レディーガガ
「社長、ブランド品好きですか?」とずっと前に社員に聞かれたことを思い出した。
「ブランド品が好き?」という問いの中にあるブランドって多分、ルイヴィトンとかHERMESと言われる、いわゆるハイブランドだと勝手に決めつけて「そんなに興味はない」と答えたことを記憶している。
けど、私が身につけている服や靴は、特定のブランドが多い
特に、洋服に関してはpatagoniaやTheNorthFaceやDANTONを好んで着ているような気がする。
これらのブランドを好きな理由は、ブランド一つひとつがもつ物語だったり、メッセージに共感しているんだと思う。
先日、グッチの創業家の盛衰を描いた映画「House of GUCCI」を観てきた。
言わずと知れたGUCCI。ただ、私としては好きでも嫌いでもなく、そんなに興味はなかった。
けど、私の好きなブランドTheNorthFaceと2020年にコラボ商品を出していて、少し気にはなっていた。
巨大ファッションブランド、 GUCCI。その創業家である GUCCI家の人々が 「GUCCIという名前」を巡って醜く争う実話をもとにした物語。
登場したGUCCI家の人全員がGUCCI大帝国の王様(あるいは女王様)になろうと暗躍する姿に、人間というものの欲深さを見た。
「自分さえ良ければ良い」という争いに勝者はなく、最後は誰ひとり GUCCIという帝国に住むことさえ出来なくなってしまい、落ちぶれたり、死んでいったり・・・・。
手に入れたいと、もがけばもがくほど離れていく…。これも真理。
二宮尊徳の、たらいの水だ。
このお家騒動を経て、GUCCIの中に創業家のGUCCIさんはいなくなり、大手資本の傘下になってブランドは存続した、と映画ではなっているし、実際もそうらしい。
GUCCIは今も人気。なぜだろう?
この映画を最後まで観て感じたことは、改めて「ブランドとは何か?」というもの。
GUCCIのトップだった人たちが、創業した時の歴史や今までの実績、そして何よりも GUCCIを愛する顧客を全く無視して存在したのにも関わらず、今もGUCCIは存続し、人気を博している。
これは一体何なんだろうか?
ブランドとは一体何なんだろうか? GUCCIとは何なんだ?ということを考えさせられ、興味が湧いた。
そして GUCCIの今を探索した。
この映画で語られている後の GUCCIは、やはり大変だったようだ。
ビジネスに走りすぎて模倣品や粗悪品が出回ったり、かなりの経営危機に陥っていた。1994年に就任したクリエイティブディレクターの手腕で一時回復したけど、 GUCCIブランドが再び輝くというところまで行かなかった。
復活の GUCCI
本当の意味で GUCCIが復活したと言われているのは2015年以降。
この年、クリエイティブディレクターに就任したアレッサンドロミケーロによって GUCCIは復活を遂げた。
このミケーロが就任した直後にしたこと。それは、斬新なデザインを世に出すことではなく、大きなマーケティング戦略でもない。
最初に行ったことは、過去との対話。歴史との対話。らしい。
100年続くGUCCIというブランドの歴史との対話。過去の美しい作品との対話。
それらを作ってきた人や場所との対話。
そこからしか新しいものは生まれて来ないと語っている。
そしてひとつの象徴として、1954年に GUCCIが購入し、工場として使っていた『パラッツォ』という旧貴族の邸宅を、過去の製品を展示する場所として蘇らせた。
https://www.gucci.com/jp/ja/st/stories/runway/article/men-fall-winter-2020-location
ブランドとは何か?
やっぱり、ブランドとは物語なんだと思う。
創業したグッチオ•グッチさんの想いから始まった物語。
その想いが関わる人たちに繋がって作品となる。
そして、その物語(作品)を購入する事で、誰かの人生に入り込む。その作品を身につけ、使い、新しい物語が産まれてくる。
そういった物語の繋がりがブランドなんだと思う。
ファッションブランドしては、ひとつひとつの作品を通して、その物語を発信しているんだと思う。
単なる「服を買う」のではなく、「GUCCIを買う」なんだと思う。
私の経営するフクールや運営するKOTELOもひとつのブランドだ。
創業者の想いから始まった物語を、私たちひとりひとりが毎日のシーンの中で繋いでいって、より多くの人に愛される物語に変えていく。
私が今、実践したいブランディングとは、こういった事だと思う。House of GUCCIという映画を起点に、GUCCIというブランドが好きになった。そして、ブランドというものを考えることができた。
最後に、ここまでの文と全く関係はないが、レディーガガさんはすごいなと感じた。 GUCCI家を衰退に導いたパトリツィアを演じていたのだが、その演技全てに惹き込まれた。ひとりの役者さんにこんなにも没入したのは久しぶりだ。
稀代のアーティスト・・・と言われているけど、ロックンローラーだなと感じた。