♨漫遊記#9 秘湯・鬼首温泉
”鬼の首”といった恐ろし気な名前の鬼首(おにこうべ)温泉は、JR鳴子温泉駅から車で約30分行ったところにあります。小さな温泉郷なので、鳴子温泉郷に含んで紹介されることもあります。鬼首温泉郷は、太古にできた鬼首カルデラ内にあり、このカルデラ内には写真のような間欠泉や地獄谷などがあります。片山地獄には、豊富な地熱エネルギーを利用した鬼首地熱発電所も存在します。周囲には、禿岳(かむろだけ)や荒雄岳があり、須金岳の麓にはテニスコートやキャンプ場、スキー場などのスポーツ施設も充実していて、登山客はもちろん、グループやファミリーにも人気を集めているそうです。
鬼首の名前の由来は、初代・征夷大将軍である坂上田村麻呂の蝦夷(えみし)討伐が関係しています。その昔、当地で朝廷に逆らっていた鬼(蝦夷)討伐を命じられた坂上田村麻呂が首長の首を落としたところ、空を飛んで大岩に齧り付いたそうです。その伝説から、”鬼首”の名が付いたと言われています。
鬼首温泉には1か月くらい滞在したことがありました。これは、鬼首地熱発電所周辺の物理探査のためでした。1か月も滞在していると、温泉というより日常のお風呂の感覚になってくるので、良いお湯だったと思いますが、鬼首温泉自体の印象はあまり残っていません。
鬼首で印象に残っているのは、発電所近くの片山地獄です。発電所周辺は片山地獄からの硫化水素ガスの濃度が高く、温泉特有の硫黄臭が強烈でした。電気探査では、ビニール電線をよく使うのですが、電線のビニール被覆を剥くと、ピカピカの 銅線が見る見る錆びて黒ずむのがわかりました。私はピカピカの10円硬貨で試しましたが、あっという間に黒い10円硬貨になりました。
この調査から数十年後、発電所の敷地内で硫化水素ガスによる大規模な爆発が起きました。自然は、温泉という恵みを与えますが、時には厳しい試練も与えます。
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