"選択と集中"という戦略は正しいのか?
『選択と集中』は企業活動などでよく耳にする言葉ですが、 特定の事業分野に経営資源を集中することを言います。事業に割けるリソースが少ない場合は、選択と集中による効率化が必要かもしれません。しかし、選択と集中は多様性と相反する方針です。方針を間違えると、散々な結果に陥る場合が少なくないのです。
かつて日本は半導体大国でしたが、半導体メモリばかりに集中したため、半導体関連企業が次々に無くなっていきました。また、特定の企業名を出して申し訳ないのですが、「目の付け所がシャープでしょ」でお馴染みのシャープは、液晶部門を選択して集中したため、倒産して外資に買収されてしまいました。
もちろん、選択と集中で成功している企業もあるので、一概にこの戦略が悪いとは言えません。しかし、人間ですから”選択を間違える”ことも多々あります。間違った選択をすると、集中投下したリソースが全く無駄になってしまいます。
科学の分野は企業活動とは違いますが、最近は短期的な成果が求められます。つまり、科学の分野にも選択と集中の波が押し寄せているようなのです。IPS細胞のように、ある程度将来性が見通せるものなら、選択と集中がうまく行くでしょう。しかし、未知の材料や未知の現象に関する研究では、選択と集中は役立ちません。そもそも、未知のものですから、選択そのものが出来ません。科学分野は、選択と集中が馴染まない世界の一つかもしれません。
ではどうすれば良いのか?、と言われても最善策はないのです。リソース(お金)が無限にあれば、多種多様な研究にお金をばらまくのが最も良いのかもしれません。しかし、大学や研究所での予算は税金であることが多いので、無駄な研究に投資するのには抵抗があるかもしれません。
でも少し考えてみて下さい。どんな研究が役立つかなんて、誰にもわからないのです。今役立たなくても、将来役に立つものだってあります。研究とはそういうものです。今こそ、”ゆとり”が求められていると思います。
ポンコツ教員のボヤキなどは、無視されるのがオチですが・・・。