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学校の勉強は実践に役立たないのか?
「学校の勉強は実践に役立たず」という言葉を度々耳にします。私も一応、大学教員のハシクレとして授業を担当しているので耳の痛い話です。しかし、本当にそうなのでしょうか?。
高校の時に数学が苦手で、テスト勉強に苦しめられた人は決まってこう言います。「サインやコサインが何の役に立つんだ?。就職して社会に出たら全く使わないぞ!」。しかし、それは大きな誤解です。確かに自分自身でサイン・コサインは使わないかもしれませんが、三角関数は色々な職業で使われています。
例えば、測量や機械の設計には三角関数は欠かせませんし、コンピュータグラフィクス(CG)やスマホゲームのプログラミングなどでも頻繁に使われています。大昔のパソコンは、計算能力が今のように高くなかったので、三角関数を計算するのに時間がかかりました。そこで、ゲームなどには三角関数の表をデータとして埋め込んで使うという、荒業も使われていました。このことを考えただけでも、三角関数のありがたみがわかります。
数学も今のような抽象的で難解なものではありませんでした。その原点は、土地の測量や暦の計算、また食料などの”公平な分配”にありました。もともと、数学は実用面から始まったのです。その他の学問も、その始まりは実用的な物から出発しているものが多いのです。
「学校の勉強は役に立たない」のではなく、きちんと学んでいないので「学校の勉強を実践に活用できない」のです。ただし、教える側にも問題はあります。中学校や高校の勉強は知識偏重で、実践を考慮していないことです。
この前見たテレビで、実践教育をしている村を知りました。その村は人口が少なくて中学校までしかなく、高校からは遠く離れた町または県外に行かなければならないとのことでした。高校でいきなり一人暮らしをするかもしれないのです。そのため、そこの中学では”調理実習の回数が多い”とのことでした。将来の一人暮らしで困らない教育、これは立派な実践教育です。