企業内にコミュニティを作るといっても、大抵の場合その整理すらついていない件
はじめに
先日、以下のような記事が配信されておりました。
こちらの記事では、エンジニアのコミュニティやテックブログに関する内容が書かれております。
実は、このnoteでも以前「DX研修後のつながり」に関する記事を書いたことがあります。
こういったつながりは「(企業内)コミュニティ」「(企業内)オンラインサロン」というフレーズで呼ぶことが多く、その必要性が叫ばれることが多い気がします。にもかからわず、コミュニティ構築の具体的な成功事例はあまり聞いたことがありません。
そこで、今回はそういったコミュニティとはそもそもどういう性質のものなのか? 参加者はどうやって呼び込んだたよいのか? といったことについて解説していきます。
コミュニティ? 「どれ」のことを言ってるの?
コミュニティの話をする際に一番大事な点があります。それは
そもそも、コミュニティをどんなイメージで語っているのか?
ということです。
たとえば、ある人は有名IT企業のユーザーコミュニティを思い浮かべるかもしれません。具体的には「他部門の若手社員同士が、Slackなどを使いながら、お互いに情報を教え合う社員専用サイトで、題材はPythonの書き方など」といったイメージです。
しかし、他の人は、そこに他社ユーザを追加して公開情報をやり取りさせるような「オンライン版企業交流会」のようなものをイメージを持つかもしれません。その一方で、たとえば学会におけるポスターセッションのような、やや「カタめ」な産官学の連携を促す繋がりまでも、この「コミュニティ」で扱うべきなどと言い出す人もいるかもしれません。
これらを無理やり図にまとめてみました。
この図では、「業務に直結しているか、そうでないか(縦の軸)」「社外にオープンか、社内にクローズか(横の軸)」で整理しています。この図で行くと、普段の業務は右上に位置付けられ、逆に個人で書いているnoteなどは左下になります。コミュニティがどちらに近づくのかでその性質が明らかになるでしょう。
一方で、違う○の中であっても取り扱う内容が似通ることはあります。たとえば「Pythonのプログラミング」というテーマであっても、社外に向かって技術力をアピールするために発信するのか、社内の業務で扱うテーマを有志で教え合うようなサークル活動なのかで全然意味合いが違います。
コミュニティ参加者は何に期待しているのか? ~ インセンティブの重要性
このように、たとえば、ある人はコミュニティを「完全に顔見知り同士で行う勉強会」をイメージしているかもしれないし、またある人は「社外の有名人から最新動向を教えてもらう講習会」のようなものをイメージしているかもしれません。
そこで、次にそういったコミュニティに参加することを期待されるメンバーの方に目を向けましょう。彼らは何をモチベーションにそのコミュニティに参加するのでしょうか? 特に上図右上に近いコミュニティであるほど、業務への関連度が高まるので
会社の業務に関連しているのだから、何らかのインセンティブが欲しい
といった認識で参加することを期待するのではないでしょうか。具体的には、「完全に自分たちでやるから、場所だけ貸してほしい」という人から「書籍購入費など一部は会社からも負担してほしい」と思っている人まで様々かもしれません。ともかく、コミュニティ運営側はそういった人たちにインセンティブをどう設定するのかは非常に重要です。
以下の記事では「DXがうまくいかない企業はインセンティブが不明確」ということが記されています。
こちらは、DX全般について書かれた記事ですが、企業は「DXの取組において、自発的にデジタルの知識を共有し合う」などという姿を期待している様子です。そして、それらを「社内版テックブログ」だったり「社内版コミュニティ」などと呼ぶこともあるのではないでしょうか? しかし、断言しますが、
インセンティブがない「社内コミュニティ」に参加者は居つかない
と私は考えています。
それぞれにとってのインセンティブを整理しよう
ここで一旦、インセンティブとは何か?を具体的に整理してみましょう。
まず、主催/後援する企業側にとってを考えます。これは「自己研鑽の場を提供」という目的も当然あるでしょうが、特に社外に対してその活動を公開しているような場合は「優秀なエンジニアの確保」という目的があるはずです。
一方、個人にとっては少し目的が異なり
一つは承認欲求で、もう一つは個人の収入
を目的にしていると言えます。企業の発展とは必ずしもリンクはしません。
いずれにしても、このようにコミュニティで得られるもの・与えられるものを明確にすることは非常に重要です。
生々しいですが、ここをごまかしてはいけません。「業務で命令したら、会社のために書くようになるやろ」と思っているようなら、それはとんでもない思い違いです。
おわりに ~ 「正しいGive&Take」が成立するコミュニティ
Give&Takeという言葉がありますが、コミュニティは提供者と個人がまさにGive&Takeし合う場所です。ここで、重要な点は
参加者がTakeしたいことがGiveされているのか
です。たまに、ニュース記事だけが延々と垂れ流されているコミュニティを見ることがありますが、これは参加者にとってのインセンティブが働かないのでそうなっているのではないかと考えられます。
私も以前はある企業が運営するコミュニティに属していたり、そこでLTを行ったこともあったりするので、コミュニティについてそれなりに詳しいと自負しているのですが
コミュニティが活発かどうかというのは「情報が多いかどうか」とかそういうことよりも、それぞれの参加者にとってのインセンティブを正しく把握し、このコミュニティで提供できるものを明確にしているかどうかの方ががよっぽど重要であると考えています。
それなのに「事務局も投稿頻度を増やしてどんどん盛り上げましょう。いろんなオンラインイベントもしましょう。色々案を考えてください。きっとうまくいくはずです。」と言っているだけでは、盛り上がらないコミュニティが出来上がるだけです。
盛り上がらないコミュニティを作る羽目になる前に、なぜコミュニティが必要からしっかり考えて、せめて
議論が始まるところまで整理がついている
ようにしたいものです。そうすれば、半分は目的を達成したようなものです。
おまけ ~ ある会話
付録として、コミュニティに関する「ある会話」をつけておきました。
これは実話ではありません
が、実話を基にしたストーリーではあります。ストーリーのみで、特に所感までは書いていないのですが、言わんとしている所を感じ取っていただけたら幸いです。
~~~~~ここから~~~~~
A:DXを盛り上げるために参加者(一般社員)を増やして盛り上げましょう。いろんなオンラインイベントもしましょう。色々案を考えてください。
B:なぜコミュニティが欲しいんですか?
A:Tableauとかもコミュニティやっており、当社でも同様のことができて情報交流が進むのは良いことだと思いませんか?
B:SalesforceやYahooでコミュニティを作っている理由は[自社のプレゼンスを上げたい]とか[参加者が自分の名前を売りたい]ということであって、当社にコミュニティを作ってもそれが果たされるとは思えないのですが、なぜ当社でコミュニティをやりたいんですかね?
A:ほかにもPythonなど使ってたらいろいろ質問とか出てくるので、『プログラムの書き方』について学べるQ&Aサイトがあると便利なのでは?
B:「こんな時Pythonでどう書く?」というコードですか? 情報の鮮度もクオリティも世の中に数多あるWebのブログで十分満たされており、今更車輪を再開発する必要性があるのでしょうか。
A:検索するだけでなく、社員が自分たちで書いてみた書き方などを溜めていくことで、ゆくゆくは当社ならではのFAQになっていくと思います。
B:では、Qiitaとかで企業アカウントを作るのはどうですか? DX先進企業っぽい取組でいいと思いますね。
A:それだとクラウド活用になり情報漏洩の恐れがあるのでいかがなものかと。
B:(…情報漏洩?)わからないことがあればGoogleで調べると思うのですが、何故コードだけ駄目なのかよくわからないです。
A:それに、そもそも検索の仕方が分からないと思います。コードの書き方は人に聞いた方がわかるし、当社ならではのノウハウをライブラリ化するなども考えられますよね。
B:コードの書き方から聞くならChatGPTが利用できると思うので、それを当社で使ってみるプロジェクトを立ち上げてみましょうか。これもDX先進企業っぽい取組だと思い、皆さんもモチベーション高く参加してくださるのでは?
A:それだとクラウド活用になり情報漏洩の恐れがあるので駄目です。
B:…やはり、なぜコミュニティを作りたいのかというところに帰ってくるのですが。
A:今日は良い議論ができました。今後も引き続き議論を行っていきましょう。ともかく、いろいろなアイデアが出ると思うので引き続き考えていきましょう!
B:…
(おわり)
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