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掛け算は回転だ!

掛け算は、足し算や引き算に続く重要な演算ですが、数学(算数)の最初の関門でもあります。また、掛け算の基礎を習った後には、退屈な九九の暗唱が待っています。このあたりも、掛け算でつまづく子供が多い原因なのでしょう。私も当時、運悪く算数の教科書を紛失してしまい、授業中に覚えられなかったので、居残りさせられて先生とマンツーマンで暗唱させられた苦い思い出があります。

掛け算は、「2+2+2+2+2+2+2って書くのはめんどうでしょ。でも2×7を覚えたら一発でしょ。覚えようね」と”累加”の概念を使って教えられることがあります。しかし、最初にこう教えられると、次のような問題が生じます。掛け算を足し算で教えると、掛け算すると”いつでも増える”のだと思い込んでしまうのです。このように思い込むと、後に習う 5×0.5=2.5 という最初の5より答えが減る掛け算の説明が理解できなくなるのです。また、4×0=4 といった、”4に1回も足さないから4のまま”という間違った発想にもつながります。

小学生なら、掛け算を”1あたりの数”として、具体例を交えて教えるのが良さそうです。例えば、ネコの目や耳二つ、のように数が決まっているものがたくさんあります。それを利用して「ネコ1ぴきあたり耳2つ」というように表します。これが”1あたりの数”です。もしネコが3匹いたら、耳の数は全部で、”2つ×3匹=6つ”となります。生き物以外の人工物の場合も、「自動車1台あたりタイヤ4本、5台作ればタイヤは全部で何本必要でしょうか?」のように言えて、”4本×5台”から全体の数20が出てきます。

小学生までなら、このような理解で十分なのですが、中学校になると負の数の掛け算など出てきます。こうなると、お手上げです。理解するのが一気に難しくなります。しかし、要領の良い子たちは「異符号の掛け算の結果は負数になるし、同符号の掛け算は正数になる」ことを、”理解せずに”暗記します。もちろん、暗記して悪いことは無いのですが、何となく釈然としません。

高校生になると、複素数が出てきて、掛け算すると-1になるような虚数単位iが出てきます。こうなると、掛け算の理解はさらに困難になります。しかし、ガウスが考えた実数と虚数を同時に表わす複素(数)平面を考えると、掛け算の概念が統一して理解できます。掛け算の本質は、複素数平面内での”原点を中心とした回転”と”原点からの距離の伸縮”なのです。

説明を簡単にするために、複素数平面上の原点から距離が1となる単位円を考えます。1に1を掛ける場合は、無回転(または360度回転)となります。また1にiを掛けることは、複素数平面上で90度の回転に相当します。さらにiを掛けると90度回転して-1となります。もう一度iを掛けるとさらに90度回転して-iになります。最後にもう一度iを掛けると90度回転して最初の1に戻ります。このように考えると、-1を掛けることは、複素数平面上での180度回転に相当します。つまり、1に-1を掛けると180度回転して0を挟んだ反対側に移動します。さらに-1を掛けるともう180度回転して、元の1に戻ります。これが-1に-1を掛けると1になる本当の意味です。

このように、複素数平面(ガウス平面)が理解できれば、単位円上の掛け算は単位円上の回転に帰着することが理解できます。一般的な掛け算は、この”原点周りの回転”に加えて”距離の伸縮”を組み合わせることで、理解することができます。オイラーの公式も、複素数平面上の回転と密接な関係があります。

オイラーの公式

この公式中のθが回転角に相当します。世界で最も美しいと言われるオイラーの等式は、オイラーの公式のθにπを代入したものです。

オイラーの等式


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