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保育園・幼稚園で育む「10の姿」から学ぶ、先生たちの仕事術(中編)


幼児期の終わりまで(小学校入学まで)に育んでほしい「10の姿」は私たち社会人、特にも対人援助職である保育士やソーシャルワーカーにも通じるものがあります。保育士は子どもの「10の姿」を育むとともに、自らも「10の姿」を意識して仕事をすると、理想的な職場環境に変容していくかもしれません。今日はその中編です。

10の姿のイメージ(筆者作)

④道徳性・規範意識の芽生え→コンプライアンスの遵守

子どもを育む時には、やはり一定のルールや道徳性を身につけてもらう必要があります。これは保育所・幼稚園に限らず、子どもには年齢相応の規範意識を教えるべきでしょう。
当然オトナもコンプライアンス(法令遵守)意識が必要です。
保育所の運営には少なからず公金(税金)が投下されるわけですが、どうしてもその原資はどこから来ているのかということを意識し続けることは難しいものです。
その原資は保護者が汗を流し、時には涙を流して働いて収めた税金であり、保育料です。
私的に流用することは無いにしても、支出の必要性、妥当性は常に意識したいところであり、お金には潔癖であるべきです。

⑤社会生活との関わり

セキュリティの問題もあり、なかなか保育所をオープンにすることは難しいと思います。またここ数年はコロナ禍の影響もあって園庭開放なども中止せざるを得ず、まさに保育所は「孤立」した感覚さえあったのではないでしょうか。
ところで、現在我が国は超高齢社会です。
社会保障費は増加の一途であり、各自治体の介護保険料も逼迫していることでしょう。
介護保険の実施主体(介護保険料の財布の持ち主)は市町村で、その財布にお金を入れているのは40歳以上の人(第2号被保険者)で、その財布のお金を使う人は原則65歳以上(第1号被保険者)のうち、介護認定を受けた人です。
市町村はその財布から出来るだけお金を出したくありません。ケチケチしているわけではなく、その財布の中身が寂しくなると保険料を上げざるを得なくなり、市民の手取りが減るからです。
その財布からお金をあまり出さないようにするためには高齢者に出来るだけ元気に長生きしてもらうこと(健康寿命と言いますね)が大事で、各自治体は「介護予防」に力を入れています。

筆者の授業で使った介護保険制度のイメージ図


で、本論に戻ります。
高齢者が元気にイキイキと生活するためには一定の役割意識が必要です。
今、保育士が勤務時間に行なっている園庭の清掃・草刈り・お花や生き物のお世話などは、ぜひ地域の高齢者に行ってもらってはいかがでしょうか。
人間は「ありがとうございます」「助かります」と言われると生きがいが持てるものです。保育士も保育に集中できてwin-winな関係になるような気がします。
それからもう一つ大事な「社会生活との関わり」は、他園との積極的な交流です。
最近はSNSなどで若い保育士を中心に活発に意見交流がなされていて、とても良いことだと感心しています。
時にその保育所の保育が「完成形」と思いがちですが、やはりしっかり自らの保育を振り返り、成長するためにも自園だけに止まらず、他園と評価しあえる関係を築いてほしいと思います。

⑥思考力と判断力

私も学校の教員ですから、1年が過ぎ去るとまた1年同じ流れを繰り返すことが多いです(その方が『楽』と勘違いしていますから)。ですがコロナ禍を経験し、これまで「あたりまえ」だと思っていた業務が「必要ある?」と疑問を持つ機会が増えたように思います。
よくPDCAサイクルと言いますが、P(Plan=計画)をするということは「実施」が前提にありますね。しかし、その、今しようとしている業務なり行事なりが何のために必要なのか、どんな目的で実施するのか、というところから考えてほしいのです。計画(Plan)のPの前にもう一つのPを、すなわちPurpose(目的)を考えて実施を決断する。つまりPDCAをPPDCAにしてほしいのです。そうすることで「あたりまえ」だと思っていた業務が実は必要性や合理性があまり無いことに気づき、結果として子どもと関わる時間が生まれてくるとすれば、子どもにとっても保護者にとっても、そして保育士自身もハッピーになれるのではないかと思います。
そのためにはしっかり頭を使い、さまざまな影響等について検討して判断する作業が必要ですが、その結果と過程は必ず組織も個人も成長させるはずです。

中編のまとめ

今回は④〜⑥について、その大人への応用編を書いてみました。最後までお読みいただきありがとうございます。
特に⑥は私自身、周囲に流され(同調し)、特に何も考えず、疑問を持つことなく必要性の無い業務を行なって、限りある時間を無駄にしてきたなぁと自戒を込めて書いてみました。
時代の変化と共に我々大学や保育現場に求められることは変化しています。
新たに求められることがあるならば、必要性が低下した仕事もあるはずです。
つまり、足し算をしたなら必ず引き算をセットで考え、総和を等しくしていかないと組織はパンクします(→以前書いた記事を参照していただければ幸いです=引き算の仕事術)。
「思考する」ためにはエネルギーが必要です。
しかし、その思考と判断が結果として子どもの利益になるように、このnoteが少しでもお役に立つと嬉しいです。

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