢学級とは?
イエナプランの一つの特徴である
”異年齢学級”とは
3学年を混ぜて
学級をつくること。
例えば、
1年生〜3年生まで
それぞれが10人ずついる
30人学級。
上学年なら
4年生〜6年生まで。
現実には、
各学年の児童数には
ムラがあるから
そんなに均等になるわけではないけど
同じクラスの中に、
3つの年齢がいる。
それが”異年齢学級”
これはイエナプランだけではなくて
意図は違うらしいけど
モンテッソーリーもそう。
オランダでは、
教育の種類に関わらず
異年齢学級を導入している学校は
珍しくない。
<異年齢学級にする理由①>
イエナプランだけの理由で言うならば
3つ浮かぶ。
1つは、
そもそも社会で生きる時
同じ年齢の人たちだけに
囲まれているわけではないから。
一般的には
いろんな年齢の人たちと関わりながら
生きていくことの方が多い。
だから、日常的に
幅広い年齢の人たちと
過ごす経験を増やすために
この形をとっている。
むずかしい言葉でいうと
”学校の社会化”
学校生活をより
社会生活に近い状態に
していくこと。
じゃあ、1〜6年生を一緒にすれば?
と考える人もいるだろうけど
それだと発達段階や能力が違いすぎて
一緒に何かをすることが
難しくなってしまう。
<異年齢学級にする理由②>
2つ目の理由は、
助ける側と、助けられる側の
両方を経験するため。
1年生だけの学級。
2年生だけの学級。
それをよく“学年制”と呼ぶのだけれど
学年制で6年間を過ごすと
発達のゆっくりな子は
いつも助けられる側。
発達のはやい子は
いつも助ける側。
偏った経験ばかりを
重ねていくことになる。
1年生は、入学したてで学校のことは
分からないことだらけ。
学習についてもそう。
異年齢学級であれば
2年生3年生が
助けることができる。
翌年、
1年生だった子達は
2年生となり
新しく入ってきた
1年生に対して
自分が助けてもらった経験を生かして
誰かを助けることができる。
その繰り返しで
毎年、異なる立場を経験する。
3年生は下学年学級では
リーダー的な存在になるが
翌年には
上学年学級に入り
助けてもらうことが増える。
1年生を年少。
2年生を年中。
3年生を年長。
とすると、こんな感じ↓
(※4歳から書いてあるのは、オランダの小学校は4歳から始まるため)
日本の6年間で、
年少・年中・年長を
2回ずつ経験する。
そうなると
どうなるか。
オランダからイエナプランを
日本に運んできた
リヒテルズ直子さんの言葉借りるなら
誰かが何かをできないのは当たり前。
誰かが何かをできるのは当たり前。
助けてもらうことも当たり前。
助けることも当たり前。
そういう文化を
つくることできる。
そして私個人の感想として、
子どもたちは
助けられ方
助け方も
上手になっていった
と思う。
<異年齢学級にする理由③>
最後の理由は、
教室の中に
多様性を保つため。
そもそも
学年が同じだからといって
発達が同じとは限らない。
学年制の場合、
同じ学習内容を
同じペースで
取り組むことが増えるため
人との違いが目立ってしまう
また、その違いが
ネガティブに捉えられがち。
でも異年齢学級だと
違うことをしている子たちが
教室の中に増える。
違いが目立たなくなる。
5年生が、4年生の漢字をやっていても
4年生が、6年生の算数をやっていても
気にならない。
人と違うことが
恥ずかしいものではなくなる。
これは現場で見ていて
本当に気持ちが良かったこと。
あえてたくさんの違いを生み出すことで
違いに対するネガティブさを減らしていく。
むしろ、違って当たり前という意識を
つくり出す。
異年齢学級のメリットは
大きいと思う。
<課題①>
そんな異年齢学級でも
もちろん課題もある。
一つは、”教材”
3学年の
異年齢学級を
複式学級
(※少人数の学校が、異年齢を集めて1つの学級する形)
のように
学年それぞれで
教科書どおりに学習を進めようとすると
単純に担任の仕事量は
3倍。
これは、ブラック労働まっしぐら。
だから、できれば
3学年が一緒に
年間を通じて
発展度合いは違うけれど
同じ学習内容で進めたら良い
のだけれど
教科書は、そうなってはいない。
教科書会社によって違うけれど
例えば、「東京書籍」なら
1学期の最初の算数は
4年生は
「大きい数(億や兆)」
5年生は、
「整数と小数」
6年生は、
「対象な図形」
というように
領域も内容も
バラバラ。
ちなみに、オランダには
異年齢学級用のテキストやドリルがあって
算数の1unitは、
3学年とも
角度の問題。
2unit は
割り算。
とかになってたりする。
学年によって
発展度合いが違うだけで
学習する内容は同じ。
これがあると、
インストラクションをやりやすいし、
教え合いも生まれやすい。
残念ながら
そういう教材が日本にはまだない。
私が頼ったのは
【Tes】という世界最大級の教員ネットワーク
ここにいけば、
異年齢で扱えるような教材が
少しは手に入るけれど
これを日本語訳して
使える教材にする時間は
私にはなかった。
世界では
どんどん多様な教材が増えているけれど
日本は言葉に壁によって
使える教材にするために
時間がかかる。
忙しい教員に
それが求められるのも
酷な話。
異年齢学級に
対応した教材が乏しいのが
課題の一つ。
<課題②>
3学年で同じ学習内容で進めるといったけど
日本の学習指導要領は
2学年で区切られていることが多い。
例えば、
1・2年生は生活科だけど
3年生になると
理科・社会になる。
異年齢学級で
指導要領を網羅しようとすると
3年生だけに
理科・社会の授業が必要になる。
上学年でいうならば
5・6年生だけに
家庭科があるから
4年生が除かれてしまう。
ちなみに
イエナプラン発祥のドイツは
小学校が4年間なので、
2学年で異年齢学級をつくっている。
オランダは、指導要領はあるが
学習内容が学年で区切られていない。
「卒業までにココまでいってくださいね」
というゴール設定だから
そのプロセスに
柔軟性をもつことができる。
日本で異年齢学級をするならば
最初は、ドイツと同じように
2学年での異年齢学級が良いと思う。
いきなり始めると
大変だから
まずは教師も
少しずつ慣れていく
っていうのが大切だと思う。
課題はあるけれど
メリットもとても大きいから
イエナプランどうこうではなくても
異年齢学級が
日本の小学校も増えてくれるといいなと
思う。
もっと詳しく知りたい方は
イエナプラン教育協会のHPを
ご覧ください。↓