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♨漫遊記#13 白子温泉

 千葉県茂原市の関東天然瓦斯開発株式会社さんの天然ガスの井戸をお借りして、流体流動電位法の実験を実施したことがありました。この実験は、石油の二・三次回収のモニタリング用の測定システムのテストとして実施しました。茂原には良い宿が無かったので、九十九里浜のほぼ真ん中にある白子温泉に泊まることにしました。

 白子温泉の名前には、の字が入っていますが、お湯は真っ黒でした。これは、この温泉水中にヨウ素が多量に含まれているからです。今までには、硫黄泉のような真っ白な温泉は何度か入ったことがありましたが、真っ黒な温泉は初めてでした。白子は九十九里浜のほぼ中央に位置している、九十九里浜唯一の温泉地です。薄く黄色がかっている事から「黄金の湯」とも言われています。

 白子温泉は、地下2,000mの深さから天然ガスと一緒に上がってくる灌水かんすいを温泉として利用しています。この灌水は上総層郡かずさそうぐんと呼ばれる第三紀から第四紀の地層中の砂と泥の互層(交互に繰り返し重なっている地層)のうち、砂層中から採取できます。この灌水に天然ガスの元であるメタンやヨウ素が溶け込んでいます。

 メタンやヨウ素の元になったのは、大昔に地下に沈んだ海草などです。その海草が長い年月を経て分解されて、ヨウ素が濃縮されたと考えられています。この温泉は、海水に比べてマグネシウムが少なく、ヨウ素が多いのが特徴です。ヨウ素は通常うがい薬(イソジン)や消毒に使われますが、白子町のヨウ素の産出量は年間1,000トンもあります。

 実は、日本はチリに続き、世界第2位のヨウ素生産国です。関東天然瓦斯開発株式会社は、天然ガスの副産物としてヨウ素を採取しています。白子温泉では、自然の恵みとして、温泉・天然ガス・ヨウ素の三つを与えられています。何とも羨ましい限りです。

しらこの恵み


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