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“山の中”で暮らすということ

去年、12月に”山の中”にある
別荘地に引っ越しをした。

名古屋生まれ
名古屋育ち。
人生のほとんどを
マンションで暮らしてきた。

コンビニも、スーパーも
駅も、バス停も
全部が徒歩圏内に
いくつもあった。


そんな私が今では
一人で
”山の中”
暮らしてる。


<”山の中”での暮らし>


私が住んでいるのは
とある別荘地


別荘地は区画で分けられていて
一つの区画が、約300坪。

広すぎて
いまだに扱いきれてない。


標高は、1300m
酸素が少し薄いから
高地トレーニングとして
使われる場所。


気温は
山の麓と比べると
いつも数度低い。


家の周りは
360度
木に囲まれてる。
散歩道の景色は壮大

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冬の間
雪の上には
いろんな動物の足跡。
たまに鹿やキジに出くわす。



一番寒かった日の朝は
家の中がマイナス14度

薪ストーブは4月中旬まで
使ってた。

5月になった今でも
朝は、灯油ストーブをつける。

こたつも、まだまだ活躍中。




秋は一面、落ち葉色。
冬は一面、雪色。

最近、日に日に
緑色が増えてきて
春を感じる。

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スーパーは車で20分。
コンビニも車で15分。
交番も郵便局も、それくらいの距離。


買い物は数日に一回。
あるもので賄う力がついたのと
無駄なものを買わなくなった。


「不便じゃないの?」
って聞かれるけど
これが驚くほど不便じゃない

むしろ心地よい。



確かに
どこに行くにも時間がかかる。
1日の時間のうち
移動時間が占める割合は増えた。



でもその代わり、
1日でたくさんのことをしなくなった。

理由は、できないから。



待ち合わせには
遅刻することが増えた。
(ごめんなさい笑)



山の中は
時間の感覚が弱い。


慌てない暮らし。
慌てることができない暮らし。




聞こえるのは
家の前を流れる川の音
鳥のさえずり

この時期は、
鳥の声で目を覚ますことができる。

夜はさらに静か。

静かすぎて、
時計の音が気になり
家の中に
時計は一つだけになった。



灯油や薪を運んでいたら
力こぶができるようになった。




1年の中で一番大変な冬を超えてもなお、
この場所がとても好きだと言える。

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<”山の中”を選んだ理由>


長野県に移住して
最初に住んだのは
佐久市。

新幹線の駅があり
東京へのアクセスも容易。

人口は約10万人。
市の経済力がそれなりにあり
いろんな施設がとても綺麗。

佐久市で
最初に住んだのは
3DKの平屋。

日当たりの良い
大きくて広い縁側。
庭・畑付き。

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とっても心地いい家だった。

でも、すぐ目の前には
24時間営業のスーパー

1日中、冷暖房のファンが回る音が
聞こえてきた。




自然への関心を高めてくれたのは
職場への通勤路

まっすぐな道
両端には、たくさんの田んぼが並んでた。



春には、土が耕され、
水がはられる。
その水面には空や山が映る。


田植えを終え
夏の間、少しずつ大きくなる苗。
新緑の色が、だんだん濃くなり
背が高くなる。

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穂が垂れてくる頃
太陽の光で金色に輝く
道端に咲くコスモスのピンクや黄色
重なる景色が好き。

稲の色がだんだん色褪せてくるころ
見事に刈られて、また土色の田んぼに戻る。
少し寂しい気持ちになる。


こうやって、通勤中に
季節の変化を感じてきた。


職場に行く時、家に帰る時、
嬉しい時も、辛い時も

自然にしかつくれない
”圧倒的に美しい景色”が
自分を癒してくれているのが
わかった。

自然が人に与える”力”や”優しさ”を
知ったと思う。

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だからこそ、
今よりももっと自然のあるところで
暮らしたいと思った。


忙しすぎる仕事の影響もあった。
日々、喧騒の中にいたから
自分を癒す場所を求めてた気がする。



空き家や別荘を探し始めたのが
去年の9月くらい。



でもなかなか良い物件は見つからなかった。
今は移住者が多いから
良い物件はすぐに売れてしまう。



だから別荘地で暮らしている知人に
声をかけておいた。



「良い物件がでたよ」
とお知らせが届いたのは
11月の休職中。
名古屋に帰省していた時。




退職するかどうかを悩んでいて
別荘を買う気持ちの余裕なんてなかったけど

紹介してくれたのに
見に行かないで断るのは失礼だと思ったから
長野に帰ってきた翌日
内見に行った。

同じ別荘地内で暮らしているという
とても人の良いおじいさんが案内してくれた。


いろんな物件を見てきたからこそ
その物件がどれだけ良いかがすぐに分かった。



結果、即決。
たぶん、その時に、退職も決めた。



バルコニーから
標高1300mの景色を見た時、

”あたらしい世界に行こっ”
って思った。



別荘地を知り尽くしているおじいさんに
「雪が降る前に、引っ越した方が良い」
と言われ、
1ヶ月もない怒涛のスケジュールで
引っ越しをした。



<”山の中”は、一人じゃ暮らせない>


引っ越す時
私は当たり前のように
引越し業者に依頼した。

転居日が決まり
それをおじいさんに伝えると
「そんなことをしなくていい。無駄なお金は使うな。みんなでやればいい。」


これが、彼の当たり前だと知ったとき
涙が出た。


退職のこともあったし
別荘で暮らすことも
全部自分で決めた。


そこから生まれる責任は
全部自分で引き受ける。



”自分でなんとかしなきゃ”って、
思ってた気がする。




結局、引っ越しは
同じ別荘地に暮らす人たちと
同僚、友達が
手伝ってくれた。


私を含めて大人8人。
集まった軽トラは4台。


それでもギリギリだったけど
なんとかなった。


運搬を終えて、
みんな一緒に新居でご飯を食べる。
お酒を飲む。


おしゃべりをして
初対面の人同士が
仲良くなった。


すごく楽しい引越しだった



急な引っ越しにも関わらず
女が一人で暮らせるようにと
設備を万全に整えてくれた人がいた。


入居前に、一緒に雑巾掛けをしてくれる人がいた。


を何度も運んだり
虫の駆除をしたりしてくれる人がいた。


別荘地内の道を覚えるために
散歩に誘ってくれる人がいた。



別荘地には、町内会のようなコミュニティはない。
受け取り、届けるだけの回覧板
目的がよくわからない集まりや会費
そういうのは全くない。


でも人との繋がりが
ゆるくちゃんとある。




名古屋や佐久市に暮らしていたときより
暮らしに安心感がある。



挨拶をすれば返してもらえるし、
ご近所さんのことを
知っているという感覚”がある。


何かあったら
ここに助けを求めよう
っていう場所がある。



女だからとか関係なく
山の中にある不便さと付き合っていくには
人とのつながりが不可欠になる。


これは自然がつくってくれた
ちょうど良いコミュニティだと思う。




山の中は、一人じゃ暮らせない。
でもそれが、ここの魅力だと思う。



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