BtoC激変!戦略的オンライン接客のすべて(商況編)
不動産・ブライダル・保険・自動車など...
今回はコロナの影響により営業手法の変化が著しい分野でのオンライン接客についてお話します。
私はオンライン接客のスキーム設計や導入支援を行っており、自身としても1500件近いオンライン接客を実施してきました。
この半年間でBtoC向けのオンライン接客に関するセミナーへなんと20回以上登壇させていただきました。(やたら朝まで資料作った気がする。と思っていましたが、数えたらずいぶんな数になってました...^^;
また、前回のnoteでは多くの反響をいただき、業界誌にも取り上げてもらい、育ててもらった古巣(ブライダル業界)への恩返しとして届いていれば幸いです。ご相談くださったブライダル関連企業のみなさま、本当にありがとうございました。
今回はこの半年間で私が見てきたBtoC業界(特に不動産・ブライダル・保険・自動車等の高額商材)でのオンライン営業の取り組みと、劇的な変化を迎えつつある業界全体の近況を解説します!
これはあくまでも私自身が実際に見てきたor現場でお伺いしたor公表されているものでお話致します。
※以下"これらの業界"は高額商材を扱うBtoC業界を指します。
1、コロナの大打撃とBtoCオンライン接客の幕開け
ご存知の通り、これらの業界では店舗やカウンターを構え、販売管理費を投じて、広く認知させ、その実店舗に来店させることで多くの営業活動を実施しています。当然ながらこのビジネスモデルはコロナの影響により大きな打撃を受けました。
LIFULL HOME'S調査<第3回 新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査>
NHK WEBニュース 8/2
対応策として各社がオンライン窓口を設置し、一斉にオンライン接客が開始されました。実際にご覧になった方や、ご利用になった方もいらっしゃるかもしれません。
とは言え、高額商材です。
私自身もブライダル業界に長くおりましたので、さすがに常用にはなり得ないと思っていました。非対面では売れない・売りにくい商材であるため、あくまで一時的な対応策として採用され、コロナの状況緩和とともに徐々に元の営業スタイルに戻るであろうと考えていました。
驚くべきことに現時点(2020年9月上旬)でも続々と増加し続けているのです!!!
しかもそれは、もはや非対面のコミュニケーション手段という域ではなく明確な営業戦略として業界で活用されています。
2、一体何が起きた?来店しない顧客への営業。
まさに予想を超えるパラダイムシフトとして、取り入れられたオンライン接客を解説します。
高額商材という特性と業界特有の情報非対称性が存在したため、もともとは膨大な販売管理費を投じ、来店する数を取りに行く典型的な反響型営業でした。そのため自社HPやポータルサイト等媒体経由での集客を行い、来店数を高めたり、多店舗戦略でいつでもどこでも窓口を構え顧客を取り込んでいました。
しかしコロナの影響により、来店が出来ない顧客が急増し、集客に急ブレーキがかかりました。その解決策として、オンライン窓口を設け、反響指標が来店数から接触数へと切り替わり、オンラインでの顧客対応が急増する形になりました。ここまではきっと難なくご理解いただけていると思います。
私もこれによりコロナによる一時的なピンチを回避したと思っていました。
....ですが、これにより得られた大きな成果がありました。
それは潜在顧客の取り込みです。下図は保険関連商材を扱うある企業さまの面談数推移です。
たった1ヶ月の間に商談数は2倍近くまで増加しています。オンラインツールに不慣れなため、初期段階では受注率が低下したもののその後は対面同等まで受注率が向上しています。
今までは来店しなければ得られなかった情報が自宅にいながら取得出来るようになったことで、検討レベルのまだ低かった顧客にもパーソナルな接触が実現したのです。
たとえば、不動産やブライダルで考えてみましょう。
顧客行動として、主に希望のエリアで絞り込み検討する場合が多いですが、同一エリアに50物件と存在する場合、資料請求をするのは10件前後です。実際に来店するとなるとせいぜい3-4件程度です。つまり、残りの47件は戦わずして負けていたところが、オンラインという敷居の低い導線を設けることで反響を得ている10件へ顧客ニーズにあった距離感でのアプローチが可能になったというわけです。
つまり、今まではタッチ出来なかった潜在顧客に対し、全く新しい販売機会が生み出されたのです。
また、緊急事態宣言直後は顕在層も潜在層も区別なくほとんどがオンライン窓口に流入せざるを得なかったため、接触数が指標となっていましたが、緩和に伴い、アツい顧客は直接来店し、まだ初期検討段階の顧客はオンラインへと棲み分けされていきました。これにより主戦場は潜在層へと移り、オンライン接客の対応品質を高めた企業は他社よりも早く顧客接点を生み出し来店数を早期から回復・向上することに成功しました。
こうして非対面でのコミュニケーション手段にとどまらず、明確な営業戦略として業界全体に広まることとなったのです。
3、業界課題とオンライン接客がもたらしたメリット
このように広まったオンライン接客ですが、これらの業界でここまで急速拡大した背景にはもうひとつの理由があります。
それは、事前情報の取得です。
高額商材ゆえ、顧客は様々な複合的な条件を鑑み、意思決定を行います。当然ながら営業パーソンは限られた商談時間の中で、その情報を取得しにいかなくてはなりません。そのため、一次接触としてオンライン接客の中で顧客の様々な情報が取得出来ることは受注率を高める上で非常に重要な接点になるのです。
つまり、オンライン接客がもたらすメリットは以下2点であり、商談数を底上げする効果とともに、一発勝負になりがちだった初回来店時の商談を有利に進め受注率を向上する効果をも果たしていたのです。
4、オンライン接客の最新商況とこれから
さて、ここまでお話して来たように、想像を超える変化と効果により非常に多くの企業様で取り入れられることとなったオンライン接客ですが、ここからは私の所感を中心に最新商況に触れて納めたいと思います。
■どの業界での変化が盛んか?
A:不動産・ブライダル>保険・金融>自動車
不動産・ブライダルでは約6-7割程度の事業者で、保険・金融は約3-4割、次いで自動車という感じです。保険・金融領域は間違いなく今後進んでいくと思いますが、そのためにはメーカー側の規定が大きく影響してきます。基本的に対面での説明が必須とされている場合も多く、"対面同等"の定義がボトルネックになっていると思います。
メーカーとしても先行して非対面販売認可を進めた競合メーカーに遅れをとるまいとプライオリティを高めて対応を進めている状況です。
また不動産・ブライダル領域は中堅企業での移行がかなり成功しており、大手が追随して営業DX化と絡めた大変革を進めているという状況。特にこの2領域はVR技術との親和性が高く、オンライン接客時の情報取得のみならずVRツールを介した顧客行動の観測を行える点でも今後さらに激化が予想されると考えています。
■各社での取り組みに違いはあるか?
良くも悪くも違いがあると言えます。
オンラインでの接客はほとんどの方が未経験状態からスタートしており、各社旗振り役となっている方の手腕によりかなり差が出ている印象です。
現場に渡して定量観測せず、という企業さまではほとんどが苦戦しており、逆に明確な旗振り役を置いて戦略的に取り組んでいる企業さまは、営業だけでなくマーケサイドとの連携を強めインサイドセールス部隊を発足している企業さまもあります。「いつかは来店数は戻るはず」と思っている間に、競合に潜在層から奪われ、その"いつか"がやってこない、、、という状況が想定されるほど温度差が出てきたとも言えます。まさにチャンスでもピンチでもあるという状況です。
■今後予想されるのはどんな変化なのか?
個人的には2点。
ひとつは、マイページからの行動観測と顧客ニーズに合わせたマーケティングです。すでに不動産・ブライダル等で行われているような、VRツールを用いた行動観測を行い、来店に繋がらなかった顧客に関してもどの披露宴会場に興味を持っているのか、どの物件に興味を持っているのかなどの情報を継続的に観測して、パーソナライズした情報提供を行って中長期的に追客を行う手法が強化されそうです。ライフステージの変化に伴う商材ゆえに営業対象になる母集団は劇的に変化しません。限られた牌を奪い合う競争構図は変化しないため、戦わずして負けることをいかに防ぐかを追求する形になると考えています。
ふたつめは、受注率最大化を図る人員配置と営業スキルの標準化です。一見パラレルな要素に見えますが、フェーズが異なります。人柄や信用などが意思決定に大きく影響してくる商材であるため、以前から営業の属人化傾向が強い領域です。直接来店とオンライン経由の間接来店では顧客のアツさが異なります。受注率の高い営業パーソンは直接来店顧客に充て、オンライン経由の間接来店顧客は事前情報を取得出来るので若手営業パーソン主体で構成するなど、人員配置を最適化することが出来ます。また、オンライン接客は録画可能であるため、今までブラックボックスであった営業活動を可視化し、超高速育成を実現します。マネジメントの立場である人にとってこの商談録画は非常に有益で強力なデータになります。
と、言うことで随分長くなってしまいましたが、ここまででBtoC激変!戦略的オンライン接客のすべて(商況編)としておまとめ致しました。