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JSPO公認コーチ1(軟式野球)のレポート

先日、日本スポーツ協会の公認コーチ1(軟式野球)の養成講習に3日間参加してきた。最後に「テーマ:野球競技人口の減少対策として、指導者に求められる人間力•指導者のあり方•指導法について」についてのレポート提出があったので、私が提出したレポートを残しておこうと思う。
競技人口減少と人間力向上を主においた指導の考察をポイントに提出を求められた。根拠となるデータを引用しているわけではないので、私の机上の空論的で感情論も入っているが、今自分の考えていることを素直に文字に起こしてみた。

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競技人口の減少に関しては様々要因があると考えるが、野球の習い始めが小学生だと考えた時に、その決定権は子どもではなく親にある。
つまり親にとって、自分の子どもが野球をするメリットよりデメリットが大きいと考えた時、その家庭の子どもは野球をやらないのだ。
TVゲームと同じで、周りの友達がやっているからやりたいという子どもからの強い主張があった場合は、親も決断を悩むだろう。
数十年前までは全国どの地域でもそんな状況があったと想像するが、現代においては公園等で野球をやる環境が減ってしまったため、野球を習う以前に野球に触れる機会も減ってしまったことは寂しい限りだ。
野球競技人口の減少を緩和するためには、野球のデメリットは何かを考えることは重要だ。なぜならば、子どもや親からデメリットを取り除いてあげることが、野球を始めるハードルを下げてくれるからだ。

デメリットを大きく3つの分類で考えてみたいと思う。一つは野球競技そのもの、もう一つは子どもや親を取り巻く環境、そして指導者の質だ。
まず野球競技そのもののデメリットは、ルールが難しく人数が必要で場所もとるということだろう。卓球と比べてみれば一目瞭然だ。
そもそも子どもの数が減っているので、野球に限らず大人数で行うスポーツはこの点不利がある。
野球はお金がかかるということを要因にあげる人も多く、実際にそうだと思う。しかし、お金の使い方は改善の余地があると考えると、そこまでネガティブな要因にはならないのではとも思う。
何を言っているかというと、例えば練習はすでに持っているジャージや体操着でも問題ない。
こんなことを言うとそれでは野球ではないと反論の声が聞こえてきそうだが、そういう人たちは目の前の問題から目を逸らして先延ばししているだけだと思う。
夏の暑い日にハーフパンツで練習することで熱中症対策を行っているチームもあり、チームの力量と工夫で費用の問題は軽減できるのだ。
次に子どもや親を取り巻く環境について考えてみたいと思う。インターネット技術の向上やスマホの登場によって今まで表面化していなかった情報が気軽に取得できるようになった。
これは素晴らしいことで、競技者の技術は格段に向上していくだろう。東京オリンピックに出場したスケートボードの日本人選手たちが、海外選手の動画をよく観ているという話はまさにその象徴のように感じた。
一方でネガティブな情報も簡単に目に触れるようになった。野球は拘束時間が長く親の負担も大きい。中高生になると上下関係やイジメ、体罰といったニュースも毎日のように目に飛び込んでくる。
ここだけを切り取れば、自分の大切な子どもに野球をやらせたいと思う親がどこにいるだろう。共働きの家庭が増え、親自身もせっかくの休日を丸々潰されてしまうのは、いくら自分の子どものことであってもしんどいのは当然だ。
それでも野球をやらせてあげたいという、それなりの覚悟が必要なわけだが、そもそもそのような強い決意がないと野球を始められない環境に問題があるのは間違いないだろう。
最後に指導者の質の問題である。指導者はどうあるべきかも含めて考えてみたいと思う。
先程述べた情報収集が容易になったことにも関連するが、指導者の質もまた表面化されてきたと考える。
野球経験者が経験と勘を頼りに指導してきたことが表面化されてきたのだ。YouTubeやSNSには専門性の高い動画が溢れている。そしてきちんと言語化されていて、近所のおじさんに習うよりもよっぽど良いツールになっている。
野球指導者が日常的に勉強しているか否かは容易ににわかってしまう時代なのだ。しかし、インターネット上の動画だけが良いとは決して思わない。
例えば、ホームランを打ったシーンの映像を見ると、皆良い打ち方をしているのと同じで、野球はそんなに単純なスポーツではない。
仮に理想の打ち方を練習で習得できたとしても、試合中のプレッシャーや自身のその日の体調によって、パフォーマンスは微妙に変化する。
その変化に順応しながらパフォーマンスを発揮できるかが難しいのだが、そこにチャレンジすることが野球を含むスポーツの楽しさでもある。
だからこそ指導者は、技術的なことに限らず栄養管理、筋力トレーニングといったフィジカルの知識や、マインドセット、セルフコントロールといったメンタルの知識も必要になってくる。
さらには、社会人としての引き出しはたくさん持っているべきで、子どもたちの育成には欠かせないだろう。
故野村克也氏は著書『指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論』の中で、指導者に求められている能力は、「言葉をアレンジする力」である。と述べている。
まず指導方法以前に、指導者に求められる能力は、子どもたち一人一人によって言葉をアレンジして伝えられるテクニックだと思う。昔野球が上手かったというだけの指導者は沙汰されるべきなのだ。
子どもからしても、ユーモアがありバイタリティの溢れる大人と話す方が楽しいだろうし、そういう大人と一緒に野球をやりたいはずだ。
そして親も野球の指導者が、他のスポーツの指導者よりもそういう人が多いと感じるようになれば、必然的に競技人口は増えていくだろう。
そういった意味でも統率する組織もまた重要な役割を果たしていくことは間違いない。

今回、日本スポーツ協会の公認コーチ1の養成講習を受けたわけだが、運営者受講者共に若い人が圧倒的に少なかった。より未来の野球に対して危機感を強めることになるとは皮肉にさえ思う。
運営においても残念ながら、講習のアンケートを実施してフィードバックを受け、それを改善に繋げるといったPDCAのサイクルは乏しそうだ。例えば、講習の講師が適任だったかどうかはどうやって判断しているのだろうかと不思議に思う。
指導者自身が講習に頼らず勉強するという前提の姿勢はあるにせよ、講師の質が悪ければ、指導者の質も上がりづらいと考える。この辺りのプロセスはぜひ改善をして欲しいと期待する。
あえて野球のデメリットという観点から考察をしてみたが、野球は素晴らしいスポーツだと思っている。

野球のメリットは数えるとキリがないが、一番は楽しいということだ。とにかく野球は楽しい。そして誰もが野球を楽しむ権利を持っていて、一部の人だけが楽しめるスポーツであっては絶対にいけないのだ。
小学生で野球を習っていなかった子が中学生になって野球を始めても良いし、一度野球に飽きてしまった子がまた野球を始めても良いのだ。
子どもは楽しいが、親はしんどいという野球ではダメなのだ。
野球が誰もが楽しめるスポーツであり続けるために、私はできることに取り組んでいこうと思う。==========================

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