紙コップとスペシャルティコーヒー
昨日はバリスタハッスルのパートナーであるMatt Pergerに紹介してもらったWhite2TeaのPaulから中国茶のレッスンを受けた。Paulは2005年頃から中国に移住し、プーアール茶を専門に中国各地を飛び回る生活をしているらしく、現在は雲南に落ち着いているそう。
ECを眺めていると、元々アートをバックグラウンドに持つ彼のセンス溢れるパッケージの数々に思わずジャケ買いしたくなる。彼が中国茶を始めた理由が、元々プロのオンラインポーカーの選手として毎日中国茶を飲んでいたことがきっかけだったと知ると尚更好きになった。
彼の取り扱っているプーアル茶は高価な価格で取引されることで有名だが、なんと高いものだと1kgあたり15万米ドル(約1800万円)で取引されているそう。
コーヒーにおけるオークションのレコードプライスが、サザコーヒーさんらが落札した2021年のBest of Panamaの1ポンドあたり2,568米ドル(約30万円)なので、kg単価で比較するとプーアルはかなり高額である。最もコーヒーはロット買するので合計金額が3000万超える訳だが。
最もこれはハイエンドマーケットの話であって、いわゆるコマーシャルコーヒーマーケットは長年低価格に苦しめられてきた。いわゆる「C」プライスは1ポンドあたり1ドルを下回る時期もあった。
それが2022年2月には、1ポンドあたり3ドルを超え、今後さらに上昇する可能性があるとも言われている。それに加えて歴史的な円安である。恐ろしいことに、対米ドルで考えると2011年から比較すると約40%円の価値が下がっている。
円安の影響で買い付け価格が劇的に上がる。元々ポンドあたり100円~で買えていたのに、それが現在のTTMで124円なのだ。そして、コンテナの不足、ブラジルの深刻な霜の被害、長引くパンデミックの影響、コーヒーの価格は今後も上昇する可能性が高い。
特にブラジルの霜の被害は、コーヒーの価格に数年間影響を与える可能性がある。生産量を取り戻すために、数シーズンはかかる。ミナス・ジェライスに本拠地を置く生豆輸出会社であるExportadorade Cafe Guaxupe Ltdaによると、2022年の作物の損失は450万袋と推定されているそうだ。
いよいよ本格的にコーヒーの価格を考え直すタイミングなのかもしれない。日本は1杯100円で素晴らしいコーヒーが飲める国であり、それは間違いなく日本の品質への拘りとプライドがなせる技だと思う。ただ大手と個人店が同じ戦略を取ってしまうと、規模の経済で全くもって勝つことができない。
高品質なスペシャルティコーヒーを取り扱うお店ならば、販売方法も異なって然るべきである ー とはよく聞く話だが、スペシャルティとコモディティの価格や販売方法に現状何か違いはあるのだろうか、と聞かれると原材料価格の差が真っ先に思い付く。
僕の最大の疑問は、世界でも限られた素晴らしい原材料を買い付け、機材にも投資し、バリスタの育成にも投資し、やっとできた最高のコーヒーを「紙コップ」で提供することだ。
北大路魯山人は「器は料理の着物」と言った。だからこそ魯山人は作陶に励んだのであり、僕は器に拘りのある人が大好きだ。だから僕は老舗と呼ばれる喫茶店が大好きだし、名作の器で飲むコーヒーの美味しさは格別なのだ。
当たり前だが、紙コップで提供しなくてはいけない理由も分かっているし、それを非難するつもりもない。僕は素晴らしいコーヒーを美しい器で飲みたい、それだけなのだ。
来る物価価格上昇に備えて、高品質な素材を扱う者として改めてあらゆる提供プロセスや販売プロセスを見直すタイミングなのかもしれない。自戒を込めて。
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